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初の1000兆円超も 国債発行残高と財政の課題

かつては異例だった100兆円超えの当初予算。それが今、当たり前とも言える状況になっています。この間、国債の発行残高は増え続け、今年度末に初めて1000兆円を突破する見通しです。新年度からは、いわゆる「団塊の世代」が75歳以上になり、社会保障費のさらなる増加が避けられませんが、構造的な課題の解決に向けた手だてが十分に講じられたとは言えません。新型コロナの影響が長期化し、「オミクロン株」という新たな懸念材料も出る中、暮らしや事業を支えつつ、経済を自律的な成長軌道に乗せられるか。財政健全化の道筋を示すためにも、「成長と分配」の政策の具体的な成果が問われます。

詳しい中身は

国債発行残高

新規の国債発行額は、36兆9260億円と、今年度の当初予算と比べて6兆6710億円減り、2年ぶりに前の年度を下回りました。

このうち、公共事業などに使いみちが限られている「建設国債」は、6兆2510億円で、今年度の当初より900億円減り、歳入不足を補うための「赤字国債」は30兆6750億円で、6兆5810億円減ります。

この結果、歳入全体に占める国債の割合、いわゆる公債依存度は34.3%となります。当初予算としては、7年ぶりに40%を超えた今年度よりは改善するものの、依然として国債頼みの状況が続きます。

東日本大震災の復興債などを加えた国債の残高は、今年度の補正予算で新たに国債が22兆580億円発行されることから、今年度末で1004兆4000億円となる見込みで、1000兆円を超えれば初めてとなります。

新年度、新たに発行される国債もあわせると、新年度末には1026兆5000億円となる見通しです。

財政の課題

政府は、政策に必要な費用を借金に頼らず、税収などでどれだけ賄えているかを示す「基礎的財政収支」を財政健全化の指標の1つとしています。

新年度予算はこの基礎的財政収支が、一般会計で13兆462億円の赤字となり、今年度の当初予算の段階の20兆3617億円の赤字から7兆3155億円縮小します。

政府は国と地方を合わせた基礎的財政収支を2025年度に黒字化する目標を掲げていますが、2021年7月に示した試算では、実質で年間2%程度を上回る高めの経済成長が続くという想定でも、2025年度は2兆9000億円の赤字で、黒字化は、政府の目標より2年遅れの2027年度になるとしています。

目標の達成に向けては、引き続き、歳出改革や経済成長による歳入の増加が必要になります。

さらに、政府は大型の経済対策の効果もあり、新年度はプラス3.2%程度の高い成長率を見込んでいますが、新たな変異ウイルス「オミクロン株」の感染拡大などで、経済活動が抑制されれば、税収の減少などを通じ、財政が一段と悪化するおそれもあります。