北海道のがん研究最前線

ニュースのポイント、今回のテーマは、日本人の死亡の原因で最も多い「がん」、その研究の最前線です。

【抗がん剤の効果高めるには】
最新のがん研究が発表された札幌市での「日本がん免疫学会」では、北海道大学の樋田京子教授の研究に注目が集まりました。
その理由は、研究のユニークさ。
一般的に使われている「抗がん剤」の効き目を高める方法を見い出したのです。
がん細胞は血管から栄養を取り入れることで増えます。
抗がん剤は、この血管を通ってがん細胞に届きます。
しかし、血管のなかには抗がん剤を逆に外に出すように変化してしまうものがあることを突き止めました。
こうした血管の変化を抑えることができれば、いまある抗がん剤の効果を高められると期待されているのです。
樋田教授は「せっかく薬を送っているのに血管がせっせと薬を汲み出してしまっている.その影響をどうやって阻害し、より患者さんに効率よく薬を届けられる戦略が作れるのかといったことをポジティブに考えていく方にこの研究成果を使っていきたい」と話しています。

【大腸がんの進行抑制できるタンパク質の働きを初解明】
このように、臓器の機能に注目して新たな治療を見いだそうとする研究は、いまのがん研究の大きな流れの1つです。
もう1つは、遺伝子に注目した研究です。
そしてこの研究でも、北海道大学は世界が注目する成果を出しています。
築山忠維助教は先月、世界的に有名なイギリスの科学雑誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に、画期的な研究を発表しました。
大腸がんの進行を抑えることができるタンパク質の働きを初めて解明したのです。
注目したのは、健康な人の大腸にもある「RNF43」というタンパク質です。
通常「リン酸化」という反応を起こして、がん細胞が増えるのを抑えています。
ところが、遺伝子に変異が起きて「リン酸化」ができなくなると、がん細胞の増殖をむしろ活性化させてしまうことがわかりました。
そして、この「リン酸化」さえ、起こすことができれば、がん細胞が増えないことを突き止めたのです。
築山助教は「大腸がん自体ががんの患者数でも多いし、死因のなかでもかなりを占めている.今回の発見を生かして開発した薬を投与して、手術とはまた別の方法でがんを縮小させるような方法が開発できる、その根拠になるような研究ができればいい」と話していました。

【日進月歩のがん研究】
これら2つの画期的な研究を治療の最前線にいる医師はどう見ているのか。
北海道がんセンターの加藤秀則院長に聞いたところ、「今回出た発表が来年から薬になるかと言ったら無理かもしれないが、今はすごくスピードアップしているので、発見がたくさん重なり、とてつもなく大きな良い薬ができることもある。研究の一つ一つを大事にしていって、その積み重ねで大きなガン治療の変化を期待できると思う」と話していました。
ことしのノーベル化学賞に選ばれたのも、がんの遺伝子レベルの治療の可能性を大きく開いた研究でした。
今回取材したのはいずれも基礎的な研究で、現場で応用されるまでにはまだまだ時間がかかると予想されますが、ここ北海道でも、全国、さらには世界が注目する研究が進められていて、がん研究はまさに日進月歩で進んでいることを実感しました。