災害時、自宅から避難先へ行く際に必要なのが「非常用持ち出し袋」。その中身は、多くの人にとっての必需品もありますが、性別や年齢、家族構成、ふだんの生活スタイルによって、必要なものは、ひとりひとり違います。突然、避難しなければならない状況になった時、あわてて持ち物を用意すると焦ってしまいます。避難生活で、自分や家族には何が必要か。旅行かばんを用意する気分で気軽に楽しく、でも真剣に、非常用持ち出し袋を用意してみましょう。
▽非常用持ち出し袋「必需品」は?
飲料水
避難所でも水分補給ができるように、1ℓ以上の飲料水を入れておくと安心です。衛生面や飲みやすさを考えると、500㎖のペットボトルがおすすめです。
食べ物
避難所の食事は、おにぎりやパンなど炭水化物に偏りがちになります。レトルト食品や缶詰など、タンパク質やビタミンが取れるものがあるとよいです。
携帯トイレ
被災したら仮設トイレがすぐ届くだろうと思っていませんか。東日本大震災で3日以内に仮設トイレが届いた自治体は34%、半分近くの自治体では1週間たっても届きませんでした。最も日数がかかったのは65日後。(名古屋大学などの調査)
食事はなんとか我慢できてもトイレだけは我慢できません。携帯トイレは必須アイテム、数日間分あると安心です。
衛生用品・救急用品
断水が続くと、水を十分に使うことができません。衛生的な環境を保つために、アルコール消毒液、ウエットティッシュ、マスクなどは大事です。また、けがをした時のために、ばんそうこうや包帯もあると安心です。
歯磨きセット
意外と忘れがちなのが「歯磨きグッズ」です。避難所で歯磨きができないと感染症のリスクが高まります。断水で水が使えない場合に備えて「歯磨きシート」も便利です。
ランタン・ヘッドライト
懐中電灯では片手がふさがってしまい、夜にトイレへ行く際や作業をする際に不便な場合があります。両手が空くように、床に置けるランタンやヘッドライトを入れておきましょう。
下着(使い捨て下着・着圧ソックス)
避難所では洗濯した下着が人目に付く場所で干しづらかったり、断水で洗濯ができなかったりする可能性もあります。衛生を保つためにも、使い捨てできる紙の下着やおりものシートがあると便利です。
避難所や車中泊では、体を動かす頻度が減り、エコノミークラス症候群のリスクが高まります。着圧ソックスを履いて、ふくらはぎに圧をかけることで、深部静脈の血流速度が増します。血栓予防には血流を良くすることが重要です。
カイロやレインコートなど季節グッズ
季節に応じて中身を入れ替えることも大切です。冬であればカイロや防寒具、夏は汗をかきやすいのでタオルを多めに。雨に備えてレインコートも入れておくと安心です。
携帯ラジオ
災害の時、頼りになるのがラジオです。停電や通信が途絶えると、テレビやインターネットを見ることができなくなるおそれがあります。
被災した経験がある人の中には、給水所の場所や、病院の状況、営業している食料品店やガソリンスタンドのことなど、生活に欠かせない情報はラジオから得ていたという人が数多くいます。
携帯ラジオには電池式の機種以外に、手回し充電式のものや、太陽光を活用するソーラー充電式のタイプもあります。
▽寒くなってきたら必要なもの
避難に必要なものは季節によっても変わります。冬の場合は、寒さにさらされると『低体温症』のリスクが高まります。低体温症とは、体の中心温度(深部体温)が35度以下に低下した状態を指します。さまざまな身体機能が維持できなくなり、最悪の場合、命を失うことも。そのリスクを防ぐために、寒くなってきたら非常用持ち出し袋に防寒対策グッズを加えておきましょう。

ポイントは『加温』と『保温』!
☑使い捨てカイロ
体を暖めることができる『加温』グッズは用意しておきましょう。
手足の先よりも首の後ろや脇下など血管が集まっている場所をあたためましょう。
低温やけどのおそれがあるため、カイロは直接肌にあてないこと。寝る時には使用しないでください。
☑マスク
感染症対策だけでなく、顔の保温効果もあります。
☑上履き
避難所が体育館の場合、床の温度が0℃近くになることもあります。
☑毛布・冬用寝袋
冬の避難所は寒く、防寒対策が不十分だと、夜は眠れない可能性があります。
寝袋はあたたかい冬用のものを準備しておきましょう。
☑避難時の服装について
帽子や手袋、靴下まで厚手のものを着装し、頭からつま先まで、熱が逃げる場所をなくすように『保温』を心がけましょう。
(取材協力:日本赤十字北海道看護大学 根本昌宏 教授)
▽女性や乳幼児に必要なもの
東日本大震災や熊本地震などの被災地では、「避難所で突然生理が始まったが、生理用品が足りずにもらえなかった」といった問題もありました。女性や乳幼児にとって、特に必要なものもあります。被災したとき、心配事を少しでも減らすために、用意しておくと安心です。
ポイント!女性が備えておきたいグッズ
☑生理用ナプキン
災害によるショックやストレスなどで生理不順になる可能性も。まだ来ないはず、と油断せずに用意しておくと安心です。
☑おりものシート
下着を替えられない状況でも、汚れを防いで清潔に保てます。
☑尿取りパッド
普段と異なる避難生活で、失禁や尿漏れが起こりやすくなることも。
☑化粧水・クレンジングシート
プライベート空間が少ない避難場所では、化粧ができることは大切なこと。クレンジングシートは水が使えない時でも役立ちます。
また、これまで起きた災害では、赤ちゃんがいる親から避難所での授乳や衛生面について、不安の声が多く上がっていました。乳幼児と避難する時のポイントです。

母乳をあげている人もミルクをあげている人も、避難所で安心して授乳が続けられるよう、みんなで協力して環境作りをしましょう。
自治体への事前問い合わせチェック項目
避難所で乳幼児と一緒に過ごせる環境が整っているか、平時から自治体に確認をしておくと安心です。
☑妊産婦・乳幼児向けの避難所があるか
【ポイント】
妊娠中・または赤ちゃんを連れていたらどこに行けばいいのか確認しましょう。
☑避難所に妊産婦・乳幼児専用避難スペースがあるか
【ポイント】
別室があるのか、パーテーションで区切られているのかどうか確認しておくと安心です。
☑妊産婦・乳幼児向けの備蓄品があるか
【ポイント】
水、コンロ、ヤカン、授乳用ケープ、粉ミルク、哺乳瓶、離乳食
衛生用品:おむつ、おしりふき、ウェットティッシュ、着替え
生活用品:簡易トイレ、生理用ナプキン など
在宅避難していても、こうした物資をもらえるのかどうか確認しておくと安心です。
☑避難所に妊娠や出産のことを相談できる人はいるか
【ポイント】
医療専門職が常駐しているか、または何日に1回来るか確認しましょう。
(取材協力:神奈川県立保健福祉大学 吉田穂波 教授)
▽ペットと避難する時に必要なもの
「災害が切迫していても、自宅にペットを置いていけないから避難所には行かない」と考えている人がいるかもしれません。環境省はガイドラインを策定し、人とペットが一緒に避難することを推奨しているほか、ルールを決めてペットの受け入れをする避難所も増えています。
ペットの避難対策は飼い主の命や安全にもかかわります。最寄りの避難所がペットを受け入れてくれるか事前に確認しておき、必要なものを非常用持ち出し袋に入れておきましょう。
詳しくはこちらの記事で👇
▽いざという時、持ち出せるように
重さ
あれもこれも必要と、非常用持ち出し袋への入れすぎは注意です。荷物が重くて、逃げるスピードが遅くなると命にかかわります。避難所まで無理なく持ち運べる重さ、男性は15kg、女性は10kg程度を目安に考えてください。
置き場所
押し入れなどにしまい込まず、寝室や玄関の近くなど確実に持ち出せる場所に置きましょう。
定期的な見直し
非常用持ち出し袋の中身は定期的に点検しましょう。季節によって必要なものを入れ替えたり、水や食料の賞味期限が切れていないかをチェックしたりすることも必要です。
▽キャンペーン動画「日常は、ひょう変する。」
過去に起きた大地震でも、その直前までは何気ない日常がありました。災害は日常の合間に、突然やってくる。自分や大切な家族の命を守るために、いまできることは何か、考えてみてください。
・「柴犬とギター」編
映像提供:柴犬小春Kohachannel
・「野球」編
映像提供:freedom channel ホリロー
・「少女とカレー」編
映像提供:チェリーランドチャンネル Mio&Kaho
・「八百屋」編
映像提供:Pちゃん八百屋の

