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先生が足りない”現場で何が“

「授業ができない」「担任がいない」
いま、全国の公立の小中学校で「先生が足りない」という異常事態が起きています。NHKが都道府県と政令指定都市、合わせて67の教育委員会に取材したところ、ことし4月の始業式時点で、半数近い32の教育委員会で、定数に対して少なくとも717人もの教員が不足していたことが明らかになりました。こうした学校では教頭などが担任や授業を受け持つなどして影響を最小限にしていますが、中には授業ができなくなるところも出ています。(熊本放送局・大西咲記者)

「とにかく見つかりません」

関西地方のある中学校では、美術の教員が病気で休職して授業が出来ず、およそ3週間、別の教科に振り替えざるを得なくなりました。代わりの教員を求めたものの教育委員会からの回答は「とにかく見つかりません」。

ほかの学校でも理科の授業を3か月行えず試験を中止したり、学級担任を教頭が兼務したりするケースもあり、事態は深刻です。

なり手のいない「臨時採用」

教員不足の大きな要因が「臨時採用」の教員、いわゆる「臨採」です。通常、病気や産休などで欠員が生じた場合、この「臨採」で補充しますが、その確保ができなくなっています。

背景にあるのが少子化を見越した教員の採用の見直しです。教員の定数に占める臨採の割合は、年々、拡大しています。

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今後、少子化がさらに進むと教員の定数が削減されるため、教育委員会は正規教員の採用を抑え、非正規雇用の臨採の枠を広げているのです。しかし、枠を広げる一方で、思うように「なり手」は増えていません。「臨採」を確保できない学校の現場で何が起きているのか取材しました。

きめ細かい指導ができない

熊本県天草市の本渡中学校では、ことし5月に英語の教員が病気で休職したあと2か月近くたった今も代わりの英語教員が見つけられていません。この中学校では昨年度まで、1年生の英語の授業でクラスを半分に分け少人数できめ細かい指導を行ってきましたが、今年度は教員が足りず、大人数のままでせざるをえない状況です。

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中学校は県の教育委員会に「臨時採用」の教員を要請しましたが、隣の県まで探してもらったり、ハローワークに求人を出してもらったりしても見つかっていません。本渡中学校の岩崎宏保校長は「子どもたちの学力保証に大きく関わる問題だが、教員はなかなか見つからず非常に厳しい状況です」と話しています。

苦肉の策で教員を確保

こうした中、苦肉の策で急場をしのぐ学校も出ています。

高知市の大津小学校で、4月から産休に入った教員に代わって音楽を教えている「臨時採用」の田所可南子先生は、実は、小学校の教員免許を持っていません。

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持っているのは「幼稚園」の教員免許ですが、それでも小学校の教壇に立てるのは「助教諭免許」という特例制度です。

教員の免許は、幼稚園・小学校・中学校などにわかれ、本来は、その範囲でしか教えることは出来ません。しかし、いずれかの免許を持っていれば、指導能力があることを条件に3年間に限って免許の範囲を超えて指導できると法律で認められているのです。

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この制度の活用に踏み切った校長の西尾豊子さんは「授業に穴をあけてはいけない」と強い危機感を持っていました。西尾校長は「教員がきちんと配置されていないと十分な教育が提供できない。教員の絶対数が足りない中、のんびり構えている訳にはいかない状況です」と話しています。

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「助教諭」という特例制度に頼らざるをえない学校は珍しくなく、平成27年に全国で発行された助教諭の免許は5000件余りにのぼっています。それほど追い詰められている現場が多いのです。

「潜在教員」をどう取り込むか

一方で、「教員不足」に対する対策はないのか調べてみると、残念ながら現状では「特効薬」はないと言わざるを得ません。ただ、実は、教員免許の取得者数はそれほど減っておらず、過去5年間ではほぼ横ばいです。さらに、教員免許を持ちながら子育てなどで職場を離れている、いわゆる「潜在教員」もいて、すぐにでも臨採になれる人は一定数います。こうした人たちをいかに取り込んでいけるかが対策の鍵になると言えそうです。

教員の働き方の議論を

全国の小中学校で教員不足が相次いでいることについてどう考えているのか。文部科学省の佐藤光次郎教職員課長に聞きました。

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最近特に出産や育児などで休職する教員が増えていることもあり、臨時教員の確保が難しくなっている課題があることは受け止めている。子どもたちの学習環境を維持するために必要な教員を確保することは基本なので、国としてもしっかり対応しなければならない。教員の仕事の負担が重かったり、多忙になったりということがネックとなり、教員のなり手を十分に確保できていないことが背景にあると思う。教員の働き方は使命感ややりがいと表裏一体だと思うので、それについてもどう改善していくか幅広く議論し、人が集まるような環境にしていきたい。

教員の働き方の議論を

一方、教員不足の問題に詳しい慶應義塾大学の佐久間亜紀教授は、教員のやりがいを訴えるだけでなく、国が財源を確保して採用構造を見直す必要があると指摘します。

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教員の採用計画ですとかを長期的に再検討するということは、各自治体しなければいけないことではないかなと思います。ただ、これは自治体の裁量の範囲ではなかなか、地方自治体によって格差が出てしまう問題ですので、国の支援というのは欠かせないと思います

義務教育確保へ対策急務

すでに学校現場に影響が出ているので、教員不足の解消には中長期的な対策だけでなく即効性のある対策が必要だと取材して感じました。

教育委員会の中には、一定期間、臨採として勤務すれば正規教員になるための採用試験の一部を免除するなどの措置に乗り出す動きも出ています。特効薬はないかもしれませんが、義務教育の現場で起きていることなので教育委員会や国はあらゆる対策をとって教員不足の解消を急いでほしいと思います。

大西咲
熊本放送局
大西 咲 記者