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月面着陸船 燃料つき落下か 何が起きた?時系列で

26日未明、日本のベンチャー企業が開発した着陸船が世界初の民間による月面着陸に挑みましたが、着陸予定時刻のあと通信が途絶え、計画していた着陸はできませんでした。
着陸船に何が起きたのか、当時の動きを時系列でお伝えします。

0:40ごろ 月に向けて降下始める

企業によりますと、着陸船の向きや姿勢などに問題はなく、当初の予定どおり、26日午前0時40分ごろ、月に向けて降下を始めたということです。

着陸船は、ガスを噴射して減速するとともに姿勢を変えながら徐々に月面に近づき、午前1時40分ごろ、着地の衝撃を和らげる4つの脚で月の北半球にあるクレーター付近を目標に降り立つ計画です。

会見場のようすは

東京・江東区の日本科学未来館に設けられた会見場には、月着陸船を開発した「ispace」の代表、袴田武史CEOのほか、関係者など200人余りが訪れました。

会場では、午前0時半ごろから設置された2つのスクリーンに月着陸船が着陸するまでをCG化した映像のほか、管制室の様子などが映し出されました。

01:40ごろ 担当者がモニターで状況確認

月着陸船が月面への着陸を予定している午前1時40分ごろ、会見場のスクリーンには管制室の様子が映し出され、担当者がモニターで着陸船の状況を確認する姿が見られました。

着陸船からの通信データをもとに企業が作成した動画では、着陸予定時刻の25秒前に月の高度80メートルまで降下しそのときのスピードは「時速31キロ」と表示されていました。

動画の右上には、通信データを反映させていることを示す「UPDATE」と表示されていましたが、その後、「SIMULATION」に変わり、着地の瞬間を想定したCG動画に切り替えられました。

02:00すぎ 通信確立できず 状況確認続ける

着陸予定時刻を過ぎましたが、着陸船との通信が確立できていないということで、企業が詳しい状況の確認を続けると発表しました。

会見場では午前2時すぎ、「ispace」の代表、袴田武史CEOが「月面着陸の直前まで通信が確立できていたもようだが現在は、通信を確立できていないという状況のようだ。エンジニアが限られた情報をもとに調査を継続している」と説明しました。

02:20ごろ 袴田CEO「今後につなげることが一番重要」

会見場では、26日午前2時20分ごろ「ispace」の代表、袴田武史CEOが取材に応じました。

着陸船との間の通信状況について「着陸直前までは通信が確立していたものの、着陸後と思われるタイミングから通信が確立していない状況で、残念ながら通信がない」と説明しました。

その上で、着陸できたかどうかについては「着陸できなかった可能性はもちろんあるが、まだ解析中で、データをもとにどのようなことが起こったのかエンジニアが検討した上での判断になる」と説明しました。

また袴田CEOは「着陸までのフライトデータがしっかりととれたのは非常に大きな成果だと思っている。今回の成果をフィードバックすることで、今後のミッションに向けて着陸を含めた技術の成熟度を上げることに取りかかれる土台ができたと考えている。今後につなげていくことが一番重要となるため、これからきっちりとやっていきたい」と話し、今回の経験を今後に生かす考えを示しました。

07:00すぎ 袴田CEO「非常に大きな1歩」

月面着陸の予定時刻から5時間余りたった26日午前7時すぎ、NHKの取材に応じた「ispace」の代表、袴田武史CEOは今回の結果について「着陸船を月の高度100キロ前後を回る軌道に投入することができ、月面着陸の付近までしっかりフライトデータを獲得できたということで、非常に大きな1歩になったと考えている」と述べました。

そして着陸船の状態については「降下したあと着陸時点まで通信が確立していたことは分かっているが、着陸後に通信が確立できなくなり、得られたデータの詳細な解析をしている」と説明しました。

今回のケースが事前の想定に含まれていたかについては「運用を検討する中で、さまざまな状況についてシミュレーションしてきた。今回の挑戦だけに限らず、次や、その次の挑戦の機会にフィードバックする仕組みをつくることが重要だ。どのようなシナリオでも、得た教訓を蓄え、次に向かおうとしている」と話していました。

さらに、着陸直前まであと一歩だったかを改めて問われると「詳細について解析を進めていて確かなことは申し上げられない」とした上で「当時の状況を考えると月面の着陸すれすれまでデータが得られたことは、非常にすばらしい成果だったと思う」と繰り返し説明しました。

その上で、これまで国主導で進められてきた月面着陸に民間が挑戦したことについて「われわれは民間の事業として、月の事業、特に輸送サービスを実現したいと考えている。2017年から5年ほどで着陸船の開発を終え、着陸に挑戦した。このスピードを生かし、今回どんな結果になっても、得た知見を来年予定している次の挑戦につなげたい。この継続性を作ることが民間企業として非常に重要だと考えている」と述べました。

08:00すぎ 「着陸の確認は困難」と発表

午前8時すぎに企業は「着陸の確認は困難」と発表しました。

着陸予定の時刻のあと、残りの燃料が無くなったと推定されるほか、降下する速度が急に上がったことを示すデータがあるとして、着陸船は最終的に月面にたたきつけられるように着地した可能性が高いということです。

“高度誤って認識し 燃料つき落下か”

「ispace」が26日午前、会見を開きました。

それによりますと着陸予定の時刻のあと、通信が途絶え、計画していた着陸はできなかったということです。着陸船が姿勢を変えながら着陸地点に近づき、ガスを噴射して減速するところまでは計画どおりに実行できたということです。

しかし、着陸船が月面からの高度を誤って認識したとみられ、残りの燃料がなくなった結果、最終的に月面に落下したと推定されるとしています。

袴田武史CEOは「月面着陸は達成できなかったが、非常に有意義なデータを世界に先駆けて獲得できたと思うので、次のミッションに向けて大きな1歩だと考えている」と話していました。

11:30すぎ 松野官房長官「今回の経験を踏まえ 挑戦継続を期待」

松野官房長官は、記者会見で「当初の計画のすべてを達成できなかったことは残念だ。今回の経験を踏まえ、挑戦を続けてもらうことを期待している。スタートアップ企業による宇宙への挑戦は、宇宙産業の発展を促す好循環を生み出すきっかけとなるもので大変意義深い。引き続き宇宙に挑戦する民間企業を応援していきたい」と述べました。

これまでの経緯

日本のベンチャー企業「ispace」が開発した月着陸船は、2022年12月、アメリカの民間企業「スペースX」のロケットで打ち上げられ、太陽の重力などを利用しながら月に向けて飛行してきました。

打ち上げからおよそ4か月後の4月13日には月の高度およそ100キロを回る軌道に入り、着陸に向けて搭載機器の状態や通信の確認など準備を進めてきました。

月面着陸はこれまで、旧ソビエト(1966年)、アメリカ(1966年)、中国(2013年)の3か国が成功していますが、民間によって成し遂げられたことはありません。

着陸後は、カメラで月面を撮影するほか、搭載しているJAXA=宇宙航空研究開発機構などが開発した小型ロボットが月面を走行しながら探査する計画でした。

月は近年、「水」の存在を示す研究論文が相次いで発表されたことなどからアメリカや中国、ロシアなどが探査計画を打ち出しています。

また、5月以降は、アメリカの複数の企業が着陸船の打ち上げを予定するなど民間でも動きが激化していて、今回の着陸が月を舞台にしたビジネスの布石となるか注目されていました。