ニュース画像

WEB
特集
男も女も生理を知ろう!

先月のとある平日の午後、スーツ姿の男性たちが続々とある映画の試写会へ。何の映画?と思いきや、なんと「生理用ナプキン」をテーマにした映画です。いったいなぜ?そしてどんな反応が?男性も女性も「生理」を知り、語り、理解する。新たな動きを取材しました。
(科学文化部記者 信藤敦子・社会番組部ディレクター 村山かおる)

生理用ナプキン開発映画 見た男性は…

ニュース画像

その映画は「パッドマン 5億人の女性を救った男」。インドで愛する妻のために、安くて安全な生理用ナプキン(パッド)の開発に人生を捧げた男性(マン)の、実話に基づく作品です。

映画の中で、生理は終始「けがれ」として扱われますが、主人公は村の人々から奇異の目で見られながらも、6年の歳月をかけてナプキン製造器を開発。“5億人の女性を救った”だけでなく、雇用も創出し、2014年にはアメリカの雑誌「TIME」の「世界で最も影響力のある100人」の1人に選出されました。

映画は業界内でも公開前から話題となり、生理を真正面に扱った映画としては異例の、全国52館での上映がすでに決まっています。(12月7日から公開)

男性に見てもらいたい!

ニュース画像

この試写会に招待されたのは、一般企業に勤務する男性を中心にした130人。企業の経営者や人事部の担当者も多く参加していました。

配給会社の後藤優さん(50)は「生理を扱った話ということで社内でも議論になったが、実際に映画を見た瞬間に、『これはやるべきだ』と決まった。そこでまずは、生理と聞いてもハードルが高いであろう、男性の反応を知りたかった」と話します。

いざ試写会の参加者を募集すると、若い世代の男性からの応募が多く、主催者たちも驚いたそうです。

生理って、こんなことなのか…!

大手保険グループの人事部に勤務する40代の男性は、ふだんは接点のないトピックを知る機会になればと参加しました。「小中学校の授業でやったとは思うが、男兄弟で全く知らないことだらけ。恥ずかしくなった」と、自分の知識のなさに気付かされたといいます。

結婚して4年になる妻からよく買い物を頼まれるものの、生理用品だけは頼まれたことがありません。

「ドラッグストアで、茶色の紙袋に入れるのを見たことがある。改めて考えると不思議なことですね」

そして「女性活躍といいますが、生理用品以外にも、まだまだ男性がわかっていないことがあるだろうなと思いました」

外資系物流企業の役員をつとめる60代の男性は、映画に涙した1人。

「会社に女性はたくさんいるが、生理休暇を使った人は聞いたことがなかった。もっと関心をもたねばいけないし、会社として何ができるか考えようと思う」

男性はもう1回、妻と見に行きたいと話していました。

働く女性が増えるなか、理解するきっかけにしたいと参加した若い男性も多く見られました。

ニュース画像

大手建設会社に勤務する20~30代の男性3人は「なんとなく生理の大変さは知っていたが、想像以上。日本でも、女性たちがタブーにしている。映画で男性がアクションを起こして社会を変えていったように、自分たちも何かやってみたい」と意識の変化を口にしました。

震災時のナプキン不足も

ニュース画像

試写会の後のトークショーでは、途上国で女性の支援をしている国際NGOプラン・インターナショナル・ジャパン理事の大崎麻子さんが登壇。

「東南アジアの国では、生理期間中は3分の1は学校に行かないとか、アフリカの国々では生理が始まると7、8割が就学しなくなるなど、教育を受けるうえで女子特有の障壁がある」と指摘しました。

そして「この映画は、男性が女性の問題を解決していることもポイント」と語りました。

実際に、日本では東日本大震災の時に、避難所で生理用品が不足して問題になりました。防災などの危機管理は男性が中心に行う場合が多く、避難所の備蓄品に生理用品やおりものシートが入っていなかったのです。

「さまざまな性の問題の解決のためには、女性だけでなく、男性が声を上げることこそがとても大事」と指摘します。

ジワジワくる漫画「生理ちゃん」

ニュース画像

この映画に先駆けて、ことし話題になった漫画があります。タイトルは、ずばり「生理ちゃん」。

キモカワイイ「生理ちゃん」というキャラクターが、毎月いろんな女性の元を訪れ、下腹部に強烈なパンチで生理痛を起こし、大きな注射器で血液を奪います。

生理痛のひどさを夫に理解されない女性、原稿締め切り直前に生理ちゃんが来てもん絶するフリーライター、娘の初生理にうろたえるシングルファーザーなど、その辛さ、不快感、切なさがコミカルに、時にセンチメンタルに描かれます。

ニュース画像

ウェブメディアに掲載されて評判になり、ことし6月に書籍化。すでに異例ともいえる重版6回となっています。先月22日には新しいシリーズが公開されました。

作者は小山健さん(34)。「正直にいうと、ネタに困っていたときに思いついたネタ」だそうですが、「女性が描くと“つらい”だけになっちゃう。男が描いたほうが意味があるかなと思って」と、さまざまな人を取材してきました。

するとまさに十人十色。

「PMS(月経前症候群)の多様さには驚いた。眠くなる人、肌荒れや、訳も分からず涙が出るとか、あまりに知らないことが多いなと感じた」

夫婦や父娘で読む人も

ニュース画像

この漫画、読んだ人はどんな感想を持っているのでしょうか?小山さんのサイン会に足を運んでみました。

多く聞かれたのは「生理が“キャラクター化”されたことで、男性も女性も客観的に語れるものになった」という声。

夫婦やカップルで読んでいるという男性も多く、「この漫画のおかげで、妻の不調を理解できるようになった」「つらさを想像できるようになった」という声が聞かれました。

またサイン会に来る人の体験談が、次の作品のアイデアにつながることもあるそうです。

「今まで誰にも話せなかったつらい記憶を聞いてほしい」と話す30代女性は小学3年生で初潮を迎えたとき、母親に嫌な顔をされたのが忘れられないと言います。

また、薬剤師をしているという男性は「娘の生理痛の薬をもらうために一緒に来た母親が、『昔はこれくらいみんな我慢してた』とか言っちゃうのを聞くと、生理をきちんと理解していないのは男性だけとは言えないと思う」と話していました。

編集者の青木香里さん(31)は「女性どうしでも言いにくかったことが、生理ちゃんというキャラクターを介すと話せるということに社会的な意義を感じた。漫画でしかできない表現で、男性の理解の助けにもなっていると思う」と話します。

ニュース画像

お互いを大切にしあうきっかけに

これまで性犯罪やセクハラを取材するなかで、その根本に、女性の体や性への知識不足があるのではないかと感じていました。

映画の試写会に参加していた男子大学生も「女性の性を学ぶ“教材”は、アダルトビデオだった。社会には男性目線で作ったものばかりがあふれていて、女性を大切にできていなかったのではないかと気付いた。もっとこういう作品を見て、寄り添うことができれば」と話していました。映画や漫画といったエンターテインメントを通して、お互いを大切にしあうきっかけになるのではと思います。

信藤 敦子
科学文化部記者
信藤 敦子
村山 かおる
社会番組部ディレクター
村山 かおる