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田中碧 日本代表 決勝点のヒーロー “苦悩の先に見えた光”

サッカーワールドカップカタール大会、日本が強豪のスペインを破った一戦で決勝点をあげたのが田中碧選手です。日本のワールドカップ出場の“立て役者”としての活躍をみせ、この1年で日本の中盤の一角として欠かせない存在になりましたが壁にぶつかり、もがきながら、大舞台に挑んでいました。

目次

    日本サッカーの窮地救った“立て役者”

    田中碧選手は精度の高いパスを駆使した攻撃の組み立てを持ち味とし、ゲームをコントロールする能力にたけたミッドフィルダーです。

    およそ1年前、日本の7大会連続のワールドカップ出場が危ぶまれる中、当時23歳で頭角を現しました。

    当時の日本代表、アジア最終予選で全10試合のうち3戦を終えて1勝2敗。もう1つの負けも許されないような、まさに土俵際の試合となった去年10月の第4戦、オーストラリアとの試合。田中選手は中盤の一角として、初めて先発を任されました。

    「緊張したけど自信を持ってプレーした」とプレッシャーのかかる場面にもかかわらず、開始わずか8分で先制点をマークし、チームに勢いをもたらしました。

    田中選手が中盤で試合をコントロールし、息を吹き返した日本はそこから6連勝。チームを崖っぷちから救い、ワールドカップ出場を決めた立て役者の1人になりました。

    趣味は「散歩と読書」

    ドイツでは自宅の周りを1時間以上、散歩することもあるそうです。朝早く起きて散歩することも多いそうで「もう、おじいちゃんですよね」と苦笑い。そして、ゆっくりベンチに座って外の空気を吸いながら、読書をすることが気分転換になっていると言います。

    W杯へ最後の仕上げも まさかの・・・

    ことし9月中旬。田中選手はワールドカップのメンバー決定前、最後の代表活動となる合宿に向かっていました。

    (田中碧選手)

    「代表に生き残るために毎試合、個人のアピールをやらないといけないのはもちろんそうだが今はワクワクと楽しみのほうが強い」

    いよいよ本番まで残り2か月。チーム作りの仕上げとなる今回の合宿でも「自分の価値を示す」と意気込んでいました。

    しかし、主力メンバーで臨んだアメリカとの強化試合で田中選手は先発から外れました。

    中盤として先発を任されたのはドイツ1部リーグで「デュエル」の勝利数が2シーズン連続トップだった遠藤航選手、ポルトガルでプレーし、ヨーロッパチャンピオンズリーグでも活躍する守田英正選手。それに、ドイツ1部でゴールを量産する司令塔、鎌田大地選手でした。

    所属クラブで輝かしい活躍を見せる好調なライバルたちが躍動し、世界ランキングで格上の相手から勝利を収めた姿をベンチから見つめ、目に焼き付けました。

    (田中碧選手)

    「すごく立ち位置もはっきりした感があるし、いざこういう状況が起きるとやっぱり悔しい。現実を受け入れつつ、ここからどうはい上がっていくか」

    こだわったのは“攻撃参加”

    その後の田中選手は苦悩しながら、みずからの状況を分析し、さらなる成長のために必要なことを整理してきました。

    (田中碧選手)

    「攻撃においても守備においても自分の振る舞いによってチームが変わる。チームの駒ではなくて、中心選手にならないといけない」

    試合を組み立てるだけでなく、自分でも勝負を決めると、こだわったのが攻撃参加の頻度でした。

    昨シーズンは所属クラブのリーグ戦で1ゴールにとどまったことから走りを鍛え、ゴール前に詰める回数を増やしてきましたがその意識をさらに強くしようと考えたのです。

    (田中碧選手)

    「今までは自分がピッチで価値を示して勝利に貢献できればいいと思っていたがそれにゴールがあるかないかですごく評価は変わる。よりゴールを追い求めるようになった」

    そして迎えたワールドカップ。

    遠藤選手のけがもあって田中選手はスペイン戦でボランチとして先発を任されました。

    同点の後半、ゴールに走り込んだ田中選手は三笘薫選手が折り返した体を投げ出して押し込み、値千金の決勝点を奪いました。

    その泥臭いゴールこそ地道に取り組んできたゴール前への攻撃参加が実を結んだ瞬間でした。

    試合後、田中選手は「今回、けが人が出て自分が出るチャンスをもらった部分もあったのでいろいろと思うところはあったが、自分自身が出たところで結果を残すことを意識していた。自分がやってきたことが報われた瞬間でもあった」と振り返りました。

    そしてベスト8がかかる次の試合、決勝トーナメント1回戦に向けて気を引き締めました。

    (田中碧選手)

    「厳しいグループだったがここまで来るのは最低条件。この次が歴史を動かす瞬間だと思うし、きょうは喜ぶけど、またそこに向けて準備できればいいのかなと思います」

    日程・結果(日本時間)

    日本代表