風疹の最新ニュース

風疹の最新ニュース

風疹予防接種 広がらない助成 2013年05月22日

風疹の感染拡大に、依然、歯止めがかかりません。流行を抑える鍵は予防接種で、大人が接種を受ける場合、費用は自己負担となっていますが、助成を行っているのは全国の市区町村の14%にとどまっていることがNHKの取材でわかりました。

 

 

【再び増加 全都道府県で発生】
国立感染症研究所によりますと、全国で風疹と診断された患者は5月12日までの1週間で587人で、前の週、大型連休の影響でいったん減少した報告が再び増加に転じ、感染の拡大に、依然、歯止めがかかっていないことが分かりました。

 

 

患者の数を都道府県別に見ると、▼大阪府の増加が際だっていて、186人と最も多く、▼次いで東京都が113人など関西と首都圏を中心に全国に広がっています。
また、高知県からも新たに患者の報告があり、これでことしに入ってすべての都道府県で風疹が発生したことになります。

 

ことしに入ってからの患者数は、あわせて6725人で、去年の同じ時期の36倍に達しています。ことし風疹と診断された患者のおよそ90%は成人で、男性では20代から40代、女性では20代が多くなっています。

 

 

国立感染症研究所の多屋馨子(たや・けいこ)室長は「風疹ウイルスの潜伏期間は、2週間から3週間なので、連休中の人混みなどで感染した人が発症するのは、これからになる。発疹など症状が出たら、しっかり休み、人が集まる所に行かないよう心がけてほしい。また、予防にはワクチンしかないので、多くの人にワクチンを接種してもらいたい」と話しています。

 

【予防接種に助成の自治体 14%】
風疹の流行は20代から40代の人を中心に広がっていますが、大人が予防接種を受ける場合、1万円前後の費用は自己負担になります。このため、妊娠を希望する女性や妊婦の夫などを対象に、自治体が独自に接種費用を助成し、接種を促そうという動きが出ています。

 

 

NHKが5月20日までに47都道府県を取材したところ、すでに助成を行っているか、助成を予定している市区町村は、21都道府県のあわせて247市区町村で、全国の市区町村のおよそ14%にとどまっていました。

 

また、助成を後押しするため、東京、千葉、神奈川、新潟、愛知、大阪の6都府県は市区町村への財政支援を行ったり、支援を決めたりしていますが、こうした都道府県の財政支援がなく、単独で助成している市区町村は83で、全国の市区町村の、およそ5%にとどまり、財政支援がない中では、助成の動きが特に鈍いことが分かりました。

 

【助成しないワケは】
助成を行っていない自治体の1つ、人口およそ154万人の神戸市です。

 

 

風疹患者が急増する中で、助成に踏み切れない理由の1つが、多額の経費です。例えば、妊娠を希望する女性と妊婦の夫を対象に、接種費用を全額助成すると仮定した場合、推定される対象者は2万6000人となり、必要な予算は2億3000万円余りにのぼります。

 

 

また、風疹が流行している周辺の自治体の住民が通勤や通学で神戸市との間を行き来しているため、神戸市単独で費用を助成して接種を促しても効果的でないと考えています。

 

 

神戸市予防衛生課の篠原秀明課長は「市内の人だけ予防接種すれば、風疹を予防できるというものでもない。現状のように、かなり広域で流行し、1つの自治体の枠の中に収まっていない状況であれば、広域的な対策が必要だ。国もしくは兵庫県が財政支援を行い、旗を振ってもらえれば、助成を前向きに考えたい」と話しています。

 

【国に対策を求める声も】
助成に踏み切れない自治体が多い中で、都道府県からは国に対し、風疹のワクチンの接種率が低い世代などへの対策を求める声が相次いで上がっています。東京、大阪、神奈川、群馬、岐阜、京都、滋賀、奈良、和歌山、兵庫のあわせて10都府県では、国に緊急要望書や提案書を提出しました。

 

このうち神奈川県は、自治体が行う助成などを財政支援することや、子どもの頃に無料で予防接種を受ける機会のなかった世代の男性や、接種率の低い世代の女性に対策を講じることなどを求める要望書を、4月26日付けで、黒岩祐治知事から田村厚生労働大臣に提出しました。
このほか、埼玉県が近く要望書を出す予定で、九州・沖縄の8つの県も合同で要望することを検討しているということです。

 

【厚労省は慎重な姿勢】
これに対し、田村厚生労働大臣は21日の閣議後の会見で、風疹の予防接種に対する国の補助について、現時点では難しいという考えを示しました。
会見での発言は以下のとおりです。

 

 

(記者)地方自治体から助成への支援を求める声が上がっているが、どのように取り組んでいくのか。

 

(大臣)啓発のための資料を作っていただいたりはしているんですけど、あるいは土日、夕方に地域の医師会などとご議論いただいて、予防接種していただくような形でお願いもしておりまして、サラリーマンの方々がなるべく接種しやすい環境を作るように努力はしております。

 

財源のほうなんですけど、なかなか財源という問題を考えますと、今までも、おたふくかぜ、水ぼうそう、こういうものに対してもまだ予算措置をできていない状況です。風疹も大変な問題で、患者が6000人を超えてくる中で、昨年と比べれば多くの方々がということなんですが、そもそも、おたふくかぜとか、水ぼうそうは年間10名とか亡くなられていたりするわけです。感染者も100万人くらいあったりするわけなんで、資料を見ますと、おたふくかぜは年間40万人、水ぼうそうは100万人ということでございます。

 

また、死者に関しましても、おたふくかぜは推定ですが、5人から10人、水ぼうそうは年間20人くらいと。非常に重篤な障害が残るお子さんもいるわけで、どちらかというと、お子さんが対象となる感染症でございます。もちろん風疹によって母胎に感染して、お子さんに障害が残るという問題は大きな問題なんですけど、このような感染症と比べても、そちらの方も大変な状況で、風疹の予防接種を全員という話になれば、当然、対象者全員分、4700万人という話もありますから、4700億円くらい、4800億円ですか、かかるわけですね。

 

一方で出産の対象の方々だけでも200億円くらいかかるという話がありますから、それを思うと、他の感染症との関係もありますし、財政的に余裕ができたとしても他の感染症とのバランスを考えるかという問題もありますし、なかなか、風疹は確かにことしは増えているという認識はしているんですが、そもそも他の感染症は毎年の話でありますから、そこらへんとの兼ね合いというのも慎重に考えないといけないということでありまして、財源が確保できていない中でなかなか、風疹だけというのが難しいというのはご理解いただく中において、そうは言っても十分に啓発はしていかなければいけないというのは思っておりますので、危険性の問題、ワクチン接種の問題、ワクチン接種の場合は十分にその効果と副反応ということもございますので、一定の確率で反応は出ます。といういうことも含めて十分にご理解いただく中で自主的に接種をしていただきたいという風に思っております。

 

 

(記者)5月16日に先天性の症候群で子どもを亡くした方が自民党の野田総務会長に申し入れに来て、その後、野田さんが大臣にお話したときに「思いに応えられるようにしたい」という紹介がありまして、今もいろいろ方策はお話されましたが、「思いに」というのはどういうことを指しているのか?

 

(大臣)1つはまず皆さんに分かっていただかないと、予防接種をすれば一定の確率で風疹になることを防げるわけですよね。まずそういうことを皆さんにご理解いただかないことには、仮に女性も100%皆さん、受けているというわけではないわけですよね。

 

まず子どもを生む予定のご家族、に関してはお子さんに風疹という病気で障害が残るとか命を落とされる可能性もあるわけですから、そういうことをご理解いただく中で、予防接種を受けていただきたいということを分かっていただくことが一番大事なことなので、そこが分からないと前に進んでいかないので。ただ、何度も申しますけども、予防接種というのは一定の確率で副作用というもの、反応があるということはご理解いただく中において自主的にお選びいただく、選択いただきたい。

 

 

【取材後記】
このニュースを放送した後も、新たに和歌山県が市町村への財政支援を表明し、岐阜県や秋田県でも知事が会見で「検討中である」ことを明らかにしています。また、群馬や埼玉のように、県の財政支援がなくても、半数前後の市町村が助成を決めるなど、一部の地域では助成の動きに広がりが見られています。

 

国、県、市町村が少しずつ負担し合うような形で、全国で地域差なく、予防接種を進める方法はないのか。さまざまな可能性を模索して欲しいと思います。