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誰でもできる!?有料観光ガイド

年間3000万人にも迫る訪日外国人旅行者。このおもてなしを巡ってことし1月、大胆な規制緩和が行われたのをご存じでしょうか? それまで「通訳案内士」という国家資格が必要だった外国人旅行者の有料での案内を、誰でもできるようにしたのです。各地でユニークなガイドも登場。でも、「なぜ規制緩和?」「誰でもで大丈夫なの?」取材しました。
(ネットワーク報道部記者 玉木香代子)

登場!英語と漫才が売り なにわガイド

冬の寒さを吹き飛ばすほど多くの外国人旅行者の熱気であふれる大阪・道頓堀。ここに通訳案内士の資格はないものの、最近、大人気のガイドの女性がいると聞いて訪ねました。

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その名も“はっちゃん”、大学時代に培った英語と漫才が売りの“底抜けに明るい”26歳のガイドです。ガイドを希望する人は“当日お店で待ち合わせ”がルール。

「ほんとに来るの?」と不安もよぎりましたが、台湾から来た親子にイギリス人男性、それにアメリカ人夫婦の6人が集合。はっちゃんが「おおきに!」とあいさつし、参加者にも大阪弁を覚えてもらうと、集まった人たちの一体感があっという間に高まりました。

路地裏からマンホールまで案内

はっちゃんが案内するのは、ガイドがいなければ足を踏み入れないような路地裏の飲み屋街から、歩くだけでは気づかない、大阪弁が書かれたマンホールやお好み焼きのへらをデザインした橋の欄干など。

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さらには有名なお菓子メーカーのキャラクターが表示された電光掲示板の前では、15分に1回表示が変わるタイミングで、「3、2、1どうぞ~!」と勝手にカウントダウンの大合唱!

案内された人たちは、すっかり大阪の街を満喫していました。
一方、旅行者と仲よく写真を撮ったはっちゃんは「フェイスブックとかやってます?写真送りますね!」と声をかけ、即、つながります。すると帰国したあとに、友達を紹介してくれるそうです。

料金は1回45分のツアーで1人1000円。多い日には1日40人を案内するそうです。

「これからは国家資格がなくても、経験を積めばやっていけると思っています。私の夢は“大阪名物”になることです」(はっちゃん)

企業が観光ガイド派遣も

ガイドを派遣するビジネスも始まりました。
東京・渋谷区にある「ジェイノベーションズ」は、もともと外国人旅行者向けのボランティアガイドを派遣し、現場から得た旅行者のニーズや最新動向をビジネスに活用してきましたが、今回の規制緩和をきっかけに、新たなビジネスを始めました。

さっそく夜のツアーに同行、待ち合わせ場所にやってきたのは、アメリカとカナダ人の友達2人と、南アフリカから来た女性の3人でした。

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案内したのは、外国人に人気のスクランブル交差点を見下ろせるビルのロビーのほか、狭い路地に焼き鳥屋などが建ち並ぶ「渋谷のんべい横丁」、駅の連絡通路に展示されている岡本太郎の壁画などおよそ10か所。さまざまな渋谷を案内しました。

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社長の大森峻太さんは「ガイドを頼む人は、お金を払って自分たちでできないことをやってほしいと思っている。渋谷は外国人にとって、スクランブル交差点とハチ公というイメージが強いが渋谷の魅力はいろんなところにあり、ガイドをすることで渋谷のファンを増やしたい」と話していました。

なぜ規制緩和?

それにしてもなぜ、こんな規制緩和が行われたのでしょうか。

これまで通訳案内士法では、国家試験を合格した「通訳案内士」だけに有料の観光ガイドを認めてきました。でも全国にわずか2万人ほどしかいなくて、年間3000万人にも迫る外国人旅行者のニーズに追いついていませんでした。

特に自然豊かな観光地を抱える地域からはガイドがいればじっくり楽しんでもらい滞在日数も増えるのに、ガイドがいないという指摘もありました。そこでことし1月から大胆な規制緩和が行われたのです。

講習会でガイド育成

一方で「資格がないのに大丈夫?」という心配もありますよね。

そこで今回の法改正をきっかけに大手旅行会社のエイチ・アイ・エスが開いているガイドの養成講座を取材しました。

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この日は中国人対象のガイドの養成講座で、参加者が観光客とガイド役に分かれ練習していました。

会社では、事前に面接して語学能力をチェックしたうえで、観光地でガイドの模擬体験も行うほか、実際に案内したあとに客から評価をしてらもう仕組みを導入し、ガイドの質の維持につとめるということです。

この会社でガイド事業を担当する池田賢一さんは「弊社のガイドが旅行者の満足度を高められるように研修制度を整え、ことし1万人のガイドを養成していきたい」と話していました。

私がガイドになりたい理由

また、研修会に来ていた人の動機はさまざまです。

「定年退職したあと、どう過ごしていいのか悩んでいる中で、中国の人たちと少しでも交流したい」と語るのは中国の駐在経験がある元会社員の60代の男性。

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日本で暮らす中国出身の専業主婦は「日本語学校時代に訪れた浅草の思い出が忘れられない。浅草をめぐる旅や日本舞踊を楽しむサービスを提供して日中友好につなげたい」と話していました。

また、長野県内の自治体にある観光協会の職員は「自分が暮らす町には外国人がほとんど来ないので、自分がガイドをすることで多くの人に来てもらえるようにしたい」と抱負を語っていました。

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TOMODACHIガイドも登場

ガイドのすそ野が広がる中で、まるで友達のようなガイドを派遣するビジネスも登場しています。

この日、京都駅前で待ち合わせたのは、インドネシアから来た26歳の女性、チカさんと20代と30代の日本人ガイドの合わせて3人。チカさんが到着したとたん、3人で抱き合い、「ようやく会えたねー!!」と大喜びでした。

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初めてなのに親しい友人と久しぶりに再会したようなこのノリには、訳がありました。チカさんがガイドを申し込んだのは、インターネットでガイドと旅行者をマッチングするサイト。

京都を旅したかったチカさんは、地元に詳しい若者を紹介してもらうとともに、2か月前からどこを訪れるか、チャットで打ち合わせを積み重ねてきました。

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その中で、チカさんが大好きな日本映画が撮影された京都市内のお寺を訪れることで盛り上がり、実際に会った時にはすでに友達感覚、「ようやく会えたねー」となったのです。

訪れた寺でチカさんは石庭を見るなり、「そうそう、ここ映画で見たのよ!」と大喜び。座り込んでじっくり鑑賞したり、3人で記念撮影をしたりしていました。

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ほかにも映画のロケ地となった鴨川などをじっくり散策。知らない人が見たら友達どうしの旅行にしか見えません。チカさんは「親切なガイドがいて快適で映画のロケ地に行けたし本当にうれしかった」と話していました。

またマッチングを行うサイト「Huber」のコーディネーターの渡邉千尋さんは「事前に相談をして、前もってお互いのことをしっかりと知って信頼関係を築けることがこのサービスの特徴です。旅行者のさまざまなニーズに対応した魅力的なガイドを提供していきたい」と語っています。

ガイドが根付くために

これまでの取材を通じて感じたガイドに必要な能力とは、ある程度の語学力はもちろん、地域の魅力をよく知っていることと、それを多くの人に楽しんでほしいという気持ちを持っていること。

1人でも多くの人たちが、そうした気持ちを持ってこの分野にチャレンジしてくれれば、日本にもガイドが根付くのではないか、そう思いました。

玉木香代子
ネットワーク報道部記者
玉木香代子
平成20年入局
民泊など日本と海外の
新たな関係を取材