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「やさしい日本語」でおもてなし

高台たかだい避難ひなんしてください」は「高いところに逃げてください」

余震よしん」は「後から来る地震」

やさしい日本語は、難しい単語を使わないなど、外国人のためにわかりやすく工夫をした日本語です。阪神・淡路大震災はんしんあわじだいしんさいをきっかけに、災害のときにコミュニケーションをとるために考え出されましたが、国際化が進む日本で、在日外国人との日常的コミュニケーション、観光客との会話など、さまざまな場面で「やさしい日本語」が注目を集めています。(おはよう日本ディレクター 越智望)

やさしい日本語でまちづくり

滋賀県長浜市は製造業が盛んで、工場で働く人など、3000人を超える外国人が暮らしています。ポルトガル語を話すブラジル人や、スペイン語を話す南米系の人。最近では中国人やベトナム人が増えてきました。

日本で暮らす外国の人たちは、日本語が少しわかるものの、日本語独特どくとくの難しさがあるといいます。

「『以上いじょう』、『異常いじょう』とか、ひらがなは一緒だけど、発音で意味が変わるから難しい」

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長浜市役所では、外国人の生活をサポートしようと、外国の言葉に翻訳ほんやくしたパンフレットを作成しています。さらに、窓口には専用の通訳も雇っています。

しかし、多国籍化たこくせきかが進む中、すべての言葉に対応することは、お金の面でも、人材の面でも難しいと考えています。

そこで注目したのが「やさしい日本語」です。

国立国語研究所が日本に暮らす外国人に行った調査では、“英語がわかる”と答えた人が4割なのに対して、“日本語がわかる”とした人は6割を超えています。

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日本語を外国人に通じるよう、上手に使えば、コミュニケーションに役立つと考えたのです。

育休中いくきゅうちゅう」をやさしい日本語にしてみると…

先月、市の国際交流協会が日本人向けにやさしい日本語の勉強会を開きました。

参加したのは、仕事で外国人と関わる人やボランティアで日本語を教える人たちです。

最初に与えられた課題かだいは、私たちが何気なく使う単語を言い換えることでした。そのお題は「育休中」。

参加者の議論を聞いてみると…。

「子育てに専念しています」

「子育てで休職中…」

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言い換えてはいますが、結局、漢字を使った熟語じゅくごが出てきてしまっています。

やさしい日本語には、正解はありませんが、例えば、こんな言い方だと、外国人に伝わりやすいといいます。

「育休中です」=「赤ちゃんがいます。いま仕事を休んでいます」

ポイントは、漢字の熟語はできるだけ避けること。さらに、短い文章に分け、意味をわかりやすくすることです。

やさしい日本語 実際に使ってみると

長浜市では、外国人が集まるイベントを利用し、「やさしい日本語」を使ってもらう場も用意しました。

参加した男性は、日本の秋について話を始めました。

男性「紅葉こうようという言葉がわかりますか?」

留学生「…」

そこで、男性は言い換えて、会話を続けます。

男性「日本の山の葉っぱの色。色が変わりますね。赤くなったり、黄色くなったり、皆さんはあの色を見てどう思いますか?」

留学生「きれい」

簡単な言葉で丁寧ていねいに説明すると意味が伝わりました。

民族衣装に着替えた外国人留学生を見た日本人が、声をかけました。

似合にあってますね」

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どうも意味が通じません。この女性は「似合う」という単語を知らなかったようです。

そこで「かわいいです!」と思い切った言いかえをしてみました。

日本語のレベルは人によって違います。やさしい日本語で大切なのは、それぞれの人に通じる単語を探すことなのです。

やさしい日本語を観光資源に

「やさしい日本語」をセールスポイントにする観光地も出ています。福岡県柳川市です。

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2015年に柳川市を訪れた外国人旅行者は、約15万人。そのうち8万人が台湾からの観光客です。

インターネットの調査では、台湾の人の6割以上が日本語を勉強したことがあり、さらに、多くの人が「日本語で話しをしてみたい」と回答しています。日本語ならば町をあげておもてなしできると考え、柳川市は去年から本格的に取り組み始めました。

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市の観光協会の高橋努武副会長は、「日本語で話すのならば、幅広い方々がそれに対応、おもてなしできる。大きなメリットだと思います」と話しています。

市はやさしい日本語の講習会を開き、まずは観光業者が「やさしい日本語」を使うことにしました。変えたのは、日本人にとって当たり前の接客フレーズです。

「お召し上がりください」「ご試食いかがですか?」

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丁寧な言葉ですが、敬語けいごや、「いかがですか?」といったあいまいな表現は、外国人には伝わりにくいケースが多いのです。

講習を受けた店員さんは「敬語を使わなくていいというので、本当におもてなしになるのか…」と不安を隠せない様子。

台湾から来た観光客に名物ののりのつくだ煮をすすめてみました。

「あまい、からい、おいしい」

つくだ煮という言葉は難しいので、簡単な単語で味を説明します。

「食べてください!」

敬語ではなく、ストレートな言い方で、試食をすすめます。

レジでの会話も工夫をしました。袋の大きさを客に聞くときは、実物を見せて問いかけます。

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店員「お土産の袋は、小さいのと、大きいのと」

観光客「大きいでいいね」

ちょっとした工夫ですが、観光客は日本語での会話を楽しめたようです。

やさしい日本語のポイント

・熟語や敬語はできるだけ避ける。

・難しい単語は、短い文章を使って説明する。

このほかにも気をつけるべきことがあります。それは、私たちの話し方。

例えば、会話で、こんな話し方をしませんか?

「きのう渋谷に行って~、友達に会って~、この前見た映画の話をして~」

こうした長い話しことばは、なかなか理解してもらえません。

「きのうは渋谷に行きました。友達に会いました。映画の話をしました」

このように短く切って話すと伝わりやすいそうです。

さらに、「○○できないわけではありません」など、私たちがソフトな表現をしようと使う「二重否定にじゅうひてい」も会話を複雑ふくざつにします。できるだけストレートな表現をすることが大切です。

やさしい気持ちも大事です

取材を通して「やさしい日本語」を学びましたが、大切なのは技術だけではないと感じました。今回取材した長浜市の勉強会で、日本人の参加者たちの姿が印象に残っています。

彼らは、まだ日本語が得意ではない外国人が話す言葉を、なんとか理解しようと熱心に耳を傾け、その表情や身ぶり手ぶりを凝視ぎょうししていました。

自分の言いたいことを分かってもらうため「やさしい日本語」で話しかけるだけではなく、「やさしい気持ち」で一生懸命相手の言いたいことを理解しようとしていたのです。

こうしたことは、人と人がコミュニケーションを取るうえで当たり前のことかもしれません。でも、どちらかが傲慢ごうまんな気持ちを持ってしまったら、とたんにコミュニケーションは難しくなります。そうした意味でも「やさしい日本語」が教えてくれることは少なくないと感じました。

越智望
おはよう日本ディレクター
越智望

NEWS WEB EASYもあります!

「やさしい日本語」は、NHKのニュースサイト「NEWS WEB EASY」で読んだり聞いたりすることができます。

日本に住んでいる外国人のみなさんや、外国に住んで日本語を学んでいるみなさんのために、わかりやすいことばでニュースを伝えるウェブサイトです。

漢字にはぜんぶ、ひらがなで読み方がついています。難しいことばには辞書の説明もついています。そして、できるだけやさしいことばでニュースを書いています。音で聞くこともできます。

日本のことを知ったり、日本語を学んだりするために、NEWS WEB EASYをぜひ読んでみてください。