
選手たちが「当日はショックだった」とか「どんよりした空気があった」と振り返るように、初戦で優勝経験4回のドイツから勝利を挙げたあとだっただけにチームには動揺があったと言います。
さらに、SNSには特定の選手のプレーが失点につながるミスだったのではないかと責める投稿も見られました。
こうした中、チームの空気を変えたのはコスタリカ戦のあとに開かれたミーティングだったと言います。

キャプテンの吉田麻也選手は「コスタリカ戦のあとは僕も含めてチームとしても個人の選手としても、もう1回、立ち上がらないといけなかった。その中で、いちばんそれを話してもらうのに最適なのは川島選手だと思ったので少し話をしてもらった」と明かしました。

チーム最年長、39歳のゴールキーパー、川島永嗣選手は2010年の南アフリカ大会から4大会連続でワールドカップを経験しています。
今大会の出場機会はありませんでしたが、精神的な柱の1人としてキャプテンの吉田選手を支えてきました。

その川島選手はミーティングの中で「まだ終わったわけではないし、自分たちがスペインに勝てば予選を突破できる。外野の声はもちろんあるが、それは気にすることはない。いちばん大切なのは自分たちがやってきたことを信じることだ。切り替えていこう」などと話したということです。
このメッセージを受け取った選手たちは…
「チームが1つになれた瞬間だった」
「永嗣さんが熱いことばをかけてくれて、さらにチーム力が上がったと感じる」

吉田選手も「ミスをした選手だったり試合に出ていた選手はもちろんそうだが、入れてない選手も『いや、もう1回、やらないといけない』という気持ちになったことがすごくチームとして強固なものになったと思う。人は簡単に『経験』と言うけれど、経験がどれだけ大事かというのを改めて感じさせてくれる瞬間だった」と振り返りました。
このエピソードを話してくれたキャプテンの目は少しうるんでいるようにも見えました。
川島選手の呼びかけもあってチームは結束力を強め、1次リーグ第3戦で強豪のスペインを相手に逆転勝ちを収め、グループ1位で決勝トーナメント進出を決めました。

川島選手は「コスタリカ戦で負けても、ひとりも疑っている選手はいなかったし、自分たちならできるという気持ちだった。試合に出ていない選手も悔しい思いをしながら、そういう立場にいると思うが、途中から出た選手も結果を残している。それが今のチームの強さだと思う」と話し、選手たちは初のベスト8を目指し、クロアチア戦に臨んでいました。

そして、そのクロアチア戦は1対1のまま延長でも決着がつかず、ペナルティーキック戦にもつれ込み、チームが競り負けたようすをベンチから見ていました。

(写真:2010年 南アフリカ大会)
みずからも2010年の南アフリカ大会でゴールキーパーとして出場し同じようにペナルティーキック戦で敗れてベスト8に届かなかった川島選手。
試合後はメンバーとともに悔しさをかみしめ、それでも日本代表に前進があったことを強調してスタジアムをあとにしました。

「正直こういう形で、このチームでこの試合が最後になるというのは悔しい気持ちしかない。ただ、このチームをずっと見続けてきた中で、日本代表というチームに対する、これからの期待感というのも同時にいま感じている」