風疹の最新ニュース

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風疹ワクチン 男性への無料の抗体検査や接種 延長へ 厚労省 2021年12月27日

妊娠中に感染すると生まれてくる子に障害が出るおそれがある風疹。その流行を防ぐため、厚生労働省は今年度中に190万人の男性にワクチン接種を終える計画ですが、コロナ禍で接種率が4割に届いていないことが分かりました。厚生労働省は無料で接種できる期間を2024年度まで延長する方針です。

厚生労働省は、風疹ワクチンの定期接種を受けていない1962年4月2日から1979年4月1日までに生まれた、およそ1500万人の男性に対し、おととし6月以降、抗体検査を無料で受けてもらえるようにしたうえで、抗体がない人にはワクチン接種も無料で行っています。

計画では、今年度中に190万人の男性に接種を終える目標でしたが、コロナ禍で受診控えや健康診断の延期が相次ぎ、接種を受けた人は、ことし10月末までに74万人余りと39%にとどまっています。

このため、厚生労働省は無料で抗体検査や接種を受けられる期間を2024年度まで、3年間延長することを決めました。

新たな対策として、抗体検査を受けていない対象者には検査を無料で受けられるクーポンを毎年、全員に郵送するということです。

また、新型コロナウイルスワクチンの接種会場でも、風疹の抗体検査やワクチン接種を呼びかけることにしています。

妊娠初期に風疹にかかり娘を亡くした母親は

岐阜市の可児佳代さんは39年前、妊娠初期に風疹にかかりました。

風疹は、妊娠20週ぐらいまでの女性が感染すると、生まれてくる赤ちゃんが目や耳、心臓などに障害が出る「先天性風疹症候群」になるおそれがあります。

可児さんは、周りの人から中絶を勧められましたが、覚悟を決めて娘の妙子さんを出産しました。

妙子さんは耳や目、心臓に重い障害があり、高校卒業を目前に控えた18歳の時、心臓の病気が悪化して亡くなりました。

日本では、その後も風疹が繰り返し流行し、2012年から13年にかけての大流行では、45人の赤ちゃんが先天性風疹症候群と診断されました。

可児さんは2013年、風疹で障害を負った子どもの親たちで作る会を立ち上げ、ワクチンによる予防を訴え続けてきました。

この10年、流行の中心となっている男性を対象にしたクーポンの利用が進まない現状について、可児さんは「風疹さえ、はやらなければ、ワクチンさえ打っていたら、妙子の可能性はいっぱい広がったと思う。コロナで集団免疫が重要だと言われているが、風疹も集団免疫さえあれば未来の命を守り、女性が安心して妊娠出産できる。皆さんの力で風疹を終わらせてほしい」と話しています。

対象者に改めて通知し呼びかけ

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で受診控えが起こり、風疹の抗体検査やワクチン接種を無料で受けられるクーポンの利用が進まないなか、秋田県横手市では改めて対象者に通知を出して呼びかけています。

この通知を受けて、横手市のクリニックには、クーポンを利用しておよそ2か月間に19人の男性が抗体検査を受けに来たということです。

抗体検査は血液を調べて5日ほどで結果が分かるということで、抗体が不十分だと確認されるとワクチンを無料で接種することができます。

今月15日、クリニックには検査で抗体が不十分だと分かった53歳の男性が医師から説明を受けたあと、ワクチンの接種を受けていました。

ワクチンを打った男性は「通知が届くまで、風疹のクーポンのことはすっかり忘れていました。仕事柄不特定多数の人と会うので、周りにうつしてはいけないと思い、接種できてよかったです。もっと早く受けられればよかったが、新型コロナのこともあり、この時期になってしまいました」と話していました。

針生皮膚科内科医院の福嶋孝子副院長は「クーポン対象者の抗体検査数が少ないのは『風疹にかかっても自分は大丈夫』と考える人が多いからだと思う。厚労省もクーポン利用を3年間延長を決めたので、先延ばしせず抗体検査を受け、ワクチンを受けていただきたい」と話しています。

専門家 “日本から風疹をなくす最後のチャンス”

3年前までWHO=世界保健機関の医務官で、ワクチン行政に詳しい秋田赤十字病院の遠田耕平医師は「世界で見ると、アメリカ、ヨーロッパは風疹の流行をワクチンによって封じ込めることができた。日本ではこれまでに感染した妊婦が赤ちゃんを諦めたり、生まれた赤ちゃんが先天性風疹症候群と診断されたり、悲しい過去が繰り返されている。今こそ対象の男性にはしっかりワクチンを受けてほしい」と話しています。

また、国の無料クーポンの事業の延長が決まったことに対して、「日本から風疹をなくすための最後のチャンスだと思う。先天性風疹症候群で悲しむ患者や家族を、これ以上、出してはいけない」と話しています。