事業許可取り消しで聴聞 運航会社側“責任は監督官庁にも”
知床半島沖で観光船が沈没した事故で、国土交通省北海道運輸局は14日、運航会社の事業許可を取り消す処分について、会社側の意見を聞く聴聞の手続きを行いました。会社側は出席せず、事前に提出した陳述書で「事故の責任を会社のみにあるとするのはおかしい。責任は監督官庁の国にもある」などと不服を述べる内容の主張をしたということです。運輸局は聴聞の結果をふまえて検討し、速やかに処分を行うとしています。
知床半島の沖合で観光船「KAZU 1」が沈没した事故で、北海道運輸局は運航会社「知床遊覧船」への特別監査の結果、出航判断の基準を順守しないなど海上運送法の違反が確認されたとして、先月、観光船事業の許可を取り消す方針を決めました。
これについて14日午前、運輸局で会社側の意見を聞く聴聞が行われました。
会社側は出席せず、事前に提出された陳述書をもとに手続きが行われました。
運輸局によりますと、陳述書で運航会社の桂田精一社長は「事故の責任を会社のみにあるとするのはおかしい。責任は監督官庁の国にもある」などと不服を述べる内容の主張をしたということです。
また、運輸局の特別監査で法令違反を指摘された内容の一部について、違反をしていないと主張しているということです。
聴聞後の会見で北海道運輸局海事振興部の前里良人部長は、会社側の主張について、「聴聞は意見を述べる場なので、それに対して国がどうかという説明は差し控えたい」と述べました。
北海道運輸局は聴聞の結果をふまえて検討し、速やかに処分を行うとしています。
【観光客や地元の関係者は】
斜里町ウトロにある「知床遊覧船」の事務所は、今月初めに社員らによる片付けが行われました。
すでに看板は取り外され、入り口のシャッターも下ろされています。
北海道運輸局が運航会社の事業許可を取り消す処分をめぐって行った聴聞の手続きの際、会社側が事前に提出した陳述書で不服を述べる内容を主張したことについて、事務所の周辺で観光客に聞きました。
千葉県船橋市から訪れた観光客の40代の男性は、「言い逃れだと思う。運航会社として、事故を起こしてしまった責任は問われるべきだ」と話していました。
また運航会社の社長が聴聞に出席しなかったことについて、「誠意がなく、会社のトップとして意識が低いと思う」と話していました。
また札幌市から訪れた観光客の60代の女性は、「海に手を合わせてきました。運航会社の対応はひどいし、許せないです。人を運んでいるのだから、責任感を持ってほしいです」と話していました。
北見市から釣りに訪れていた80代の男性は、「国土交通省にも緩みがあったと思う。今後、国としても安全対策などを徹底してもらいたい」と話していました。
斜里町ウトロの漁業者、古坂彰彦さんは、ことし4月に観光船の沈没事故が発生してから仲間の漁業者とともに、乗客などの捜索を続けてきました。
14日の聴聞に提出された陳述書で、運航会社の桂田精一社長が「事故の責任は監督官庁の国にもある」などと不服を述べる内容の主張をしたことについて、「国にもある意味責任はあるが、運航会社の社長としてもう少し責任を感じてほしい。社長が行ってちゃんと説明してほしかった」と述べました。
また、事故を起こした会社とは別の斜里町の小型観光船の業者が、運航再開を検討していることについて、「安全管理を徹底してほしい。それを観光客がわかるように常に示してほしい」と求めました。
「知床斜里町観光協会」の野尻勝規会長は、運航会社「知床遊覧船」の桂田精一社長が14日の聴聞に出席しなかったことについて、「事業の責任者として足を運ぶべきだった」と話しました。