開幕前に話していたことは
吉田選手はワールドカップカタール大会の開幕を前に、こう話していました。
「キャプテンを任されて4年間、日本のサッカーがどうやったら良くなるかを考えてやってきた。プロなので結果がすべて。結果が出てこそ、それまでのプロセスが評価される。結果で答えを導き出したい」
前回のロシア大会のあと、長谷部誠選手からキャプテンマークを受け継いだ吉田選手。この4年間、常にチームのことを考え、ときには厳しいことばもかけながら引っ張ってきました。
“すべてを出し切って戦う準備を”
たとえば、ことし6月、ワールドカップを見据えた強化試合4連戦に臨んだときのこと。第2戦の世界ランキング1位、ブラジルとの試合が本大会を戦う上での試金石になると注目が集まっていましたが、吉田選手は初戦のパラグアイ戦に向けた前日練習でチームの雰囲気に違和感を感じていました。練習でミスが多いと感じた吉田選手はミーティングの中でほかの選手たちにこう語りかけました。
「代表の試合に1試合も調整なんてない。自分のすべてを出し切って日本のためにしっかり戦う準備をしないといけない」
よりプレッシャーのかかるワールドカップでは1つのプレーで流れが変わり、ひとたび相手に手渡してしまえば引き戻すことは非常に難しいと伝えたかったと言います。
「次のブラジル戦に向けていい感じの調整をしようみたいな雰囲気がなんとなく漂っていた。本番ではそういう緩さや隙が取り返しのつかない後悔につながってしまうと伝えたかった」
“グッドルーザーよりウイナーに”
前回のロシア大会、史上初のベスト8をかけたベルギー戦。後半20分すぎまで2点をリードしながら逆転負けを喫し、ベスト8進出はなりませんでした。吉田選手はセンターバックとして奮闘しましたが大舞台で一度傾いた流れを奪い返すことの難しさを痛感していました。
「日本ではグッドルーザーってすごく美化されているじゃないですか。4年前の僕たちはまさにそうで日本に帰ってきてみんなに褒められたけれど、グッドルーザーはもういいでしょう。グッドルーザーよりウイナーになりたい」
所属クラブでも存在感高める
今シーズンからドイツ1部リーグのシャルケでプレーする吉田選手。
「僕はみんなに向かってしゃべる立場なので、実力が伴ってないとことばに重みが増さない。ベースとなるピッチでのパフォーマンスをもう一回上げる」と新加入ながら開幕戦でキャプテンを務めるなど所属クラブでも存在感を高め、自身3回目となるワールドカップに臨みました。
そして今大会も1次リーグの3試合は守備の要、センターバックとしてフル出場。豊富な経験を生かして守備陣を統率し、優勝経験のあるドイツとスペインを破って決勝トーナメントに進出する快進撃に大きく貢献しました。
“結果が出なくて悔しい”
そして5日、史上初のベスト8進出をかけたクロアチア戦は「4年間、ずっとこの日を待ちわびていた」と言います。
センターバックで出場し「日本の新しい歴史を作り、新しい景色を見たい」とキャプテンとしてことばとプレーでチームを引っ張りましたが、またもあと一歩のところでベスト8に届きませんでした。
吉田選手はクロアチア戦を終えて「ロシア大会でベルギーに負けたあと、そこから毎試合、どうやったらベスト16の壁を破れるのかを考えて取り組んできた。正直つらいことのほうが多かったけど、それでもこのベスト16の壁を破るための布石だと自分に言い聞かせてやって来た。結果が出なくて悔しい」とことばを詰まらせながら振り返りました。
そのうえで「個人的にはこのベスト16までは運があればいける可能性はあると思っているが、ベスト8に上がるのは本当に強いチームでなければいけないと思う。もっともっと、確実にそこを積み上げていくしかない」と日本代表の今後の課題も口にしました。