• PDFアイコン

    PDFをダウンロード

  • 目次アイコン

    目次

アンケート概要

岩手・宮城・福島の被災地では、プレハブ仮設住宅の入居者が大幅に減少し、計画された災害公営住宅の整備やかさ上げによる宅地造成がほぼ終わるなど、住まいの復興は仕上げ段階に入っています。

一方、今も避難生活を余儀なくされている人は約4万7000人にのぼり、多くの自治体では人口減少に歯止めがかからず、地域経済も回復したとは言えない状況です。

被災した人たちは現状をどう感じているのか。約4000人を対象にアンケートを行いました。

閉じる

東日本大震災9年

アンケート概要
チェックアイコン

回答者1,965

  • アンケート記入アイコン
    岩手県
    726
  • アンケート記入アイコン
    宮城県
    728
  • アンケート記入アイコン
    福島県
    505
  • アンケート記入アイコン
    その他
    6
チェックアイコン

復興実感について

当初思い描いていたより悪い

2人1人

約半数が、今の復興の姿は「当初思い描いていたより悪い」と回答。県別分析から、福島の復興実感が特に低いこともわかりました。

Q1

当初、あなたが思い描いていた復興と比べて、今の復興の姿をどう考えますか?

復興実感グラフ
復興実感県別
Q2

暮らしていた地域のこれまでの復興状況について、どのように感じていますか?

復興実感グラフ
復興実感県別
アンケート記入アイコン

回答者の声

岩手県宮古市(60代女性)

震災後、思い描いていた未来のようには、なっていない。復旧、復興が遅れている。もうー度、原点に立ち返り、何を目指して、どこへ行き着きたいのか、見つめ直す時なのかもしれない。

宮城県南三陸町(30代女性)

一歩一歩復興に向け進んではいますが、震災の傷あとはまだ深く残っているような気がします。地元で残る人も少ないからか、若い人たちや子どもたちを見ると、めずらしいと感じる日々です。これも震災がなかったら違っていたのかなと思わない日はありません。

宮城県石巻市(80代男性)

仮設団地での生活と比べて、人との交流が極端に少なくなっている。被災のダメージをいくらかでも薄れさせてきたあとに、また虚脱感が生まれている。心の復興には相当の時間が必要だと思う。

チェックアイコン

家庭の収入への影響

震災等で「収入が減った」

2人1人

半数余りが、震災・原発事故の影響で家庭の「収入が減った」と回答。依然、生活再建の問題が未解決なことが明らかになりました。

Q1

震災・原発事故は、家庭の収入にどのような影響を与えましたか?

収入グラフ
Q2

収入が減った要因は何ですか?

収入グラフ
Q3

収入が減ったことによる生活への影響は?

収入グラフ
アンケート記入アイコン

回答者の声

岩手県陸前高田市(60代女性)

仮設住宅に8年3か月住み、やっと令和になって再建したが、ローンの心配もあり、買い物に行っても食品は高い物は買えず、いつもお金が、頭から離れず、金銭的に心配。

福島県いわき市(40代女性)

私は子どもが3人います。学童、保育所に預けて仕事をしたかったけど、利用できずに働けませんでした。自主避難もしなければならず、大赤字でこの後の人生を歩まなければいけないのがつらいです。

宮城県仙台市(震災当時・石巻市)
(70代女性)

支援体制が10年間という期限があります。この10年以降、どのような生活がまっているのか、不安でいっぱいです。もう少し、長い目で支援をつづけてもらいたい。

チェックアイコン

災害公営住宅の家賃について

家賃「2倍以上値上がり」

入居経験者10人1人

災害公営住宅の居住経験がある被災者の1割が、入居当初と比べて家賃が「2倍以上に値上がりした」と回答。中には「3倍以上に値上がりした」という人もいて、被災者からは不満や不安の声が寄せられました。

Q1

今の家賃(退去した人は退去直前)は、入居当初と比べて変化がありますか?

家賃グラフ
Q2

家賃が値上がりした分をまかなうために行なっていることや検討していることは?

家賃グラフ
アンケート記入アイコン

回答者の声

岩手県釜石市(60代男性)

段階的に家賃を見直すとのことだったが、2年経過していきなり2倍以上に上昇した。自治体の思惑だけで家賃が急に値上げされたことは納得しかねる。

宮城県石巻市(50代女性)

働けば働くほど、翌年の家賃が上がり、今後の生活が不安です。生活費の節約や病院に行くのも我慢したりしてます。

宮城県仙台市(50代女性)

家賃も高くなり、どこに住めというのか。被災して母子家庭で、どうしようもなくなったら死ねっていうのか、と思います。

チェックアイコン

震災の風化・伝承について

震災から時間がたち風化

10人7人

ありのままに伝える映像

10人7人

7割が「震災から時間がたち風化している」と感じていると回答。被災地の伝承施設などで見せている津波襲来時の映像については、7割が「津波が襲った時の様子をありのままに伝えるため配慮を最小限にとどめた映像」を見せるべきだと答えました。

Q1

震災から9年がたちますが、以下の項目についてどう思いますか?

風化・伝承グラフ
Q2

震災遺構の中には、展示室などを設けて津波が襲ったときの映像を見せている所もあります。どのような映像を見せるのが適切だと思いますか?

風化・伝承グラフ
Q3

「配慮最小限」の理由は?

風化・伝承グラフ
Q4

「最大限配慮し刺激を抑えた映像」「映像は見せるべきではない」の理由は?

風化・伝承グラフ
アンケート記入アイコン

回答者の声

宮城県岩沼市(70代男性)

全国各地で災害が起きているので、東日本大震災の事が忘れられて行くような気がします。風化させないように後世に伝えるよう私たちも努力したいと思います。

岩手県大槌町(50代男性)

人は見たくないものからは目をそらし、自分の身に襲いかかるかもしれない災いは考えないようにし、経験した災害は早く忘れようとする。未来の人のために、つらい経験・貴重な体験を伝えることは、試練ではあるが、使命でもあると思う。震災経験者の『つらさからの逃避』は、未来の人の被災につながると感じる。

福島県本宮市(震災当時・浪江町)
(90代女性)

震災、津波に対しての復興活動は目に見えるが、原発事故に対する復興作業、進行の実感がない、見えない。復興の停滞は風化そのものです。

チェックアイコン

防災意識について

震災直後より高くなった

2人1人

半数が、震災発生直後と比べ防災意識が「高くなった」と回答。全国で相次ぐ災害が被災者の防災意識に影響を与えていることがわかりました。

Q1

震災から9年がたとうとする中、あなたの防災意識は、震災の発生直後(概ね1年後まで)と比べて変わりましたか?

防災意識グラフ
Q2

防災意識が「高くなった」「やや高くなった」「変わらない」と思う理由は?

防災意識グラフ
Q3

防災意識が「やや低くなった」「低くなった」と思う理由は?

防災意識グラフ
アンケート記入アイコン

回答者の声

宮城県石巻市(50代男性)

もう9年。あれから9年ではない。次の災害へのカウントダウン。常在戦場、一人一人の意識の向上が必要。

福島県南相馬市(50代女性)

自然の力には勝てません。これからは、いつでも災害と背中合わせの環境におかれているという事を一人一人が意識する事が大事と思います。実際、生と死は紙一重。被災者になってしまうと以前の暮らしに戻る事は不可能です。どんなに苦しくても前に進む、現実を受け入れるしかなくなる事を皆様にもわかって欲しいです。

岩手県大槌町(50代男性)

東日本大震災で亡くなった方々の死を無駄にしないでほしい。最悪な事態を想像して生き残るための最善の避難行動を真剣に考えて備えなければ自然災害は無慈悲に人々の人生と生命を奪っていく。

チェックアイコン

復興五輪について

復興に役立つと思わない

3人2人

6割が、政府が「復興五輪」と位置づける東京オリンピック・パラリンピックは被災地の復興に「役立つと思わない」と回答。被災者の多くが「復興五輪」の経済効果に否定的です。

Q1

大会が東日本大震災の被災地の復興に役立つと思いますか?

復興五輪グラフ
Q2

東京オリ・パラについてどう思いますか?

復興五輪グラフ
アンケート記入アイコン

回答者の声

宮城県名取市(40代男性)

いろいろ支援いただいた世界中の方々に感謝の気持ちを伝えたい。ここまで復興してきている状況を見て頂きたい。

福島県新地町(震災当時・飯舘村)
(70代男性)

ありのままの今を見てほしい。何も変わってない所を。いやそれ以上畑、田、家もなく自然に戻るありさまを、人、一人もいない現象を。

福島県富岡町(60代男性)

復興五輪と言えるのか甚だ疑問である。廃炉の問題、汚染水の問題など、道筋がつかない状況での五輪。福島以外の復興五輪のように私は感じます。

吹き出しアイコン

監修コメント

木村教授顔写真
兵庫県立大学
木村玲欧教授
(社会心理学)

アンケートを分析して、「軌道修正」が必要なことが多く出てきたと感じました。復旧・復興が順調に進んでいる項目がある一方で、家計の収入が減っている問題や地域経済の問題、災害公営住宅の家賃値上げによって生活が成り立たなくなっている問題などが浮き彫りになりました。

阪神・淡路大震災や他の災害に比べて、被災者一人ひとりの復興のスピードも遅いと感じています。

特に、家計や住まいをいかに安定させて生活再建に結びつけていくかが重要ですが、このままでは来年の震災10年も今回とほとんど変わらない結果になるおそれがあります。

今回のアンケート結果をもとに、さまざまな側面で支援のあり方を考え直す必要があると思います。