“妖精の輝き”ストイコビッチ(旧ユーゴスラビア)

愛称は妖精“ピクシー”。類まれなテクニックと情熱的なプレーでサポーターの心をひきつけたのが、旧ユーゴスラビアのストイコビッチです。
1994年から8シーズンに渡り名古屋グランパスエイト(現名古屋グランパス)でプレー。相手を翻弄する巧みなドリブルや右足の正確なキックでスタジアムをわかせ、1995年にはJリーグのMVPに選ばれました。

語り継がれているプレーが「雨のリフティングドリブル」。
1994年9月、降り続いた雨でグラウンドにはいたるところに水たまりができてボールが転がるような状況ではありませんでした。ストイコビッチは自陣で受けたボールを地面につけることなくリフティングをしながら敵陣まで運んだのです。ボールを足先で突きながら相手が追いつけないほどのスピードで約40メートルを前進。“走る”というよりも“舞う”という表現が当てはまるピクシーの真骨頂でした。

ストイコビッチが初めて出場したワールドカップは1990年イタリア大会。背番号10をつけ、チームの中心選手として臨みました。
当時のユーゴスラビア代表を指揮していたのが日本サッカー界に多大な影響を与え、ことし5月に亡くなったオシム監督です。のちにジェフ市原・千葉と日本代表で監督を務める名将が率いた代表チームにはストイコビッチをはじめテクニックに優れた選手が多く「東欧のブラジル」と呼ばれました。
ストイコビッチは決勝トーナメント1回戦でスペインから2ゴール。延長戦で鮮やかなフリーキックを決め、チームをベスト8に導きました。
しかし、その後は民族紛争の影響で代表チームは活動停止。1994年アメリカ大会には出場することができませんでした。

1998年フランス大会、ストイコビッチは2大会ぶりにワールドカップに出場。キャプテンマークを巻いてユーゴスラビアをけん引し、決勝トーナメントに進出しました。
1回戦でオランダに敗れましたが、正確なフリーキックで味方のゴールをアシストするなどその実力を示しました。

ストイコビッチは監督としても名古屋グランパスで功績を残しました。
2008年から指揮を取ると2010年にはクラブ初のJ1優勝に導きました。
ピッチリポーターとして名古屋グランパスベンチのすぐ横でマイクを手にした時に感じたのは勝負に対する気迫です。試合が始まった時はスーツにネクタイ姿だったストイコビッチが、試合中に激高しながらネクタイを外し、ジャケットを脱ぎ、最後はシャツ一枚で選手を鼓舞する情熱的な姿が心に残っています。

今回のカタール大会でストイコビッチは出身地セルビア代表の監督としてワールドカップの舞台に戻ってきます。
セルビアはヨーロッパ予選で6勝2引き分けと負けなしの成績で、クリスティアーノ・ロナウド擁するポルトガルを上回りグループ首位でワールドカップ出場を決めました。1次リーグ初戦ではブラジルと対戦。ピクシーの采配に注目が集まります。
“J2から世界へ” パク・チソン(韓国)

ワールドカップに3大会連続で出場し、いずれの大会でもゴール。キレのあるドリブル突破と闘争心あふれるプレーで長く韓国代表の攻撃を引っ張ったパク・チソンは、2000年に京都パープルサンガでプロのキャリアをスタートさせました。
加入2年目のシーズン、J2でプレーしていた若手は2002年の日韓共催のワールドカップで世界への扉を開きました。

21歳だったパク・チソンが世界にその名をとどろかせたのは1次リーグ第3戦のポルトガル戦です。1対0の勝利に結びつけるゴールを決め韓国初の決勝トーナメント進出に貢献。クロスボールを胸でトラップし相手をかわしながらねらったシュートは華麗でした。
韓国は、この大会までワールドカップで勝利をあげたことがありませんでした。
初出場した1954年スイス大会から6回目の出場での初勝利をきっかけに、決勝トーナメントではスペイン、イタリアといったヨーロッパの強豪を相手に次々と勝利。アジア勢初のベスト4進出を果たしました。

柏レイソルでキャプテンを務めたセンターバック、ホン・ミョンボをはじめ、Jリーグで輝いた韓国選手たちの活躍も記憶に残っています。
“ティキタカの申し子”イニエスタ(スペイン)

2010年南アフリカ大会。スペインは“ティキタカ”と呼ばれた華麗なパスサッカーで初優勝を飾りました。
その小気味よいボール回しの中核を担っていたのが、ヴィッセル神戸でプレーするミッドフィルダー・イニエスタです。オランダとの決勝戦は0対0で迎えた延長後半にゴールを決め、スペイン初優勝の立役者となりました。

スペインは圧倒的にボールを支配する攻撃的なサッカーを貫いて世界の頂点に立ちました。
一方で試合結果を振り返ると決勝トーナメントの4試合はいずれも1対0。意外にも複数得点を奪った試合はなく、4戦連続無失点という守備が目を引きます。自分たちが攻め続け相手に攻める機会を与えない“攻撃は最大の防御”ということばを体現したチームだと感じます。

イニエスタは今もヴィッセル神戸でJリーグファンを魅了し続けています。
ボールが足に吸い付くようなテクニックだけではなく、ボールを持っていない時の巧みなポジション取りには目を見張ります。ジョギングを繰り返しているだけのように見えて、いつの間にかイニエスタのもとにボールが集まりチャンスを演出。相手の位置を的確に把握する視野の広さと戦術眼で輝き続けています。