デジタル

AI・メタバースLabo ~未来探検隊~

ゲームで稼げるの?「ブロックチェーンゲーム」って何だ

ゲームで稼げるの?「ブロックチェーンゲーム」って何だ

2022.09.27

“ゲームでお金が稼げる”と聞くと「信じられない」とか「怪しい」などと感じる人が多いのではないだろうか。

 

しかし、取材を進めてみると実際にプレ-することで収入を得られるゲームが存在していることがわかった。

 

そうした新しいジャンルのゲームが国内最大のゲームの展示会「東京ゲームショウ」で紹介されるという。

 

本当に稼げるのか?その仕組みは?「東京ゲームショウ」で業界が注目する新たなゲームの真相に迫った。

「東京ゲームショウ」初出店!稼げるゲーム=「ブロックチェーンゲーム」って何だ?

東京ゲームショウ2022のキービジュアル

ことし3年ぶりに観客を入れ、千葉市の幕張メッセで開催された「東京ゲームショウ」。

37の国と地域から605の企業などが出展し、会場は熱気に包まれていた。

東京ゲームショウの会場、3年ぶりの有観客開催に多くのゲームファンが駆けつけた

家庭用の据え置き機やスマホゲームの新作をPRするブースが立ち並ぶ中、今回、ゲームショウ初の出展となったのが「ブロックチェーンゲーム」を紹介するブースだ。

紹介されていたのが、コマンド入力でキャラクターを戦わせるスマホ用の対戦ゲーム。

キャラクターごとに違うスキル(技)をどう繰り出すか、どのキャラクターを先に狙うかといった部分に戦略性があるが、互いに1人ずつ攻撃して先に全員の体力を削りきったほうが勝ちというシンプルなルールで遊びやすい。

開発中のスマホゲーム「PROJECT XENO」のプレイ画面、見た目や遊び方は一般的なスマホゲームと同じだ

一般的なゲームと違うのが「お金を稼ぐことができる」という要素だ。

例えば、対戦で勝った報酬としていわゆる暗号資産と交換できるゲーム内通貨がもらえたり、キャラクターやアイテムなどをプレイヤーどうしで売買したりすることでも実際にお金を稼ぐことができるのだという。

「ブロックチェーンゲーム」は、「NFTゲーム」、「WEB3ゲーム」などとも呼ばれている。

呼び方が違っても仕組みはほぼ共通していて、NFT、ブロックチェーンといった新しい技術が利用されている。

NFTは、「Non-Fungible-token=非代替性トークン」の略で、
「偽造できない鑑定書や所有証明書が付いたデジタルデータ」とされている。

例えばカードゲームであれば、ゲーム内で使用するカードそれぞれに複製することができない唯一の価値がつけられ、入手が困難であるほどその価値は高まり、高値で売ることができる。

ブロックチェンゲームは、このNFTの技術によってキャラクターやアイテムの所有権が事業者からプレーヤーに移り、個人の資産になる。そのため自由な売買が許されるというのだ。

また、ブロックチェーンは、「分散型管理台帳」と訳され、デジタルデータの取引をネットワーク上の分散した端末で記録する技術で、暗号資産の取引にも活用されている技術だ。

おおまかなブロックチェーンゲームの仕組み

つまり、NFTの技術によってキャラクターやアイテムが、さまざまな価値を持つプレーヤーの資産となり、ブロックチェーンの技術によってその取引を記録することで複製や偽造などの不正を防ぐ、これが、これまでになかったゲームの特徴だ。

5か月で1000万円!?うまい話には落とし穴も…

実際、どのぐらい稼げるものなのか。

会場には、ブロックチェーンゲームのプレイヤーたちが作った団体のブースもあった。

世界には、数多くのブロックチェーンゲームのプレイヤーがいる。24か国10万人以上のプレーヤーが参加する世界最大の「YGG」というブロックチェーンゲームギルド(団体)とパートナーシップを結ぶ「YGGJapan」のブースだった。

YGGJapanのブース、日本国内でブロックチェーンゲームの普及や、プレーヤーどうしの情報交換などに取り組む

このブースで、「ブロックチェーンゲーム」の情報を発信するインフルエンサーで、日本人プレーヤーのジョンさんと出会った。

ジョンさんは、世の中にブロックチェーンゲームが認知され始めた去年5月からいち早くプレーしているという。

DeFitterジョンさん。SNSのフォロアーは4万人、投資家、Youtuberなど幅広く活動

私は率直な疑問を投げかけた。

「ブロックチェーンゲームは本当に稼げるものですか?」

(DeFitterジョンさん)
「稼ぐ方法は2つあります。ひとつはゲームをプレーして暗号資産を受け取って稼ぐこと。もうひとつは投資です。プレーしなくても、アイテムなどのNFTの売買で利ざやが出ることもあるので、稼ぐという意味合いではいろいろなチャンスがあります。僕も1つのゲームで、およそ5か月で1000万円稼いだことがあります」

1か月あたり200万円!?

驚いた私は質問を続けた。

「私のような素人でもそんなに稼げますか?」

(DeFitterジョンさん)
「ブロックチェーンゲームはものすごい早さで新しいゲームの開発が進んでいます。現状では個人でも1か月20万円から30万円ぐらいなら稼いで食べていける。ゲームは今まで消費するものでしたが、ブロックチェーンゲームの登場によって、堂々とゲームをしてお金を稼ぐということが現実のものになっていくと思います」

ジョンさんが1か月で得たという1000万円の利益は、暗号資産を日本円に換算した金額だ。ゲームのプレー報酬として直接手に入れられるほか、キャラクターやアイテムなどのNFTを売却して手に入れる方法などがある。

一方で、ジョンさんによると、ブロックチェーンゲームの業界では、これまで投機的な動きが多く、リスクもあるという。

(DeFitterジョンさん)
「サービス開始当初はゲーム内通貨の価格が乱高下するので、暗号資産の知識がない人は損を出してしまう可能性があります。ハイリスクハイリターン、株式の危ない銘柄を扱っているようなものです。現状のブロックチェーンゲームは、ゲームを遊ぶというより稼ぐという側面が強いので、暗号資産の知識はすごく重要です」

現在のブロックチェーンゲームは、資本が少ないベンチャー企業による開発がほとんどで、開発費を集めようとサービス開始前にゲーム内通貨を販売することで、投資家が大量に購入して価格がつり上がり、そして、いざサービスを開始すると投資家はここぞとばかりに一気に売りに走る。その結果、ゲーム内通貨の価値が暴落し、プレーできるころにはゲーム内でいくら通貨を集めても暗号資産と交換することができない。つまり稼げなくなってしまう、という状況に陥っているという。

ブロックチェーンゲーム経済圏が崩壊する1例

また、暗号資産やNFTをめぐる現行の法制度は、未整備な部分も多く、グレーな側面もあるため、日本ではゲームを開発する側が参入しにくいことも課題になっているという。

目指すのは「稼げる」と「面白い」の両立

本来、ゲームは楽しく遊ぶもの。投機という側面もあるブロックチェンゲームで、楽しくお金を稼ぐというゲームファンたちの夢は実現するのか。

今回の東京ゲームショウでは、そうした課題を乗り越えようとする意欲的な新作ゲームも数多く紹介されていた。

冒頭に紹介した対戦ゲームもそのひとつで、ゲーム開始直後の暴落を防ぐために、株式で言う「ロックアップ」、つまり、一定の期間か、一定の株価になるまで株式を売ってはいけないという制限をもうけ、ゲーム内通貨に適用することを検討しているという。

期間はゲームごとに違うが、3年から5年の「ロックアップ」を検討している開発チームが多く、これからのブロックチェーンゲームの主流になることを予感させた。

2勢力によるバトルが楽しめる韓国企業開発の「Reta Wars」もリリース時にはロックアップを設ける予定

さらに日本のゲームファンにとってなじみ深い、人気タイトルのブロックチェーンゲームの開発も進んでいた。

そのうちのひとつ、スマホ向けの格闘ゲームを体験させてもらった。

画面右下に表示されるアイコンをタップするだけで技を繰り出すことができるうえ、ほかの技のボタンを連続でタップすると技がつながり、爽快感も味わえる。

ゲーム内通貨を得るためには対戦に勝つ技術、いわゆるゲームスキルが求められるが、かつてゲームセンターで遊んだ格闘ゲームがスマホで遊べるというだけでもプレーする動機になると感じた。

ブロックチェーンゲームでは、これまでは「いかに稼げるか」が重視されてきたということだが、これからは「稼げるし、おもしろい」というバランスを重視するゲームが増えてきそうだ。

有名IPのスマホゲーム「THE KING OF FIGHTERS ARENA」を記者もプレー、直感的な操作が勝敗を分ける

ブロックチェーンゲームはユーザーの心をつかむか

「Play to Earn=遊んで稼ぐ」を掲げて進出してきたブロックチェーンゲームの道のりはまだまだ未知数だ。

投機的な側面も強く、NFTや暗号資産の価値の変動のリスクも抱える上、法制面や税制面での課題も残されている。

一方で、ブロックチェーンゲームのブースで行われたトークイベントには、開発者や投資家など大勢の人たちが集まり、今後のゲーム業界を変える起爆剤として大きな注目を集めていることも見て取れた。

YGGJapanのトークイベント、ブロックチェーンゲームの今後に注目が集まる

今後、ブロックチェーンゲームはどう世の中に広がっていくのか。日本市場への普及や情報発信を手がける企業の代表に話を聞いた。

(ForN 藤原哲哉CEO)
「この2、3年、日本のゲーム市場は微々たる増減で推移しています。このままではゲームが衰退してしまいます。業界が明るくならないとおもしろいゲームは生まれてきません。ブロックチェーンゲームによって新たな資本を得ることは、よりおもしろいゲームが作られることにつながると思っています」

ForNはYGGJapanの業務提携パートナー、藤原さんは大手ゲーム会社で業界の最前線を見つめてきた

新たな市場が開拓されればゲーム開発に投入する資本も増える。

ただ、実現には多くのゲームファンをブロックチェーンゲームという新しいジャンルのゲームに引き込む必要がある。

(ForN 藤原哲哉CEO)
「日本のユーザーがブロックチェーンゲームに求めるものは何なのか。やはり私はゲームは楽しむものだと思っています。だからこそ『Play and Earn』。ゲームが中心にあり、楽しむことと稼げることの両軸をかなえていきたいと思っています。そのためには事業者が新しい技術や経済圏をしっかりとかみ砕いてゲームに落とし込み、新しい体験としてユーザーに提供していく必要があると思います」

「いつまでゲームしているの!」ふと、幼少期によく聞いた言葉を思い出した。

本格的なゲームをプレーしなくなってもうずいぶんたつが、子どものころはゲームが与えてくれる新しい体験に夢中だった。食事や勉強のことなど忘れる時もあった。

私にとっては、ゲームは、楽しむためにするものだ。
でも、遊んで、稼げたらいいなとも、確かに思う。

そんな夢をかなえたいという多くの願いが、エンターテインメントを発展させてきたのだと思う。

いま、ゲームの世界は大きく変わろうとしている。

(ForN 藤原哲哉CEO)
「ゲーム業界は転換期に足を踏み入れたと感じています。ゲームはどう変わっていくのか。もっとゲームは盛り上がれるんだ!もっとゲームは楽しくなれるんだ!ということを認知してもらいたいです。一般のユーザーが職業=ゲーマーと名乗る時代が、これから来るかもしれません」

取材中、YGGJapanのブースに客足が途絶えることはなかった
メタバースの祭典?「バーチャルマーケット」に”潜入”してみたら

NEWS UPメタバースの祭典?「バーチャルマーケット」に”潜入”してみたら

これからのゲームは誰が作るのか? インディーゲーム新時代

NEWS UPこれからのゲームは誰が作るのか? インディーゲーム新時代

バイオハザードシリーズ開発トップが語る人気の秘密と日本ゲーム業界への危機感

NEWS UPバイオハザードシリーズ開発トップが語る人気の秘密と日本ゲーム業界への危機感

ゲームの開発現場 のぞいてみたら

NEWS UPゲームの開発現場 のぞいてみたら

ご意見・情報 お寄せください