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暮らしに身近な予算

2020年度の当初予算に盛り込まれた暮らしに身近な予算です。

医療
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医療機関に支払われる「診療報酬」のうち、医師の人件費や技術料などにあたる部分は、働き方改革を推進する費用も合わせて0.55%引き上げる一方、薬の価格にあたる「薬価」の部分は引き下げ、全体ではマイナス改定となりました。

また、マイナンバーカードを健康保険証の代わりに使用できるよう、医療機関にカードの読み取り機やシステムを整備するための費用として、768億円が計上されました。

子育て支援

子育て支援の分野では、去年10月に始まった、幼児教育と保育の無償化を年間を通じて実施するための費用として、3410億円が盛り込まれました。

教育

高等教育の無償化
教育の分野では、所得の低い世帯を対象にした4月からの高等教育の無償化を実施するための費用として4882億円が新たに盛り込まれました。授業料の減免のほか、給付型の奨学金を支給するために活用されます。

私立高校の授業料実質、無償化
また、年収がおよそ590万円未満の世帯を対象に、4月から私立高校の授業料を実質、無償化するための費用などとして4248億円が計上されました。

子どもの安全対策

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このほか、通学路で子どもが被害にあう事故が相次いでいることから、歩道の拡幅や防護柵の設置、それに車のスピードを抑えるために道路に段差を設けるなどの安全対策を行う費用として30億円が盛り込まれました。

引きこもり支援

また、仕事につかずに自宅に引きこもっている人を支援するため、自立相談支援機関の窓口に専門の職員を配置し、個別に自宅を訪問して相談に乗ったり、就労を手助けしたりするための費用として32億円が計上されました。

領事業務のデジタル化

マイナンバーカードを活用して自宅などのパソコンからパスポートの申請をしたり、クレジットカードで手数料を支払えるようにするための費用として2億3000万円が計上されました。

プラスチックごみ対策
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海洋汚染につながるプラスチックごみを削減するため、リサイクル設備の導入や代わりとなる素材の開発、それに海岸に漂着したプラスチックごみの回収を支援するための費用などとして、特別会計からの支出を含め、およそ131億円が盛り込まれています。

そのほかの注目の予算

そのほかの注目予算です。

東京オリンピック・パラリンピック

組織委員会によりますと、東京オリンピック・パラリンピックの大会の開催に直接、必要な経費は1兆3500億円にのぼり、組織委員会と東京都がそれぞれ6000億円、国が1500億円を負担することになっています。

国の2020年度の予算案には、大会に関連する経費も含めて、537億円が計上されています。

▽メダル獲得に向けて各競技団体が行う選手の強化活動などに100億円
▽大会の警備にあたる警察の部隊の態勢強化に100億円
▽最新のスポーツ科学などに基づいた専門的な支援を行う拠点の設置などに22億円が盛り込まれています。

しかし、年度内に大会が開催されない場合、事業の内容次第では予算が不用になる可能性もあり、関係省庁で対応を検討することにしています。

一方、大会の延期で、競技会場などの施設の維持費やスタッフの人件費など、経費が想定より膨らむ可能性もあり、政府は今後、東京都や組織委員会と経費の精査を進めることにしています。

観光
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観光の分野では、2020年に外国人旅行者を4000万人にまで増やす目標の達成に向け、主要な空港で搭乗手続きを、いわゆる「顔パス」で行えるよう顔認証のシステムを導入したり、外国人旅行者に人気があるスノーリゾートを整備したりする費用などとして、540億円が盛り込まれました。

一方、外国人旅行者の増加や、不正な薬物の水際での取締りに対応するため、税関の職員を増員したり薬物を探知する装置を増やしたりする費用などとして145億円が計上されました。

産業

産業分野では、バスやタクシー、それにトラックなどの無人での自動運転を実現するため、実証実験や技術開発を進めるための費用などとして50億円が計上されています。

また、中小企業がIT技術を導入する費用の補助や後継者不足で悩む企業と後継ぎになるのを希望する人のマッチングを後押しするための事業費などとして331億円が充てられます。

インフラの老朽化対策
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公共事業の分野では、自治体が管理する橋やトンネルなどの老朽化対策の工事を支援するための費用として、2255億円が盛り込まれました。

ASF対策
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このほか、アジアでも感染が広がるブタの伝染病、ASFの対策として、空港などに配置する探知犬を140頭に増やすなど、検査体制を強化する費用に9億6000万円余りが計上されました。

文化財の防火防災
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また、ことし発生したパリのノートルダム大聖堂や沖縄県の首里城での火災を受け、文化財にスプリンクラーなどの防火設備を設置したり、耐震化などの防災対策を進めたりするための費用として39億円が計上されました。

新しい経済対策
17788億円

一連の災害からの復旧・復興、それに、東京オリンピック・パラリンピック後を見据えた景気活性化策などを柱とした、新たな経済対策には1兆7788億円が計上されました。

詳しい中身は

ポイント還元制度

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このうち、消費税率の引き上げに合わせて始まったキャッシュレス決済のポイント還元制度は、想定を上回るペースで利用が増えていて、ことし6月までの期間中の経費として2703億円が計上されました。

マイナンバーカード

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また、マイナンバーカードを活用した消費活性化策に2478億円が計上されました。マイナンバーカードを持っている人を対象に、1人当たり最大2万円までのキャッシュレスでの決済や入金に対して5000円分のポイントをつけるもので、ことし9月から2021年3月までの7か月間、実施されます。

すまい給付金
このほか、一定の所得に満たない人が住宅を購入する場合に現金を給付する「すまい給付金」は、1145億円が計上されました。消費税率の引き上げによる住宅販売の落ち込みを防ぐため、ことし10月から給付額の上限が30万円から50万円に引き上げられていて、2020年度も引き続き、補助が受けられます。

国土強じん化

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さらに、防災・減災に向けた「国土強じん化」の予算では、3年間の「緊急対策」の一環として最後の年となる2020年度は、1兆1432億円が計上されました。洪水のおそれがある河川の堤防のかさ上げやため池の決壊を防ぐ工事のほか、洪水や土砂災害のハザードマップの作成が遅れている自治体を支援するための費用などが盛り込まれました。

一般会計総額
1026580億円

一般会計総額円グラフ

「社会保障費」、「地方交付税」、「国債費」の3つの経費で歳出全体の73%を占めています。このため、このほかの政策に自由に使える予算上の余地は少なく、「財政の硬直化」が続いています。

社会保障費
358608億円

社会保障費グラフ

「社会保障費」は、全体のおよそ3分の1を占め2019年度の当初予算より1兆7302億円増えて、過去最大の35兆8608億円となりました。増加した要因を見てみますと、高齢化によって医療や介護などにかかる費用が4111億円増えました。また、4月から始まる低所得世帯を対象とした高等教育の無償化の費用として新たに4882億円が計上されたほか、去年10月から始まった幼児教育と保育の無償化にかかる費用が年間を通して必要となり、1878億円増えることなどから、社会保障費全体が大きく押し上げられました。

自治体も懸命な抑制努力

地方自治体の間では病気を予防することで、医療や介護の費用抑制につなげようという動きが出始めています。

社会保障画像

このうち福岡県行橋市は今年度から50代から60代の市民を対象に、体力年齢の10歳若返りを目指すプロジェクトを始めました。市民の体力年齢を若返らせることで、病気になって病院に通ったり、将来的に介護が必要になったりする人を減らし、社会保障費の抑制につなげることがねらいです。

連携したのは、フィットネスジムを展開する「ライザップ」や、地元のIT企業、それに大学などです。30人の参加者は、10月から先週までライザップのトレーナーから週に1度の運動指導と、食事管理の指導を受け、体力年齢の若返りを目指しました。

そして先週行われた体力年齢の測定会では、体の柔軟性や俊敏性がチェックされ、中には指導を受ける前より10歳以上、体力年齢が若くなった人もいました。

社会保障画像

参加した女性は、「暇があれば体を動かすように頑張りたい。今のところ病院に通うことがないので、これからもずっとこの状態を続けたい」と話していました。

医療や介護などの社会保障費は、国や地方自治体なども負担しているため、健康な人が増えれば、国や自治体の負担が減る可能性があると言われています。

行橋市では、2018年度、介護サービスの利用に伴う市の負担額が10年前より65%増えています。

社会保障画像

行橋市の松尾一樹課長は、「人口減少で税収もどこまで伸びるかは見通せないので、社会保障費の削減が必要だ。より多くの人に広めていきたいと思う」と話していました。

行橋市では、今後、大学とも連携してこうした取り組みでどれだけ社会保障費の抑制ができたのか、数年かけて検証することを検討しています。

防衛費
53133億円

防衛費グラフ

2020年度予算案で、2020年度の防衛費の歳出は8年連続の増加となり、2019年度の当初予算と比べて559億円多い、過去最大の5兆3133億円となりました。

詳しい中身は

防衛省は、2020年度、実際には支出しないものの新たな契約が認められた装備品の予算額も含めて、防衛関係費の2020年度予算案として公表しています。

防衛費画像

宇宙分野では、航空自衛隊に、宇宙空間を監視する「宇宙作戦隊」を新設する費用や、日本の人工衛星に対する、電波妨害を把握する装置の取得などに、506億円が認められました。

サイバー分野では、陸上自衛隊に、「サイバー防護隊」を新設したり、人材育成を強化したりする費用が、256億円となっています。

2000年から配備を始めた航空自衛隊のF2戦闘機が、2030年代から退役することから、後継となるステルス性を持つ次期戦闘機の開発費として、111億円が盛り込まれました。防衛省は、次期戦闘機は、国際協力を視野に、日本主導で開発するとしていて、機体の形状やエンジンの設計に取りかかるとしているほか、戦闘機を支援する無人機の研究も始めるとしています。

防衛費画像

短い距離で離陸し、垂直に着陸できるアメリカ製のステルス戦闘機F35Bを初めて、6機取得するのに793億円、F35Bの運用を想定し、海上自衛隊最大の護衛艦「いずも」を事実上「空母化」するため、甲板などを改修する費用として31億円が認められています。

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護衛艦の54隻体制に向けて新たな2隻の建造に944億円、潜水艦の22隻体制に向けて新たな1隻の建造に702億円が認められています。

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特定の場所への配備を前提としない形で、新型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」に連動して、ミサイルを発射するVLS=垂直発射装置を6基取得するために115億円、遠隔操作で水中を進み、必要に応じて自爆して敵の艦艇の動きを阻止する水中防衛用の小型無人機の導入に75億円が認められました。

航空作戦の際に電波妨害を行う「電子戦機」の開発に150億円、新たな小銃、3200丁余りを取得するため9億円が認められています。

防衛費画像

一方、防衛省は、退役するヘリコプターの部品をほかの機種に転用したり、車載型で現在、沿岸用、低空用、対迫撃砲弾用、対砲弾用の4種類ある監視レーダーを、新たに開発する1種類に統合したりして合理化を進め、4300億円余りのコストを削減するとしています。

国債発行残高
906兆円

国債発行残高グラフ

政府が、2020年度に発行する国債は、総額で153兆円余りに達し、6年ぶりに前の年度の当初計画より増加します。この結果、国債の発行残高は、2020年度末の時点で906兆円となり過去最高を更新する見通しです。新規の国債の発行が続いていることから発行残高は毎年、過去最高を更新し、膨らみ続けています。

税収は消費税が最多に

税収画像

2020年度の税収は、過去最高の63兆5130億円となる見込みで、去年に決定した補正予算案にあわせて見直された2019年度の見込み額と比べると3兆3330億円多い額です。

増収となる要因を税の種類で見ますと、消費税は、税率の引き上げによる増収分が年間を通じて入ることなどから2019年度に比べて2兆6570億円増加します。

また、2020年度の経済見通しなどを反映させた結果、2019年度に比べて所得税の税収が4650億円、法人税の税収が3500億円、それぞれ増加すると見込まれています。

このうち、消費税の税収は、3%の税率が導入された翌年度の平成2年度には、4兆6227億円でしたが、2020年度は、その4.7倍の21兆7190億円に拡大すると見込まれています。

一方、これまでトップだった所得税の税収は、2020年度は、19兆5290億円と見込まれていることから、消費税が所得税を抜いて税の中で最も税収が多くなる見通しです。