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おんぶの魅力は?

子どもをあやすときにする「おんぶ」。幼い時に自分もおんぶされた思い出が残っている大人の方も多いと思います。しかし、今、まわりを見回すと「おんぶ」をする親がほとんどいません。2歳の娘の父親である私も、実際子どもをおんぶすることはありません。おんぶは、いったいどこへいってしまったのか。そんな疑問を胸に取材を進めると、改めて、おんぶの魅力を知ることになりました。
(大阪局カメラマン 安居智也)

街角からおんぶが消えた

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親子で外出が増える初夏の季節。公園を訪れる子連れの家族を取材してみると、皆、子どもを前で抱きかかえる「だっこ」ばかり。

取材では、およそ200組の親子に話しを聞いてまわりましたが、おんぶをしていたのは、わずか1組でした。 その理由を聞いてみると。
「そもそもおんぶのやり方が分からない」「前の方が子どもの顔が見られて安心できる」「ファッション感覚で、だっこの方がかっこいい」など理由はさまざまでした。

しかし、不思議なことに、そう答える親たち自身の幼い時の記憶には、自分がおんぶされていた頃の思い出が強く残っているのです。

懐かしきおんぶの景色

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昭和50年ごろにNHKが撮影した映像を見てみると、自転車に乗るお母さんも、選挙の投票所に向かう人も、街を歩く人のほとんどが赤ちゃんをおんぶしています。
そして、当時のテレビドラマを見てみても、やはり赤ちゃんを背中に乗せています。やはり、かつてはおんぶが主流だったのです。

おんぶは、無くなってしまうのか?
真相を確かめるべく、赤ちゃん用品を扱う専門店を訪ねました。すると、店頭に並んでいるのは、やはり、だっこひもばかり。50点あった商品のうち、おんぶひもはわずかひとつだけでした。

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店員さんに話を聞くと、「10年ほど前から海外のだっこひもが人気となり需要が高まった。おんぶひもを買い求める人は、年配の方や子どもを預かる保育所の人たちくらいだ」とのことでした。

おんぶ主流からだっこへ

大阪教育大学教育学部で家政教育や育児について研究している小崎恭弘准教授は、おんぶが少なくなった理由は生活環境の変化にあると考えています。

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「昔は、農作業などで両手を使う必要があった。しかし、子育てに親が専念できる環境になってきたので、親がおんぶをしなくてもだっこだけでもやっていける。また、少子化が進み、同時に複数の子育てという必要性が薄れてきた。おんぶをする人が少なくなってきたから、そういった商品も少なくなり、さらにおんぶ離れが進んだのです」

おんぶを続けるこども園

おんぶは、もう無くなってしまったのか。

そんな中、大阪・八尾市にある興味深い保育園を見つけました。ここでは50年前の開園から変わらず、今でもおんぶを取り入れているというのです。早速園内をのぞいてみました。

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驚いたことに、園内ではおんぶがあふれています。子どもたちをおんぶして外の景色を見る保育士さんがこっちにもあっちにも。おんぶをして子どもの目線を変えて好奇心を育もうという狙いで、おんぶを励行しているのです。

子どもたちの表情は、いきいきと輝いていました。高い位置から景色を見るのが楽しくてしかたがない様子でした。

久宝まぶねこども園の五十嵐宏枝園長に話を聞いてみると、最近の子どもたちは、家でおんぶをしてもらうことが少なく、おんぶのされ方が分からないそうです。

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中には、おんぶを怖がる子どももいます。園では、子どもたちにおんぶに慣れてもらうために、人形を使ったおんぶを取り入れて子どもたちがおんぶになじめるように工夫しています。

子どもたちにおんぶとだっこ、どっちが好き?と質問してみると、ほとんどの子どもが、おんぶと答えたことに正直、驚きました。

さらに園長先生に、おんぶの効果や魅力について聞くと、だっこには無い魅力があるとのことでした。

「だっこは、どうしても世界が狭くなる。一方、おんぶをすると子どもの視線が高くなり、視野も広がるのでいろいろなものが見えてきて、あれはなに?これはなに?の世界ができてきて子どもたちの言葉の獲得につながるのです」

家庭で見直されるおんぶ

この保育園に子どもを通わせる親の中には、おんぶを見直す人が増えています。

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保育園に通う五條豪君は、家に帰ってからもお母さんにおんぶをせがむようになりました。お母さんにおんぶされた時に、豪君は、どんな視界で物事を見ているのか?小さなカメラを付けた帽子をかぶってもらいました。

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まず、左の写真がだっこされた時の目線です。母親の顔や首で視界が遮られ、周りの様子があまり見えません。
それに比べて、おんぶしたときの目線は、肩越しに視界が開けています。豪君は右や左に目線を移して、いろんなものに興味を抱いている様子です。

前出の大阪教育大学教育学部 小崎准教授は、大人の高い目線は、子どもにとっては好奇心をかきたてる要因になっていて、子どもの視界を広げることで脳へ刺激を与え、発育を促すと分析しています。

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母親の五條麻以子さんは、おんぶを始めてから豪君がいろんな事に興味を持ち始めたと実感しています。取材中にも、豪君は飛行機を見つけて指さししたり、新緑の葉っぱに手を伸ばしたりと自分から何かを見つけようとしていました。 母と子が、同じ目線で、同じものを見ながら話すので会話も弾んでいました。

「おんぶをしてこなかった分、最近になってこんな楽しい世界があることに気づきました。おんぶ好きです。豪君おんぶ好きやね?―うん」

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おんぶは、無くなってしまうのか?ふとした疑問から始めた取材。この取材を通して、おんぶならではの魅力があることを知りました。もちろん、だっこにも魅力はあります。どちらが優れているということではありませんが、子どもたちのことを考えて「だっこ」と「おんぶ」をうまく使い分けていくことがよいのかもしれません。
時には、おんぶを取り入れてみてはいかがでしょうか。

安居 智也
大阪局カメラマン
安居智也