風疹の最新ニュース

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クーポン利用依然3割で企業が対策強化 2023年09月06日

子どものころ風疹のワクチン接種を受ける機会のなかった中高年の男性を対象に無料で抗体検査や予防接種が受けられるクーポン。新型コロナの感染拡大の影響で利用が伸び悩み、ことし5月までの利用率はおよそ3割にとどまっていることが国のまとめでわかりました。

こうした状況の中、大手商社では、職場で抗体検査が受けられる取り組みを行い、風疹対策への協力を呼びかけました。

利用率はいまだ約29%

風疹は、妊娠中の女性が感染すると、生まれてくる赤ちゃんの目や耳、心臓などに障害が起きるおそれがあります。国は流行を防ぐため、子供のころワクチン接種の機会のなかった現在44歳から61歳までの男性を対象に抗体検査とワクチン接種が受けられる無料のクーポン券を配付しています。
当初2021年度末までの3年間の取り組みとして始まった事業ですが、新型コロナの感染拡大でさらに3年延長されました。しかしその利用は進んでおらず、国のまとめによりますと、ことし5月までの使用率は全国で29.2%にとどまっていることがわかりました。

企業上げての取り組み

クーポン券の有効期限が迫る中、どうしたら利用を進めることができるのか。
大手商社の伊藤忠商事では、対象世代の男性に呼びかけてクーポン券を活用した抗体検査を実施しました。

7月から8月にかけて、医療機関に出向かなくても受診できるよう職場に検査会場を設け、クーポン券を使って抗体検査を受けられるようにしました。

呼びかけの結果、東京と大阪の本社で社員などあわせて296人が希望したということで、会場には次々に男性が訪れて産業医の問診のあと、血液検査を受けていました。

新型コロナの経験が生きた

今回、スムーズに職場での抗体検査を実施できた一因は新型コロナの感染拡大の中で実施した職域接種でした。予約の流れなどその際のノウハウを今回の検査にも応用することができたといいます。

受診した50代の社員は「自分が風疹の抗体検査の対象になっているとまったく知らなかったので会社から周知してもらっていいきっかけになりました」と話していました。

また別の社員は「クーポン券は保管してあり、いつかは検査を受けようと思っていましたが、面倒でそのままになっていました。職場だと簡単に受けられます」と話していました。

伊藤忠商事 人事・総務部の島村優大さんは、「会社として社会的課題の解決と社員が働きやすい環境整備を目指し実施しました。対象の特定世代の方の中には認識のない人もいましたが、会社としてプッシュ型で呼び掛けることで多くの人に受けてもらえました」と話していました。

“今がチャンス”

この取り組みについて、自身が妊娠初期に風疹にかかり、先天性風疹症候群と診断された娘を亡くした経験から、予防啓発活動を続けている岐阜市の可児佳代さんは「10年前に風疹が大流行した際には、職場の1つのフロアで次々と社員が風疹にかかり、その中で妊婦さんが働いていて風疹にかかってしまったケースもありました。職場での取り組みは本当に効果的なので、ぜひより一層ワクチン接種が大事だということを知ってほしいです」と話していました。

また可児さんたちの活動に共感し、風疹予防の啓発イベントに参加したイラストエッセイストの犬山紙子さんは、「安心して働ける職場であるということはすごく大事なことだと思いますので、続く企業が出てきてほしいです。企業にもコロナで職域接種の経験があるので、まさに今がチャンスなのではないでしょうか。ぜひ職場の健康診断も活用して抗体検査からワクチン接種まで広がってほしい」と話していました。

今後は

取り組みを行った伊藤忠商事では検査を受けた社員のうちおよそ10%が抗体が不十分だったということです。会社側では今後、医療機関を紹介し、ワクチン接種を検討するよう案内を行うということです。

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