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“世界に衝撃を与えた勝利”西野前監督どう見た【QAで詳しく】

サッカー、ワールドカップカタール大会の1次リーグで日本が優勝経験のあるドイツとスペインを破って決勝トーナメントに進んだことについて、前の代表監督、西野朗さんに聞きました。【QAで詳しく】

目次

    Q.スペイン戦の勝利を見て感想は?

    A.このワールドカップで本当にいちばんインパクトを与えたのが日本チームだと思います。世界にも衝撃を与えたと思いますね。

    初戦のドイツに逆転勝ちをしたというところでも、インパクトありましたけれども、勝負のかかったスペイン戦でまた同じような結果をもたらした。これは日本サッカー界の成長を強く感じます。

    Q.勝因は?

    A.戦略的に初戦のドイツで戦った成功体験もあり、おそらくああいう形で試合は進むのではないかということは、日本チームも想定していたと思うんですね。ある程度ボールは支配されることは。

    ただ、日本チームの強みというか、いろいろシステムをチェンジしたり、今回、起用が5人交代枠があってそれを有効に使ったりという、戦略的な勝負でスペインチームに勝ちました。ボールは相手にコントロールされたけれども、ゲームは日本チームがコントロールしたという、まさに戦略的な勝利だったと思います。

    Q.相手のキーマンを抑えたのも大きかった?

    A.そうですね。組み立てに特徴があるスペインは、中盤の若いガビ、ペドリあたりがうまく連携しながらコントロールしていました。

    ただ、パスの出どころはやはりブスケツになります。そこを前田がかなりプレスバックになりますけど、プレッシャーをかけたり、圧力をかけて自由にしませんでした。彼が何回も転ぶシーンがありましたよね。

    そういうシーンを見ても、やっぱり彼を、構成力のあるスペインチームのそのベースをつぶしていこうというねらいでした。そこは見事に圧力をかけて、機能をスムーズにさせなかった、戦術的に前線から中盤もコンパクトにしながら、プレスをかけられたというところだと思います。

    Q.ハイプレスは試合で効果的だった?

    A.本来のハイプレスというのは、前田からセカンドラインが、相手の最終ラインに対して前向きにプレスをかけていく、そこに、中盤、最終ラインがプッシュアップしながら、連動していくという、そういうハイプレスで敵のエリアで、できるだけボールを奪って、そこからいい形で攻撃に入るというものです。

    ショートカウンターをねらっていくという、そういう形がハイプレスだったんですけど、やはり初戦のドイツも、なかなかそこがドイツのポジショニングもよく機能しませんでした。

    スペインもセンターバックが、非常に、構成力のあるセンターバックで、なかなか前田、鎌田、久保あたりが前向きにいい形でプレッシングに入れない状況の中、じゃあどこにねらいどころに、ターゲットにして、スイッチを入れていこうかというところは、ブスケツ、ボランチ、アンカーのポジションに対するプレスというところをねらいとして入っていったと思うんです。

    そこが有効に機能して、スペインは、ボールは動いているようでやはり厳しいところにボールが入らなかった。それも日本チームのディフェンスのスイッチを入れるターゲットとしてるところをしっかりねらいを持ってやれた成果だと思います。

    Q.ブスケツ選手に対するプレッシャーは?

    A.スペインの特徴はやっぱりブスケツから出る1本のパスによって、いい起点を作られてしまうこと。それが一番脅威となるところなので、まずは出どころを、ボールを動かされても、展開されても横パスだとかバックパスだとかっていうところを、そういう形で持っていかせようという、それもねらいとして持っていました。

    なかなか前線の選手がスムーズに動き出しできなかったりとか、両ワイドの選手に有効に入らなかったりとか、まず攻撃の起点を潰していくというところをねらいとしていたんだと思います。

    ハイプレスというよりは、ブスケツに対するプレッシャー。それが重要なディフェンスとしてのポイントだったと思います。

    Q.同点や2点目のゴールは?

    A.1点目も2点目もそうなんですけど、あの時間帯はスペインは、おそらく前半のあのイメージで、自分たちがボールを保持して、まあスローではあっても、ボールをコントロールできるという感覚だったと思うんですが、日本はそこを見逃さないで、後半から入った堂安あたりが躍動して、前線からかなりリズムチェンジしながらというところで、インテンシティ高く入ってきました。日本本来のやっぱりハイプレス的なところがまず出て、それが得点に繋がっていきました。

    2点目も、電光石火ですよね。もうその勢いのままというかハイプレスのまま、みんながハードワークしながら、1人2人の前線の選手での得点ではなくて、やはりコレクティブに何人も、ペナルティーエリアに入っていきました。

    最終的に得点しているのは、ボランチの田中ですからね。それだけやはりスペインが少しスローダウンしている瞬間をつけた中で、あれは本当に戦術を変えた、起用も変えた、もうすべて変化したことに、スペインが対応できない時間帯だったと思いますね。

    Q.試合のキーマンを挙げるとしたら?

    A.バックアップの選手全員だと思います。初戦もそうなんですけど、システムを変えて、チームの対応力というものを出せたゲーム。それに応える選手たち。戦術的戦略的に変化させて、相手に対して挑んでいきました。

    多少のリスクはあってもそれに挑んでいく中で、これはプランとしては、監督以下コーチングスタッフもそうなんですけど、いろんなプランニングがある、戦略の変化もある、ただそれに応えるバックアップの選手たち、彼らがやはりいい準備をして、その戦略の変化に対応して、パフォーマンスを出していくという、そのチームの流れに対応できてプレーしていました。

    誰というか、もうバックアップの選手が連動して、その中で自分のやっぱり強みですね。らしさを出している、その中で流れががらっと、こう変わっています。彼らにとっては早く出たいという、そういう中で、起用に応えて、自分のトップパフォーマンスをそこで発揮していました。

    初戦もそうですけども、スペイン戦もやっぱりそういう選手たちが日本の強みをより引き出しています。そういう総合力、総力戦ということ、監督はおっしゃっていますけど、それを実行している、体現してる選手たち、本当に全員が力を発揮しているゲームだったと思いますね。

    Q.守備については?

    A.これも、戦力的に考えていたことが冨安を起用できたり、遠藤を投入できて、盤石だったと思います。

    パワープレーをしてきるチームではないので、地上戦でやはりどれだけ連続して全員がボールに対して反応していくか、そういう中で、多少ゴール前にディフェンスラインが落とされた状況でしたけども、全体の距離感が非常に短くて連続してアプローチして、スペインのショートパスの構成力によく対応していたと思いますし、1対1の局面でもああいう形で対応できていましたし、プランとしては後半の頭に、やはり攻撃的な選手でメッセージを送り、『勝たなきゃいけない』というメッセージ、『得点しにいくんだ』というメッセージで逆転をし、そしてディフェンス冨安、遠藤を投入して、戦略的にも本当に盤石だったと思いますし、理想のプラン通り、想定していた最高の戦略がはまった内容だったと思います。

    Q.後半に巻き返す森保監督の手腕は?

    A.そうですね。監督からすれば善戦をしてですね、何か手応えがある内容で前半を終わって、そういう中で0対1であれば、そう動けないとは思うんですね。

    まだやれる、劣勢であってビハインドではあるんだけれども、十分手応えを感じる、このメンバーでもう少し後半も入れるんじゃないかというような状況を持ってしまうと思うんですが、ドイツ戦もスペイン戦も、一方的、70%80%ボールをコントロールされて、しかも、0対1っていう中で、そういう内容がはっきりしてるんで、これはもうシステムチェンジしたり、メンバーを変えたりしやすいハーフタイムを迎えていると思うんですね。

    これは多少のリスク、初戦で言えばシステムをガラッと変える中で、変化させるという持っていき方もできましたし、スペイン戦もそうなんですが、一方的にやはりああいう展開で劣勢に立たされました。

    もう極端に変化しないかぎり、ゲームを支配するということは難しいとの判断だと思うんです。戦前いろいろプランしている中のはっきりとした変化に対してのチームとしてのメッセージというのを送りやすい状況だったと思うので、それがすべてだと思うんですが、それにしっかり対応してるバックアップの選手たち。変えやすいゲーム内容であることは、間違いないと思います。

    Q.ドイツとスペイン 強豪に逆転勝ちした意味は?

    A.ベスト8に入るということが日本サッカー界の悲願でもありますし、違ったまた景色を見ようという大きな目標がある中、迎えたわけですけども、今、現時点でも、ドイツ、スペインにこの厳しいグループの中で首位でベスト16に進みました。

    この成果でも私自身はもう違う世界を見た、違う世界、景色を見せてもらったと思っています。前回大会からやはり森保監督が継続して4年半作ってきた日本サッカー界で、いろんな歴史の中で、この4年半積み上げてきたものがこうして結果として、こういうインパクトを世界に与えられたことの成長というのをすごく強く感じます。

    こういう状況でやはり、スタンダードがまた変えられた日本のサッカーで、今、本当に世界にインパクトを与えられています。

    この状況というのをやはり、継続していかなきゃいけないですし、ここからもう1つ突き破る力というのを今、試合ごとに財産として、蓄積されていると思うので、こういう力を次につなげていく、そういう、貪欲さというか、野望というか、サッカー界の将来へのやはり2030年にはベスト4、2050年には、自国で開催して優勝という壮大な目標もあるので、その中の今現時点、十分に考えられる現実があると思うので、さらに、チームはもとより日本サッカー界が強く、チャレンジしていく時だと思っています。

    Q.スペイン戦の1勝は歴史的に大きな瞬間だった?

    A.ドイツ、スペインのグループで、両チームに対して、逆転勝ちをしている事実、成果というものは、しっかりと受け止めていいと思いますし、もう小国ではないです。もう強豪国として見られてもおかしくない。そういうサッカーを、これからもやはり積み上げて、実現していかなければいけないと思っています。

    Q.ベスト16に入ったことについては?

    A.今までの到達したベスト16とは、今回はまた違う形で、ステージに入れるという感じはしています。非常にチームに余力というか自信がまたさらに積み上がっていますし、なんとかこぎつけたベスト16といういうことではない状況だと思います。

    まだまだ、やっぱり戦力的にも充実している感じはしますし、やっぱり今までの歴史を踏まえて、前回もそうですけど、やはりまだまだ余裕ではない、まだ引き出せる力というものが潜んでます。

    やっとこぎつけた16ではない感じがして、このグループをやはり勝ちあがってベスト16に立てるということで、相当なやはり、アドバンテージを持って余力を持って野望を持って入っていける、そういう日本チームがいると思うので、これはクロアチアであっても、十分に勝ち抜ける、そういう戦力は総合力はまだまだ日本チームにあると思います。

    Q.次のクロアチアチームは?

    A.まだ正確にはクロアチアチームを把握してはいませんけど、前回大会の準優勝チームなんですよ。そういう何か、今回も、しっかりとベスト16に入ってきています。

    モドリッチ選手というベテランも、ここ3試合見ていても、非常に躍動感がまだまだありますし、プラスやはりチームリーダーとして、前回大会から3分の1ぐらいじゃないでしょうか残ってる選手たちが。非常に若い選手たちが活躍して、世代交代を図っている感もあります。

    まず、非常にベテランと若い選手たちがかみ合ったまた新しい力を発揮していますし、そういう意味では日本チームとチーム編成的には似ているような感じもします。それがうまく今融合して、力を発揮していますし、従来やはり技術力が非常に高いですし、力強さもありますし、結構チームの一体感、結束力というものも強いですし、非常に侮れない難敵だと思います。

    ただ、日本チームも、もう十分戦える戦力がありますから、ドイツ、スペインと戦った、勝ち切れたという中では、決してリスペクトしすぎる必要もない相手だと思うので、真っ向から十分に勝負できる相手だと思います。

    Q.決勝トーナメント1回戦に向けて

    A.先ほども言いましたけど、勝ち抜いてきた状況が今までとはやはり違う、日本の強みがまだまだ、引き出せると思います。

    全員総合力を引き出していける状況にあると思いますし、何といってもこのグループをトップ通過したというその大きな財産、自信というものは、チームにみなぎっていると思うので、それをストレートにまた緻密に、考えながらここまで来た、勝ち抜いてきました。力というものを信じて、総合力で戦ってもらいたいなと思います。

    日程・結果(日本時間)

    日本代表