日本代表との共通点も多い “モロッコ”

モロッコは世界ランキング22位。日本の24位と順位はほぼ変わらないだけでなく、意外な共通点もあります。
アフリカ予選でモロッコを率いたのは、かつて日本代表の指揮をとったハリルホジッチ氏でした。

ただ、予選突破を決めたあとの、ことし8月になって解任され、新たにワリード・レグラギ監督のもとで今大会に臨んでいて、前回のロシア大会直前にハリルホジッチ氏を解任した日本代表とよく似た経緯をたどったチームです。

今大会の1次リーグでドイツと、スペインという強豪を相次いで破り、世界を驚かせた日本。同じ1次リーグで、世界を驚かせる活躍を見せたもう1つのチームがモロッコでした。
グループFの初戦で前回大会準優勝のクロアチアと0対0で引き分けると、第2戦では世界2位のベルギーを2対0で破る金星を挙げました。
そして、第3戦でもカナダを2対1で破り、グループ首位で36年ぶりに決勝トーナメントに進出し、ベルギーを1次リーグ敗退に追い込んだのです。
強力なサイド攻撃

チームの攻撃をけん引するのがイングランドプレミアリーグの強豪、チェルシーでプレーするハキム・ジエシュ選手です。
左利きのミッドフィルダーで主に右サイドとしてプレーするジエシュ選手は、正確なキックと独特のアイデアで攻撃を組み立てます。

そして、ジエシュ選手と右サイドでコンビを組むのがディフェンダーのアシュラフ・ハキミ選手。ブラジルのネイマール選手や、フランスのキリアン・エムバペ選手などと同じフランス1部リーグのパリサンジェルマンでプレーする24歳は、世界屈指のサイドバックです。
1次リーグのカナダ戦でも右サイドからのクロスボールで味方の2点目をアシストするなど、攻守でチームの鍵を握っています。
強豪 スペインとの戦い

日本と同じグループの2位だったスペインと対戦した決勝トーナメントの1回戦。満員の観客で埋め尽くされたスタジアムの多くがモロッコサポーターで、大歓声が選手たちを後押ししました。
スペインの選手がボールを持つとすぐに、大ブーイングが起こり、さながらモロッコのホームゲームのようでした。

試合は技術で上回るスペインが終始ボールを支配します。ボール保持率はスペインの63%に対し、モロッコが21%と圧倒されますが、決定的な場面はつくらせず全員が自陣で守りを固め、隙があればカウンターで攻め上がるという展開が続きました。
したたかにPK戦に
両チーム決め手のないまま延長戦も含めた120分を戦い抜いて、迎えたペナルティーキック戦。

ゴールキーパーのヤシヌ・ブヌ選手がスペインの前に立ちはだかりました。スペインのシュートを3人連続で防ぎ、会場から大歓声を浴びました。

モロッコが2人決めて、迎えた4人目のキッカーはハキミ選手。

決めれば勝ちが決まるこの舞台で、ハキミ選手はゴールの真ん中に、ゴールキーパーのタイミングを外す緩いシュートを決めました。
世界トップレベルのクラブでプレーするハキミ選手が見せた、この大舞台での落ち着きで、モロッコは史上初のベスト8進出を果たしました。

ポルトガル戦も守り勝つ

さらに準々決勝では前半42分に左サイドからのクロスボールにフォワードのユーセフ・エン ネシリ選手が頭で合わせて先制。

後半にはポルトガルがエース、クリスチアーノ・ロナウド選手を投入し攻め込まれる時間が長くなりましたが、ゴールキーパーのヤシヌ・ブヌ選手を中心に粘り強く堅い守りで得点を許さずに競り勝って、アフリカ勢初のベスト4進出を果たしました。

日本代表の鎌田大地選手は、クロアチア戦のあと「この4年間で自分が目指しているところでプレーできるようにして、次の大会に臨めば自分はもっと大きくなり、より日本代表の力になれると思うので、この4年間はよりよいクラブでしっかり出続けるようにやっていきたい」と語りました。
日本が壁を越えるためには、クラブチームでふだんから高いレベルでプレーし、その経験を積み重ねていくことが大切だという指摘でした。

アラブの星となるか
開催国のカタールと同じ、アラブ諸国のチームとして唯一、ベスト8に勝ち進んだモロッコ。ホームのような大声援を受けて、アフリカ勢初のベスト4進出も果たし準決勝では前回大会優勝のフランスと対戦します。

開催国が史上初めての3連敗で敗退した中東初のワールドカップは、モロッコの躍進によって再び熱を帯びています。
