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運営の危機!?「医療的ケア児」受け入れ施設の現状

およそ1万7000人。生まれつき重い障害があり、日常的にたんの吸引や、胃に直接栄養を送る「胃ろう」などのいわゆる「医療的ケア」が必要な子どもの数です。医療技術の進歩で命を救える子どもが増えたこともあって、10年前の2倍近くにのぼっています。「医療的ケア」は、医師や看護師など専門の資格を持つ人以外は、研修を受けた家族に限って認められてきました。しかし、こうしたケアを家庭で行うことは家族にとって大きな負担となっています。そんな家族を支えようと始まった民間のデイサービス施設が、いま厳しい運営に直面しています。
(北見放送局記者 楠本美菜)

24時間ケアに追われる親たち

「医療的ケア」が必要な子どもの1人、札幌市に住む小学1年生の関蒼生くんです。先天性の重い障害があり、呼びかけには反応するものの、筋力が弱く、体を思うように動かすことができません。

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このため、自宅では母親の友子さんがつきっきりでケアにあたっています。例えばたんの吸引。たんを吐き出せず呼吸が困難になってしまうため、専用の医療機器を使って、多い時には10分おきに行います。さらに、注入器とチューブで胃に直接栄養を送る「胃ろう」は1日6回。

蒼生くんのほかにも、4歳と生後5か月の2人の子どもがいる友子さんは、睡眠もまともにとれない日々だといいます。

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「ちょっとしたことで重症化するので常にハラハラドキドキ、体調のコントロールは気を遣います。妹が泣いちゃって行かないと焦るしそわそわするし、毎日訳がわからないです」

“家族を支えたい”デイサービス施設がオープン

そんな関さん親子の支えとなる施設が去年4月、札幌市にオープンしました。医療的ケアが必要な子どもを預かる民間のデイサービス施設「ソルキッズ宮の沢」です。

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子どもを預けられる時間は午前9時から午後5時まで。1日最大5人まで受け入れます。人工呼吸器や、心拍数などを測る医療機器を完備し、看護師など専門のスタッフ7人が常駐しています。

蒼生くんも週に1、2回、施設を利用できるようになり、家族の負担は大幅に減りました。

施設を立ち上げたのは、同じように医療的ケアが必要な子どもを持つ親たちです。

代表の宮本佳江さんも、たんの吸引や点滴など24時間のケアが必要な9歳と4歳の娘がいます。娘をどこにも預けられず、社会から孤立していくのを感じたという宮本さん。同じ悩みを抱える家族の力になりたいと、みずから施設を運営することを決めました。

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「自分が望む支援が受けられなかったり、ずっと探し続けていても希望する施設が見つからないっていうのはありました。本当に家族が困っている状況にあわせて子どもたちを受け入れられたらいいなと」

想定外の運営難 施設に何が

しかし、オープンから1年足らずで、施設は運営の課題に直面しています。

宮本さんが見せてくれた、施設の収支を記した帳簿には毎月、マイナスの数字が並んでいました。オープン以来、赤字が続いているのです。最も多かった去年7月は、その額56万円余り。

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なぜ、このような事態になっているのでしょうか。

施設の収入のほとんどは、国や自治体から支給される給付金です。給付金は利用した人の数に応じて決まり、1人につき、1日最大でおよそ2万円が入ります。

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定員の5人が毎日利用すれば、ひと月の収入は必要経費のおよそ200万円を上回ると、宮本さんは考えていました。

ところが、その利用者の数が安定しなかったのです。

理由は、急な欠席です。医療的ケアが必要な子どもは体調を崩しやすく、入院することも多いため、利用の予約をしていても、直前にキャンセルせざるをえないことがあります。

最も赤字が多かった去年7月、定員の5人に達した日はわずか10日でした。その結果、収入が大幅に減り、必要経費である200万円を大きく割り込んだのです。現在は、毎月の赤字を金融機関からの借入金で埋め合わせている状態です。

「1週間受け入れの子が1名、0名、2名という日もある。赤字になりやすいのかなって思いますね」(宮本さん)

スタッフの人件費も

さらに、宮本さんを悩ませているのが支出の8割を占める人件費の高さです。

施設に通う子どもたちは病状や成長の度合いもさまざま。体調が急変することも多く、高度な専門性を持つ看護師が欠かせません。

パートも含めると5人を雇っています。急な事態に備え、看護師は施設だけでなく、送迎の際にも必ず同乗します。労働時間を減らすことも難しいといいます。

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また、体が動かせない子どもは背骨が曲がるのを防ぐため、リハビリが必要です。機能訓練を行う専門スタッフがそれを担います。

さらに保育士も雇い、医療的ケアだけでなく、工作や手遊びといった体験を通じて、成長を促すことも重要です。

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子どもたちの受け入れのためには減らすことができない、スタッフの人件費。こうした人件費に対しては、札幌市から来年度以降、補助金が出ることになっていますが、それも3年が限度です。

このままでは施設を維持できなくなると宮本さんは危機感を抱いています。

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「お母さんたちの状況もわかっていますし、やっぱりそれに今応えてる状況なんですけど、このまま続けていけるのかどうかっていうのは正直思いますね」

かけがえのない場所を守るために

「にーに、おかえりー!」

関友子さんの自宅では、息子の蒼生くんが施設から帰ると、弟の侑生くんが元気に出迎えます。

何気ない日常の風景に見えますが、つきっきりで蒼生くんをケアしていた友子さんにとって、施設がなければ実現することのなかったひとときです。

友子さんは、施設を利用するようになってから、蒼生くんの表情が生き生きしてきたことを実感しています。

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「『いってらっしゃい』と送り出して『おかえり』『ただいま』って帰ってきてくれること自体が当たり前のことなんだけど、私たちにとってそれはすごく貴重な経験で。お母さんが一緒についていかなくても楽しんでくるよっていう、すごくいい表情して帰ってくるんです」

施設の存在が、蒼生くんのケアと、2人のきょうだいの育児を両立させる自信を与えてくれたという友子さん。その存続を願っています。

「今となってはなくてはならない場所。なかったらたぶん今以上に疲弊していたと思います。かけがえのない場所ですね」

国も対策へ 現場はどう変わる

こうした民間のデイサービス施設は、5年前の法改正をきっかけに全国で350以上にまで増えました。しかし、その多くが同じように赤字を抱え、1施設当たりの平均の収支は年間でおよそ10%のマイナスというデータもあります。

こうした中、国も対策を検討し始めています。厚生労働省に取材したところ、ことし4月に行われる障害福祉サービスの報酬改定で、まずは新たに、看護師の人件費について給付金を加算する方針を決めたということです。

今の仕組みでは、収入が利用者の人数によって大きく増減してしまいます。そこで、固定的な経費である看護師の人件費に対して給付金を出すことで、施設の収入を安定させようとしています。

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「当日や前日に急遽体調が変わって、通いたくても通えなくなったという例があるという声も聞いているので、いわば暫定的な、応急的な措置をとることによっていっときも早く対応をしていきたい」

また、厚生労働省は、利用者の急なキャンセルについても考慮して、給付金を加算する方向で検討を進めるとしています。ただ、新たな給付金の額などはまだ示されておらず、現時点では、施設の運営にどの程度の効果があるかは不透明です。

取材後記

私が施設の代表、宮本佳江さんに出会ったのは2年半前。当時は1人の母親として懸命に2人の娘のケアにあたっていて、「待っていても何も変わらない」としょうすいした様子で話していたのが印象的でした。

その後、みずからフォーラムを開いて環境の整備を訴えたり、親子が気軽に集まれる場所を作ったりと精力的に活動を続けた宮本さん。次第に、つながりのなかった同じ立場の親たちがひとつになり、施設の立ち上げにまで結びつきました。

それぞれの子どもにあった施設が選べ、家族がその地域で生き生きと暮らしていける。宮本さんたちの思い描く未来はまだ実現していません。

家族を支えたいという思いを持った施設が今後も増えるよう、現場の実態により即した仕組みになってほしいと思います。

楠本美菜
北見放送局記者
楠本美菜