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昆虫が世界を救う?

昆虫が世界を救うかもしれない。ツイッターで話題になったある看板を調べるうちにそう思うようになりました。近い将来おきるおそれがある世界の食糧危機。昆虫の存在を無視(むし)できない日が来るかもしれない。そんなお話です。(さいたま放送局記者 古市駿)

「謎の看板」ツイッターで話題に

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その看板は、埼玉県川口市の住宅街にある公園にありました。
そこに書かれていたのは、「食用を目的としたセミの幼虫の捕獲はやめてください」という内容。
瞬時に理解できなかった私は、公園を利用していた年配の女性に聞いてみました。

返ってきた答えは「え、セミの幼虫を食べられるんですか」
「意味がわからない。食用っていう意味が…。誰が食べるのかしら」

私と同じように理解できないという答えばかり。わかったのは、食べるために昆虫を捕獲する人がいるということだけ。
英語や中国語で同じ内容が書かれた看板も設置されていました。ヒントは、外国にあると考えた私は、外国料理店を取材することにしました。

東南アジアや中国は昆虫を食材に

昆虫を使った料理を提供しているミャンマー料理店が都内にありました。店内はミャンマー人や日本人でにぎわっていました。

ミャンマー出身の20代の2人の女性のテーブルに運ばれてきたのは、どう見てもコオロギ…。

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女性たちは、日本で見るより大きい体長6センチほどのコオロギの頭や脚を手慣れた様子で取って次々と口に運んでいきます。
話を聞いてみると、「子どものころは怖かったけど16歳の時に食べたらおいしかった。懐かしい味です」と遠く離れたふるさとの味を懐かしんでいました。

昆虫食大国だったニッポン!

取材を進めると、実は、日本でもかつては昆虫食が盛んだったと指摘する人と出会えました。

昆虫食に詳しい料理研究家の内山昭一さんです。東南アジアや中国、アフリカを中心にいまも2000種類余りの昆虫が食べられていますが、日本でもかつては昆虫食が盛んだったと言います。

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およそ100年前まではイナゴやハチの子など50種類以上の昆虫が食べられていましたが、コメを増産するため農薬が散布されるようになり、長野や山梨など一部の地域を残して衰退してしまったというのです。

昆虫が世界の食糧難救う?

そんな昆虫食ですが、いま、世界で改めて注目されています。きっかけは、国連食糧農業機関が5年前に出した報告書です。世界では人口増加が進み、2050年までに90億人に達すると予想されています。そうなると10億人が食糧不足に陥るおそれがあり、その解決策として「昆虫食」が有効だと指摘したのです。

誕生!コオロギパン

この報告をきっかけに各地で昆虫食の研究が始まっています。徳島大学では専用の飼育施設を設けて食用コオロギの研究を進めています。

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コオロギは年間を通じて卵を産み、1か月半で成虫になるため大量生産に適しているからです。

栄養価も高く、たんぱく質が100グラム当たり60グラムも含まれています。牛肉の3倍近い数値です。
徳島特産のスダチやシイタケを餌にすると風味が増すことも分かってきました。

見た目が気になって食べられない人もいると考えて作ったのが、名付けて「コオロギパン」。

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乾燥させたコオロギをミキサーで粉末にして、パンの生地に練り込みました。およそ30匹分のコオロギが入っているということですが、見た目は普通のパンで抵抗感無く食べられました。

三戸太郎准教授は、「牛や豚の代用品として考えているわけではなく粉末を食品に混ぜて栄養価を高めたり災害時の非常食として広がれば」と話しています。

昆虫食の専門店も!

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昆虫食が改めて注目される中、都内では専門店もことし4月にオープンしました。

心地よい音楽が流れるおしゃれな店内ではタイで食用に飼育された昆虫を使用したおよそ20種類の食品が販売されています。

人気があるのはコオロギの粉末を使ったパスタを油で揚げた商品です。

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試食した男性客は「おいしいですね。コオロギが入ってるって言われなければわからないです」と笑顔で答えます。

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店員の女性は、「昆虫食を食べて笑顔になってほしい。はじめは罰ゲームでもいいんです。『意外に食べられる!』となりますよ」と話していました。

コオロギ使った飼料も

埼玉県の会社では、栄養価が高い昆虫を直接食べるのではなくて、牛や豚などを育てるのに活用しようと、コオロギを使った飼料の販売をことし9月から始めました。

古くから食材として利用されてきた昆虫で世界的な食糧不足への解決策を模索する動きが各地で広がっています。
「あの店のコオロギがおいしいらしいよ」
そんな会話が職場や家庭で交わされる日が来るかもしれません。

古市 駿
さいたま放送局記者
古市 駿