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◆地デジ 中継局を低コストで実現!!
〜大幅に処理時間を短縮した“マルチパス等化装置”を開発〜
(平成20年9月8日)

○ NHKは、地上デジタル放送の中継局を低コストで実現できる“低遅延マルチパス等化装置”*1)を開発しました。

○ 現在、NHKでは、地上デジタル放送の“あまねく”を実現するために、全国の中継局(送信所)のデジタル化を進めています。既に大規模な放送エリアをカバーする親局や大規模中継局のデジタル化が済み、さらに放送エリアを拡大するため、これらの電波を受信して再送信する小規模の中継局のデジタル化を進めています。

○ 小規模の中継局のデジタル化の多くは、電波の有効利用から、複数の中継局で同じ周波数を使用して、より少ない周波数で放送エリアを確保*2)しています。この場合、直接、放送波で中継するには、複数の異なる送信所から到達する電波の時間差をガードインターバル長*3)以下にする必要があります。

○ これまでの “マルチパス等化装置”は装置内部の信号処理時間が長いため、ガードインターバル長以下にすることができないことがありました。そのため、放送波で中継をすることができず、別途、マイクロ波による中継用設備を整備して中継していました。

○ 今回開発した装置は、信号処理時間を従来の8ミリ秒から17マイクロ秒に大幅に短縮する*4)ことに成功し、ガードインターバル長以下にすることができました。マイクロ波による中継用設備が不要になり、大幅なコスト削減につながります。今後、この装置などを活用して、2010年末までに残り約1800局の中継局を整備し、地上デジタル放送の放送エリアを拡大していきます。

 
*1) 直接受信した電波と途中の地形、建物などに反射した電波や同じ周波数を使用している他の中継局の電波などによって劣化する放送受信波を修復する装置。
*2) SFN: Single Frequency Networkの略。親局(または他の中継局)と中継局で同一の周波数の放送波を使用するネットワーク。
*3) ガードインターバル長:建物の反射などにより様々な経路を通って受信される電波は直接受信される電波より時間的に遅れて到着するが、その影響を低減するために付加する信号の時間の長さ。現在、NHKで使用しているガードインターバル長は126マイクロ秒。
*4) 信号処理時間を従来比で約1/470と大幅に短縮。1ミリ秒は1000マイクロ秒。
 
 
 

図1 地上デジタル中継局用低遅延マルチパス等化装置を使用した放送波中継例

図1の受信者宅では、親局からの電波を受信していますが、中継局(2)からの電波も届いています。中継局(1)と中継局(2)に今回開発した低遅延マルチパス等化装置を採用することで、親局からの電波と中継局(2)からの電波の到着時間差を126マイクロ秒以内にすることができます。
 
 
 

図2 地上デジタル中継局用低遅延マルチパス等化装置の構成

信号処理にデジタルフィルタを通過させる方式を開発し、信号処理時間を短縮しました。





 
 
 
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