NHK WORLD

はじめに国際放送80年
過去・現在、そして未来へ

NHKの国際放送は今年、開始から80年を迎えました。私たちは現在、英語による外国人向けテレビ放送「NHKワールドTV」、日本語による在外邦人向けの映像サービス「NHKワールド・プレミアム」、日本語と17言語による「NHKワールド・ラジオ日本」、そしてインターネットによる「NHKワールド・オンライン」の4つのサービスを実施しています。2014年末の「NHKワールドTV」の受信可能世帯数は世界2億8000万、「ラジオ日本」の聴取可能人口は約3億人となりました。国際放送は、もともと海外で受信していただくためのものですが、最近はインターネットの普及によって、パソコンやモバイルで国内でも視聴できるようになりました。また、CATVやIPTVでの国内視聴世帯も増えています。

さて、国際放送が産声をあげたのは1935年6月1日。当時の岩原謙三会長は、国際放送の使命は「在外同胞への慰安と啓発」そして「国際親善の一助とする」ことだと述べています。今の放送法でも、邦人向け放送は海外同胞向けの適切な報道番組及び娯楽番組を有すること、外国人向け放送では我が国に対する正しい認識を培い、国際親善の増進及び外国との経済交流の発展に資することが義務付けられています。つまり、国際放送は開始当初も現在も、使命は変わらないということになりますが、実は、同じような表現であってもその意味するところは同じとは言えません。80年の歴史の中では、その時々の国際情勢や社会状況によって、国際放送に寄せる期待や課せられた役割は常に変化してきました。本誌をお読みいただければ、歴史の荒波に揉まれながら歩んできた国際放送の姿がよくわかると思います。

近年、国際放送に対しての関心が高まり、さまざまな場で議論が行われ、国内外からの意見や要望が増えています。これもまた今の日本と世界の関係など状況の変化が影響しているものと思われます。

放送は、国境を越え一斉に伝わるため、その影響力は計り知れません。放送によって、家庭生活が変化し、教育が進み、文化が生まれ、産業が発達し、経済が発展するといった多大な恩恵をもたらす一方、戦争を勃発させたり国家を崩壊させたりすることもあります。それだけに、放送に携わる者は、健全な社会を築き、国と国の相互理解を深めることに注力しなくてはなりません。

国際放送とは何か、これまでどのような役割を担ってきたのか、そしてこれから何が求められるのか。私たちは国際放送80年の節目にあたって、あらためて歴史を振り返り、その歩みを確認するため、本誌を編纂しました。多くの方にお読みいただき、理解を深めていただければ幸いです。

本誌の執筆にあたり、視聴者のみなさまやNHKOBなど多くの方々から資料提供をしていただき、参考になる証言を聞かせていただきました。また、本誌の編纂ではSOCIALSOFTの長屋龍人さんには大変お世話になりました。

みなさまに、心より御礼申し上げます。

国際放送局長 根本佳則