9月6日
3時07分 震度7
未明に非常に激しい揺れ

9月6日午前3時7分に起きた北海道胆振(いぶり)地方中東部を震源とするマグニチュード6.7の地震で、北海道で初めてとなる震度7を厚真(あつま)町で観測した。

このほか震度6強を安平(あびら)町とむかわ町、震度6弱を札幌市東区、千歳市、日高町、平取(びらとり)町で観測した。

その後も地震活動が活発な状態が続き、約1か月後の10月5日にも震度5弱の揺れを観測する地震が起きた。

3時25分
ブラックアウト 全道停電

地震で北海道最大の火力発電所で、北海道の需要全体のおよそ半分を賄っていた苫東厚真発電所が緊急停止。電力の需要が供給を大きく上回って、周波数が維持できなくなり、発電や変電の設備が壊れることを防ぐために、ほかのすべての火力発電所や水力発電所も停止せざるをえなくなり、“ブラックアウト”と呼ばれる大規模な停電が起きた。

泊原発 一時外部電源失う

北海道泊村にある泊原発。運転は停止していたが、ブラックアウトで電源が供給されなくなった。非常用のディーゼル発電機が自動的に起動して核燃料の冷却が続けられた。その後、道内の水力発電所が稼働、10時間近くたった午後1時までにすべて復旧した。

広範囲で大規模な土砂崩れ

震度7だった厚真町では、山の至る所で土砂崩れが起き、複数の住宅が倒壊したほか、崩れた土砂が道路や田んぼに流れ込んだ。民間の測量会社が人工衛星の画像を分析したところ、土砂崩れは厚真町やその周辺の直径20キロの範囲内に集中し、およそ3800か所で起きていた。専門家は、「この付近には、厚真町の西にある樽前山などの火山噴出物が厚く積もっていて、それが地震で滑るように崩れたのではないか」と指摘している。

土砂崩れで死者 不明者多数

大規模な土砂崩れが起きた厚真町。まだ辺りが真っ暗な中、大量の土砂が山沿いの住宅を襲った。助かった人からは「山が一気に、崩れてきた」との証言も。この日、3人の死亡が確認されたほか、安否が分からない人が30人以上にも上り、夜を徹しての救助活動が続けられた。

北海道の空の玄関 全便が欠航

北海道の空の玄関、新千歳空港は、地震で滑走路に被害はなかったが、ターミナルビルの天井や壁が剥がれるなどの被害があったため、ビルが全面的に閉鎖となり、全ての便が欠航した。千歳空港のターミナルビルが全面的に閉鎖になったのは、昭和63年の開業以来、初めてだという。空港は、翌日の7日に国内線が、続いて8日には国際線がそれぞれ再開した。

JR北海道 全列車が終日運休

JR北海道は、地震による停電の影響で北海道新幹線や、札幌と道内各地を結ぶ特急列車など、すべての列車が終日運行できなくなった。翌日の7日、停電が復旧し、北海道新幹は運転を再開したが、特急列車を含む在来線は、線路や橋梁などに損傷が見つかったため、一部を除き運転再開の見通しが立たなかった。

大都市・札幌で液状化現象

大都市・札幌の清田区の住宅街では、地震の揺れで地盤が液状化する現象が広範囲で発生。道路が陥没したほか、多くの建物が傾くなど大きな被害が出た。現地を調査した専門家によると、液状化の被害は谷筋を埋めて造成された場所で起きていて、「同様に造られた住宅地は全国各地にあり、液状化は大都市のどこでも起きうる問題だ」と指摘している。

スーパーやコンビニに長い列

停電や断水が続く中、道内各地のスーパーやコンビニ、ホームセンターには大勢の市民が長い列を作り、食品や水、電池やカセットボンベを買い求めた。安平町では唯一営業していたガソリンスタンドに車の行列も。給油を1台10リットルに制限して対応した。

戸惑う外国人観光客

北海道を訪れていた多くの外国人観光客。必要な情報を得られず街角で途方に暮れる姿が見られた。北海道庁は、英語・中国語・韓国語で相談に応じる専用ダイヤルを設けて対応。韓国外務省は足止めされた旅行者向けに新千歳空港に支援デスクを設置した。

9月8日2時00分
停電2日 ほぼ解消 節電要請

北海道電力は、緊急停止した苫東厚真火力発電所以外の火力発電所の再稼働など、復旧作業を進めた結果、地震から1日がたった7日午前3時までに道内の停電のほぼ3分の1が解消、2日後の8日午前2時現在で全体の99%で電力が復旧した。
しかしながら道内の電力の需給状況は厳しい状況が続くとして、週明けの10日から家庭や企業に対して20%を目標に節電を求めた。19日に苫東厚真火力発電所1号機が再稼働したことで電力需給の状況は大きく改善、節電要請は解除された。

1万人超が避難所に

北海道庁によると一時は1万1677人が68市町村の473の避難所に身を寄せ、不安で不自由な生活を強いられた。地震から(3週間)がたっても(638)人が避難生活を続けている。心や体の不調を訴える人も相次ぎ、被災者支援が大きな課題に。

9月10日
死者は5市町で計41人に

震度5強だった苫小牧市で男性1人が死亡していたことが新たに分かった。これで今回の地震で死亡した人は41人になった。このうち大規模な土砂崩れが起きた厚真町で死亡した36人は、警察が調べた結果、60%余りの人が窒息死だった。多くの住民が自宅で寝ている時に、突然、崩れた土砂やがれきの下敷きになったと見られている。厚真町以外の5人は、自宅の階段から転落したり、倒れてきた本の下敷きになったりして死亡した。

9月11日
断層1.2mずれ動いたか

政府の地震調査委員会は今回の地震について、GPSの観測データなどから、ほぼ南北方向に長さ15キロ程度の断層が1.2メートルずれ動いて起きたとする推定をまとめた。断層を境に岩盤が縦方向にずれ動く、「逆断層」と呼ばれるタイプだということ。

9月13日
「スリバー」衝突エリアで…

京都大学防災研究所の西村卓也准教授がGPSの観測データを使って北海道の地盤の動きを分析したところ、地震は陸側のプレートの内部にある「スリバー」と呼ばれる地下の岩盤が衝突し、ひずみがたまり続けているエリアで起きていたことがわかった。

9月14日
特急列車すべて運行再開

地震発生から8日。北海道内のJRは復旧が徐々に進み、札幌と帯広や釧路を結ぶ特急列車が運転を再開。これで、地震の影響による特急列車の運休はすべてなくなった。一方、特急列車の一部は、節電に協力するため一時、本数を減らして運行した。

9月15日
連休初日 ボランティア

大きな被害が出た厚真町には3連休の期間中、大勢のボランティアが集まった。この日は約200人が担当する地区に向かい、地震で壊れた家を直したり家具を運び出したりした。支援を受けた人の中には「大丈夫でしたか」と優しく話しかけられ涙ぐむ人も。

実りの秋 観光に深刻な影響

地震のあと宿泊予約のキャンセルが延べ94万人分にのぼり、飲食や交通などを含む観光業全体への影響は金額にして推計で約292億円に上る(北海道庁調査9月15日時点)。旭山動物園も来園者が伸び悩んだ。風評被害をなくそうと知事が観光客を呼び戻すメッセージを発信した。

9月18日
すべての公立学校で授業再開

北海道では一時1891校の公立学校が休校。この日、胆振地方の厚真町、安平町、むかわ町の小中高校で授業再開、道内のすべての公立学校で授業が再開された。一方、地震で給食センターの設備が壊れ、パンと牛乳、デザートを業者から購入して対応した学校も。

9月19日9時00分
苫東厚真発電所復旧

北海道全域が停電する原因になった苫東厚真火力発電所。1号機、2号機、4号機の全てが運転を停止していたが、地震から13日たった9月16日午前9時に1号機が再稼働。出力が最も大きく、タービンから出火する被害があった4号機は9月25日未明に再稼働した。2号機の再稼働は10月中旬になる見通し

北海道産乳製品 品薄状態に

停電で酪農が止まり各地のスーパーマーケットでは北海道産の乳製品や農産物が品薄状態に。東京 練馬区の店では牛乳の入荷が止まり、ほかの地域から仕入れて補うも確保できたのは発注数の3分の1ほど。1人2本までに購入本数を制限する対応をとった。

「ススキノ」にネオン戻る

節電のため看板のネオンを消していた札幌の繁華街「ススキノ」。火力発電所の再稼働を受けてシンボルとなっているウイスキーやビールメーカーの看板に明かりがともる。街の夜景が戻ったのは約2週間ぶり。

9月20日
苫東厚真発電所の内部を公開

ブラックアウトのきっかけになった苫東厚真火力発電所の内部が公開。タービン内で火災が発生した4号機では、格納する施設の外側に高温の蒸気が噴き出した跡が今も残る。また、1号機のボイラー管は、直径4.5センチの管に7センチほどの亀裂が入り、ここから大量の蒸気が漏れ出して、出力が低下した。

9月28日
「北海道ふっこう割」導入

政府が北海道支援策を決定。観光分野では道内を訪れた観光客を対象に1泊当たり2万円を上限として、日本人旅行者は旅行商品や宿泊代金の50%から70%を3泊まで、外国人旅行者は代金の70%を5泊まで補助。対象10月1日から販売される宿泊プランや旅行商品。

9月29日
北海道と本州の送電線増強へ

経済産業省は道内の電力供給が足りなくなった時に、本州からより多くの電気を送ることができるようにするため、北海道と本州をつなぐ送電線「北本連系線」の増強を検討する方針。北本連系線の容量は現在60万キロワットで、来年3月には90万キロワットに増える予定で、さらに数十万キロワット規模で容量を増やせないか検討することにしている。