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藤井聡太四段 2018年への思い

「ひふみん」の愛称で親しまれ、史上最年長で引退した加藤一二三さん。前人未到の「永世七冠」の偉業を達成した羽生善治さん。2017年は、かつてないほどに将棋界が話題になる1年となりましたが、中でも最も注目されたのが、中学3年生のプロ棋士・藤井聡太さんです。史上最年少棋士にして連勝記録を30年ぶりに更新し、一躍“日本一有名な中学生”となった藤井さん。高校生となる2018年は、どのような活躍を見せてくれるのか。「大舞台でスター棋士に挑戦したい」インタビューで語ってくれたのは、幼いころから変わらない、将棋への強い思いでした。(科学文化部記者 河合哲朗)

大躍進を振り返って

東京・将棋会館の対局室で行われたインタビュー。スーツ姿で、やや緊張した表情で現れた藤井聡太四段に、まずは“お正月の過ごし方”を聞きました。

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「お正月は毎年、親族が集まったりして、家でのんびり過ごしています。愛知県なのですがお雑煮はみそではなくて、しょうゆです。お餅は、うちは角餅で。お年玉は、一応プロ棋士になったので、ちょっとことしはどうでしょうかね」

はにかんで笑う表情にあどけなさが残る15歳の藤井さん。おととし、史上最年少の14歳2か月でプロ入りし、12月のデビュー戦で史上最年長棋士の加藤一二三さんと対局しました。

年齢差は実に62歳。トップ棋士も注目の対局となりましたが、藤井さんは大先輩を相手に見事勝利を収めます。

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「加藤先生との対局では、本当にあふれんばかりの闘志というものを盤の前で感じて、その気迫こそが、加藤先生の持ち味なんだなと感じました」

初戦を華やかに飾った藤井さんは、その後も破竹の勢いで勝ち続けます。

勝ち星を重ねるごとに注目が高まっていきましたが、藤井さんはそのプレッシャーをはねのけ、去年6月、デビューから一度も負けずに公式戦29連勝を達成。プロ1年目にして、将棋の最多連勝記録を30年ぶりに更新しました。

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大躍進のこの1年については。

「2017年は、たくさんの経験をさせていただき、大きく成長できた1年でした。29連勝を達成できたことは、自分としても、とても印象に残りましたし、自信にもなりました。デビュー1年目でこれだけ注目していただけることは、本当にめったにないことだと思うので、そのことをきっかけに将棋に興味を持っていただく方がいればうれしいです。あれだけの報道陣の方に囲まれるということも、なかなか経験できないことなので、これからもっと上の舞台を目指すにあたっても、あの経験ができたことはとてもよかったと思います」

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迷いもあった高校進学

現在、中学3年生の藤井さんは、この春から高校へ進学することを決めています。インタビューでは、進路を決めたいきさつについても聞きました。

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「これからの3年間が本当にとても大事な時期だと思うので、自分でもいろいろ考えて、いろいろな方にアドバイスもいただきました」

進路を決める中では、高校に通わずに将棋の研究に専念すべきか、それとも、進学して将棋以外の世界も知ることで視野を広げたほうがよいのか、迷いがあったという藤井さん。背中を押したのが、過去に中学生でプロ入りを決めた4人の先輩棋士の存在でした。

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その4人とは、加藤一二三さん、谷川浩司さん、羽生善治さん、渡辺明さん。全員が高校を卒業したうえで歴史に名を残す名棋士となっていたことが、後押しになったと言います。

「過去に中学生棋士になられた先生方も、全員高校を卒業されていて、羽生先生も将棋界の枠を超えて活躍されていますので、そういった先輩の背中を見て、自分もそれに近づけるようにと思いました。将棋だけじゃなくて、まだまだいろいろなことを吸収していきたいという思いがあったので、高校に行くということも自分としてはメリットのあることではないかという結論になりました。いろいろな世界に触れていきたいと思っているなかで、学校の友人というのもすごく大切な存在だと思います」

色紙に書いたことしの抱負は

藤井さんは連勝が途絶えたあとも勝ち星を重ね、去年末までの成績は55勝10敗と、引き続き全棋士の中でも高い勝率を維持しています。

現在戦っている「順位戦」は、在籍している「C級2組」で全勝中。このまま3位以内に入れば、1つ上の「C級1組」に昇級するとともに、五段への昇段が決まります。

インタビューの最後に、ことしの抱負を色紙に書いてもらいました。

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その言葉は「飛翔」。
達筆に記したあと、色紙を胸に「大きな目標に向けて、力強く飛んでいける1年にしたいという思いで『飛翔』というふうに書きました。もっと実力をつけてトップに食いついていけるようにしていきたいと思います」と語りました。

藤井さんは小学4年生のとき、文集に「名人をこす」という大きな夢を記していました。

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史上最多の連勝記録という、これ以上ない形で棋士生活をスタートさせ、その夢に一歩ずつ近づいている藤井さんですが、今後トップ棋士と対戦するには、格上の棋士を相手にタイトル戦などのトーナメントを勝ち進んでいく必要があります。

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藤井さんは、ことし1年を通じてさらに実力を高めていき、羽生善治さんや、20代で名人になった佐藤天彦さんに挑戦したいと、力強く語っていました。

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「2018年は、タイトルという大きな目標に向けて、じっくり力をつけていきたいと思います。羽生先生や佐藤名人といったスター棋士に大舞台で挑戦したいという気持ちはあります。これからの数年間というのが本当に大きく成長できる時期だと思うので、日々強くなれるように頑張っていきたいと思います」

河合哲朗
科学文化部記者
河合哲朗