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技術情報

  ◆新3次元カメラの開発(平成12年4月7日)
〜 Axi-vision Camera 〜


○NHK放送技術研究所(山田宰所長)は、通常のテレビ映像と同時に、被写体までの距離を検出し、この距離情報を用いて画像の合成など、新しい映像効果を創り出す新3次元カメラを開発しました。

○これまで、画像合成では青色などの色を用いるクロマキーの手法を使っていましたが、このカメラを使うと、カメラからの距離を用いて画像合成が可能になります。たとえば、人物が後ろに下がると突然消えたり、新しい人物が手前に来ると現れたりするなどの画像合成が、色に関係なくできるようになります。

○カメラから被写体までの距離検出は、光の強度が短時間に増加する発光ダイオードからの赤外光を照射し、被写体からの反射光を高速シャッターを備えたカメラで撮像することにより行います。この反射光の強度は、被写体から反射して戻ってくるまでの時間により変わるので、被写体までの距離を求めることができます。
この方法には、これまでの距離を測る方式に比べ、1台で、
 (1)被写体までの距離を2次元的に、リアルタイムで検出できる、
 (2)奥行き距離の検出精度が高い、
 (3)映像品質が良好である、
などの特長があります。

○現在の性能は以下の通りです。
  検出距離範囲 :1.5m〜3m
  奥行き距離精度:1.8cm(距離2.5mで)

○今後、奥行き距離の分解能を改善するとともに、奥行き距離を利用した新しい画像合成法を開発していきます。また、将来は、距離で切り出した画像を奥行き方向に並べて表示することにより、視差によらない自然な立体視が可能な表示の研究も進めていきます。


新3次元カメラ(Axi-vision camera)の概観写真


(参考)

○今回開発した装置の概要

 新3次元カメラの構成を図に示します。距離測定のための照明光源として、高速に強度変調(繰り返し周波数45MHz)が可能な赤外発光ダイオードアレーを開発しました。この光源から放射される赤外線はミラー、ハーフミラーを通して被写体に照射されます。被写体で反射した赤外線は同じハーフミラー、ミラーを通して、光源の間を通り、高速シャッターに導かれます。シャッター開放時間(1ナノ秒[10億分の1秒])に通過する反射赤外線は、CCDでカラー映像と同じように2次元的に検出されます。近い被写体に対しては、この反射赤外線が強いので白い像として、また遠い被写体に対しては弱いので黒い像になります(強度が増加する照明光の場合)。
  赤外線の反射率は被写体毎に異なるので、これをキャンセルするため1フレーム毎に強度が増加する赤外光と減少する赤外光で交互に照明し、両者の比から信号処理により距離画像を求めます。このように、距離測定に赤外線を用いるので、主としてスタジオ等の屋内での使用に適しています。



図 新3次元カメラ(Axi-vision Camera)の構成

○ Axi-vision Camera:光軸(0ptical-Axis)方向の距離を測るカメラの意味











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