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ワールドカップ 人権や環境問題への懸念も

中東で初めて開催されているサッカーのワールドカップ。開催国のカタールでは、世界最大規模のスポーツイベントに大きな盛り上がりを見せる一方で、ヨーロッパの国などからは人権や環境問題への懸念や抗議の声があがり、大会に影を落としています。

目次

    【解説】カタールってどんな国?出川展恒 解説委員

    前夜祭は祝祭ムード

    カタールワールドカップ開幕の前日。

    首都ドーハにあるファンゾーンと呼ばれる特設会場で前夜祭のイベントが開かれ、大勢のサポーターがつめかけました。

    会場ではビールが販売され、花火が打ち上がるなど祝祭ムードの中、集まった人たちは待ちに待った大会の開幕を祝っていました。

    FIFA会長 人権問題などの批判の声に反論

    同じ日に開かれた記者会見。

    祝祭ムードとは一転してFIFAのインファンティーノ会長は語気を強めてこう語りました。

    「移民労働者のことはとても悲しいことだと思うが、ヨーロッパ人は説教をする前に過去3000年、世界で行ってきたことを謝罪するべきだ。ドーハもカタールも過去最高の大会にする準備ができている。ボールが動き始めたら人々はそれだけに集中するだろう」。

    ヨーロッパの国を中心に大会の開催地、カタールでの人権問題などを批判する声に反論した形でした。

    日本の秋田県と同じぐらいの広さにおよそ290万人が暮らすカタール。

    中東で初めてのワールドカップ開催のため4万人から8万人を収容するスタジアムを7つ新設しました。

    このうち「スタジアム974」は輸送用のコンテナが使用され、大会後には解体して再利用するほか、スタジアムの多くは観客席の規模を縮小して、持続可能なものだとアピールしています。

    大量のCO2排出で環境への悪影響との声

    また、11月でも日中の気温が30度を上回るカタールの暑さ対策として、スタジアムで空調を使用して選手や観客にとって快適な環境を提供するとしています。

    これに対し、密閉されていないスタジアムで空調を使用することで大量の二酸化炭素が排出されるなど環境への悪影響があるという声があがっています。

    フランスでは抗議の意思を示そうとパリやリヨンなど複数の都市でパブリック・ビューイングが中止されました。

    取材に訪れたフランスのテレビ局の女性は「フランスでは多くの人が今回のワールドカップをボイコットすべきだと言っている。大会が始まるとどうなるかはわからないが、現段階では競技よりも環境問題などの政治的な話題により多くの注目が集まっている」と話していました。

    多くの外国人労働者 劣悪な労働環境で死亡と指摘も

    さらに、大会開催のためスタジアム建設などでは多くの外国人労働者が劣悪な労働環境のもとで亡くなったという指摘が出ていて、開催国の人権問題に対し参加するチームや選手などからも抗議の動きが広がっています。

    このうちデンマーク代表はユニフォームに人権問題に対するメッセージを込めたといいます。

    ロゴやエンブレムをユニフォームと同じ色で目立たなくしたほか、ユニフォームの1つを黒を基調としたものにしました。

    デンマークのユニフォームを制作した会社は「抗議を示し、人権に関して必要な議論を引き起こしたいと考えた」ということです。

    同性愛 法律で禁止も批判の対象に

    カタールでは、同性愛が法律で禁止されていることも批判の対象となっています。

    ヨーロッパの複数のチームが、差別に抗議を示すため、虹色の下地に「OneLove」と書かれたキャプテンマークを着用することを計画。

    ドイツでは大会のボイコットを求めるサポーターからの声も根強く、日本代表のキャプテン、吉田麻也選手が所属する1部リーグのシャルケは「カタールでの大会開催は歴史的な間違いだ」と公式ツイッターで発信しました。

    中東で初めて開かれるワールドカップは、環境や人権の問題が“世界最大規模のスポーツの祭典”に影を落としています。

    日程・結果(日本時間)

    日本代表