“ドーハの悲劇から5年” 中山雅史の初ゴール

日本の初陣は24年前の1998年フランス大会でした。
日本と世界との差は大きく1次リーグ2連敗。第3戦のジャマイカ戦で日本の初ゴールが生まれました。
2点を追いかける後半29分、決めたのはジュビロ磐田の中山雅史。ゴール前で倒れこみながら合わせたボレーシュートがゴールネットを揺らしました。
中山と言えばその5年前の“ドーハの悲劇”を思い返します。1993年10月、翌年のワールドカップアメリカ大会に向けたアジア最終予選。勝てば本大会への初出場が決まるイラク戦で中山は日本の2点目を決めました。2対1と日本がリードしワールドカップ初出場が目の前に近づいた試合終了間際、イラクに同点ゴールを決められ無情にも出場を逃しました。

ドーハの悲劇を経験した選手でフランス大会の代表メンバーに選ばれたのは中山雅史とキャプテンの井原正巳。2人は筑波大学の同期生です。当時の映像を見返すと、初ゴールの直後にセンターバックの井原が自陣に戻る中山のもとに一人で駆け寄りタッチを交していました。Jリーグ開幕前から日本サッカーを引っ張ってきた2人のワールドカップにかける思いが伝わります。今でこそ日本代表選手の多くがヨーロッパで活躍していますが、当時の日本代表23人は全員が日本国内でプレーするJリーガーでした。中山雅史はジュビロ磐田のエースとして活躍。ワールドカップ開幕前の1998年4月、1試合で3得点を奪うハットトリックを4試合連続で達成するなどキャリアの充実期を迎えて臨んだワールドカップでした。
初勝利の立役者は“ユース出身” 稲本潤一
日本は2002年日韓大会、第2戦のロシア戦で1対0の勝利。日本が初めてワールドカップ予選に挑んだ1954年スイス大会からおよそ半世紀、待望の初勝利でした。

決勝ゴールを決めたのは22歳のミッドフィルダー稲本潤一。
初戦のベルギー戦に続き2試合連続得点を記録した若者は一躍、時の人となりました。


稲本のゴールは開幕から10年を迎えていたJリーグの発展を感じさせます。
稲本はガンバ大阪ユースの出身。Jリーグクラブの育成組織、いわゆる“ユース”出身者がワールドカップでゴールを決めたのはこの大会が初めてでした。それまでの日本代表は高校や大学のチーム出身の選手がほとんどでしたが、この大会の日本代表にはJリーグの育成組織出身者5人が名を連ねました。Jリーグが発足し育成年代の強化にも力を入れてきた成果を感じます。

2002年日韓大会 Jリーグの育成組織出身者
市川大祐 (清水エスパルス)、稲本潤一(ガンバ大阪ユース)、曽ヶ端準(鹿島アントラーズユース)、宮本恒靖(ガンバ大阪ユース)、明神智和(柏レイソルユース)

カタール大会に臨む日本代表26人の中で、高校年代のJリーグクラブ育成組織に在籍した選手は、キャプテンの吉田麻也(名古屋グランパスエイトU18出身)をはじめ12人。20年前の2倍以上です。
2022年カタール大会 Jリーグの育成組織出身者
権田修一、吉田麻也、酒井宏樹、板倉滉、久保建英、冨安健洋、伊藤洋輝、遠藤航、南野拓実、三苫薫、堂安律、田中碧
勝負所で本田圭佑 日本選手最多4得点
ワールドカップでの日本代表最多得点者は本田圭佑。
2010年南アフリカ大会から3大会連続、合わせて4ゴールを決めました。そのどれもが大会の重要な局面で決めたものでした。


南アフリカ大会では2得点を決めました。初戦のカメルーン戦で1対0の勝利に導く決勝点。大会直前の強化試合で連敗し本大会での活躍が不安視されていた日本代表を勢いづけるゴールとなりました。
決勝トーナメント進出をかけた第3戦のデンマーク戦で決めたフリーキックは鮮烈でした。30メートルほどの距離から蹴られたボールはほとんど回転せず揺れながらゴールへ。見事な先制ゴールが決まり活気づいた日本は3対1で勝利、2回目の決勝トーナメント進出を果たしました。

2014年ブラジル大会ではまたしても1次リーグの初戦で先制ゴール。コートジボワールに逆転負けを喫しましたが、大会の流れを決める上で最も重要と言われる初戦で2大会続けて得点を記録しました。

2018年ロシア大会は第2戦のセネガル戦で決めました。
1対2とリードを許して迎えた後半に本田と岡崎慎司、同い年のベテラン2人が立て続けに途中出場。後半33分、左サイドからのクロスに本田が左足で合わせ同点ゴール。ゴール前に飛び込んでいた岡崎が相手を引きつけ本田がフリーになっていました。ワールドカップ3大会に共に出場した2人のゴール後のパフォーマンスは記憶に新しいところです。
本田は出場した3大会連続でゴールを決めて2度の決勝トーナメント進出。決めた4得点はすべて得意の左足で生み出したものです。大舞台で力を発揮する勝負強さで日本代表を引っ張りました。
“決勝トーナメントで初ゴール” 2018年ロシア大会
日本が決勝トーナメントに進出したのは過去3回。
その中で日本がゴールを決めたのは前回ロシア大会のベルギー戦が初めてです。ピッチリポーターとしてゴール裏で試合を見つめる中で、まず感じたのはベルギー選手の迫力です。分厚い胸板、太い首、ヘディングの競り合いで響く低く乾いた音から、その威力が伝わってきました。そんな世界の強豪相手に一歩も引くことなくぶつかり合う日本。その形相から、この一戦にかける気迫が伝わってきました。


前半を無失点でしのぎ迎えた後半3分、原口元気の右足のシュートで先制すると、ゴール裏の日本サポーターから大歓声。
その4分後には乾貴士がペナルティエリアの外から狙ったミドルシュートが低い軌道を描いてゴールネットを揺らすと、今度はスタジアムからどよめきが起こりました。
強豪 ベルギー相手に2点のリード。「ベスト8に手が届く」と思った瞬間でした。
その後はベルギーの底力に屈しましたが夢が広がるゴールでした。
ロシア大会を経験し今回のワールドカップでも代表メンバーに選ばれたのは川島永嗣、吉田麻也、長友佑都、酒井宏樹、柴﨑岳、遠藤航の6人。カタール大会ではどんな希望のゴールが生まれるでしょうか。