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“第6波”ピーク迎えた? 下がりきらずに”第7波”も?

2022.02.16 :

新型コロナウイルスのオミクロン株はこれまで経験のない規模の感染拡大となっています。

毎週のように何倍にもなっていた一時の感染拡大の勢いは、2月初旬以降、弱まったようにもみえますが、この先どうなるのでしょうか?

“第6波”はピークを迎えたか?

オミクロン株が流行の主流となり、ことし1月から2月にかけて、毎日報告される新規感染者数が前の週の同じ曜日から大幅に増加する状況が続きました。
2月中旬となり、ようやく感染者数が前の週を下回るようになりました。
1週間平均の推移は次のようになっています。(2月14日までのデータ・小数点1位を四捨五入)

2月 8日 9万2772人/日
   9日 9万2763人/日
  10日 9万3170人/日
  11日 9万3266人/日
  12日 8万7957人/日
  13日 8万6077人/日
  14日 8万4850人/日

連休の影響などもあるため、簡単には判断できませんが、ことし1月以降一貫して増え続けてきた週平均の値が、今月12日に初めて減少となりました。
この推移からは2月11日がピークとなっているように見えます。
厚生労働省のクラスター対策班参与で、数理モデルを使った感染シミュレーションで政府に助言してきた医師の古瀬祐気さんは、「第6波」のピークを迎えている可能性があるといいます。
厚生労働省クラスター対策班参与 古瀬祐気医師
「ピークが見えてきたところかなと思っている。感染者数の増え方はかなり緩やかになっている。病床がひっ迫してきて、通常の医療が提供できなくなってきたところが出始めたことに市民が気づき、いまは我慢するときだと行動を変えたことが背景にあるのではないか」(古瀬祐気さん)
ただ、古瀬さんの話では、このまま収束していくかどうかを予測するのは簡単ではないということです。
「オミクロン株のように『世代時間』が短いウイルスは急激に増えて、対策がとられると急激に下がるということが理論上いわれている。今回もそうなるのではと期待されていたが、海外や日本でも沖縄県などからは、そうはなっていないことを示すデータが入ってきている。急激に減るのではなく、ゆっくり下がっていく、もしくは高止まりとなってしまっている」(古瀬祐気さん)

世代時間が短い → 感染は急拡大

オミクロン株の感染拡大に大きな影響を及ぼしたとされるのは「世代時間」です。

オミクロン株が広がり始めた当初、世界中が注目したのは、感染が広がるスピードの速さでした。それまでのデルタ株に比べて感染力が何倍も強いかのように見えたからです。

感染が広がるスピードはいくつもの要因によって決まりますが、1人が何人に感染を広げるか、いわゆる感染力(再生産数)もその1つです。
オミクロン株がそれまでの何倍ものスピードで広がった原因は、感染力(再生産数)が何倍にも高まったことにあるのではないかと考えられたのです。

2021年12月8日の厚生労働省の専門家会合では、オミクロン株の流行が最初に確認された南アフリカのデータの分析結果として、オミクロン株の「実効再生産数(さまざまな対策なども織り込んだ上で1人から平均で何人に感染が広がるかを示す数値)」は、デルタ株の4.2倍になっているという推計値が報告されました。
2021年12月8日の厚生労働省専門家会合
ところがその後、海外の研究で、オミクロン株の最も大きな特徴は、「世代時間」がデルタ株に比べて大幅に短くなっていることではないかという試算結果が公表されました。

「世代時間」とは、感染してから別の人に感染させるようになるまでの時間のことです。「世代間隔」とも言います。

「世代時間」を知るには、いつ感染して、いつほかの人にうつしたかなどの詳細な疫学調査のデータが必要になるため、正確な数値を調べることは簡単ではありません。
それを、イギリスの研究者やロンドン大学の研究グループが、ビッグデータ解析によって、統計的に推定することに成功したのです。

その結果、デルタ株までの新型コロナウイルスではこの「世代時間」が5日程度とされていたのに対し、オミクロン株では、「世代時間」が2日程度に短くなっている可能性があることが分かりました。
2022年1月20日の厚生労働省専門家会合資料 一部加工
これは何を意味しているのでしょうか。

例えば、デルタ株とオミクロン株で感染力が同じと仮定して、両方とも「1人から2人に感染させる」とした場合、

▼デルタ株では、
 1人の感染者から、5日目には2人に広がります。

▼オミクロン株では、
 1人の感染者が、2日目に2人、4日目には4人で、合計で6人です。

5日目の時点で感染者数を比べると、3倍に多くなっています。
つまり、もし「世代時間」が同じ5日だと想定して考えていると、オミクロン株は、1人から感染させる人数、再生産数が「6」と、デルタ株よりも3倍も感染力が強いウイルスにみえるのです。

ところが実際には、オミクロン株は、「世代時間」が短く、短期間のうちに次々と感染していくため、短期間で感染者が多くなっているとみられることが分かったのです。
(※オミクロン株の感染力がデルタ株と比べて変化しているかについては、まだ詳しくは分かっていません。)
Public domain / CDC / Alissa Eckert, MSMI; Dan Higgins, MAMS

オミクロン株の特徴 感染減少への影響は?

オミクロン株の「世代時間」の短さが、感染急拡大の要因となった可能性があるということですが、減少局面ではどのような影響があるのでしょうか。

海外の事例をみてみます。
南アフリカで、オミクロン株が初めて報告されたのは2021年の11月下旬です。実際にはこれより前にウイルスは広がり始めていたと考えられますが、それでも12月中旬にはピークを越えて減少に向かい始めました。

これは、当初予想されたよりも早いピーク越えとなりました。
南アフリカでの感染者数の推移(1週間平均) 12月半ばにピークを迎えた (画像はOur World in Data)
古瀬さんによりますと、オミクロン株の特徴である「感染力が思ったほど高くなく、代わりに『世代時間』が短い」という性質を踏まえると、説明がつくということです。

もし、感染力が強いウイルスだと、1人から多くの人に感染が広がるおそれがあり、感染対策をとっても、すり抜けてしまうリスクが高くなります。

仮に、「世代時間」が短いせいで急激に感染者が増えたとしても、感染力がそれほど高くなければ、ウイルスはもともと少人数にしか感染することができませんから、その場にいる人たちがみんな感染対策をしっかりととっていれば、そこで感染拡大を止めて、減少傾向につなげられる可能性が高まります。

つまり、同じ感染対策を取ったとしても、感染力が小さいウイルスのほうが、対策の効果が現れやすいということです。

オミクロン株感染持続 2つの仮説

ところが実際には、先に感染が拡大した各国の感染状況を見てみると、ピークを迎えたあとも急減速はせず、徐々に減少して高止まりする国もあります。

国内でも、先に感染拡大が始まった沖縄県で、感染者数はピークを迎えたように見えますが、感染が減るスピードは非常にゆっくりとしています。
沖縄県の感染者数の1週間平均(折れ線グラフ)は1月18日がピーク 上昇時と比べて減少は緩やか
何が起きているのでしょうか。

古瀬医師は、あくまでも仮説だとして主に2つの可能性を指摘します。

一つは、オミクロン株の「世代時間」が短いことがクラスター対策を難しくしたというものです。
沖縄県では、若い人たちの間での感染は、比較的、早く収まっていますが、その後、高齢者施設などでクラスターが発生しました。
これまでのウイルスでは、感染してからほかの人にうつすまでに5日程度あったため、高齢者施設などで感染者が出た場合、すぐに濃厚接触者を隔離するなどして対応を取ることができました。
ところが、オミクロン株は2日程度で感染が広がってしまいます。すぐに別の人に感染が広がってしまうため、感染者が確認されてから対策を取るまでに、別の人が感染してしまう可能性があるのです。
このことが、施設などでのクラスター対策や家庭内での感染対策を難しくしている可能性があるといいます。

もう一つは、オミクロン株のうち、世界中で流行の主流となっている「BA.1」とは別のタイプ、「BA.2」の存在です。
国内ではこの「BA.2」の広がりは報告されていませんが、デンマークや南アフリカなどでは「BA.1」から「BA.2」に置き換わったという報告があります。
このウイルスは、ワクチンの有効性や症状に関して大きな違いはないとされていますが、感染力は18%高まっていると推計されています。

古瀬さんによりますと、このほかにも、まだ査読前の論文ではあるものの、ワクチンを接種していない人がオミクロン株に感染しても十分な免疫ができない可能性があるといった研究もあるということで、こうしたさまざまな要因が影響を与えている可能性があり、さらに分析が必要だということです。

感染減りきらず すぐ”第7波”の可能性も

では、今後の見通しについてはどうでしょうか。
古瀬さんは、この後の感染状況について、感染者数が減りきらないまま流行が長引いたり、すぐに“第7波”が始まったりする可能性もあるとしています。

仮にこのまま感染者数が減ったとしても、3月には再び卒業や入学、入社や異動、歓送迎会などの季節がやってくるからです。これまでの経験から、人と人との接触は確実に増えるとみられています。
“第6波”の感染者数が下がりきらないうちに、“第7波”が始まる可能性すらあるとのことでした。

「再び感染拡大が起きるという想定で備えておくことが大切だ。基本的な感染対策は変わらないし、ワクチンの追加接種を進めてほしい。特に、まだ1回目、2回目のワクチンを打っていない人はオミクロン株に感染してもいい免疫ができないと言われているので、いまからでも接種してほしい」(古瀬祐気さん)
また、注目する必要があるのは死者と重症者の数だといいます。
「子どもの感染が増えていることに注目が集まっているが、70代以上の感染者も増えていて、死者や重症者の数は今後も増え続ける可能性がある」(古瀬祐気さん)
厚生労働省クラスター対策班参与 古瀬祐気医師
オミクロン株の感染状況は日々変化しています。
また、新型コロナウイルスの変異はオミクロン株で止まった訳ではありません。
新たな変異ウイルスが登場するリスクもあります。

これまで国内では、5回もの流行の波を経験してきました。重症になった人や亡くなった人もいて、決して軽い被害ではありませんでしたが、それでも感染者数を減らし、医療体制のひっ迫にも対処してきました。

限られたデータの中から感染状況を的確に分析しながら、先を見据えた対策を取っていくことが重要です。

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科学文化部

三谷維摩

2009年入局。大阪出身です。徳島、金沢、大阪の各局を経て、2020年より科学文化部で医療担当。大阪局では医療だけでなく、幅広く学術や文化を取材しました。科学・文化の楽しさや研究の大切さを感じていただける記事を書きたいと思っています。

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