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花粉症とオミクロン株 よく似た症状 どう対応?

花粉症とオミクロン株 よく似た症状 どう対応?

2022.02.25

ことしも「花粉症」のシーズンがやってきました。

毎年、くしゃみや鼻水などに悩まされる人が多いのではないでしょうか。
「時間ができたら」、「症状が本格的に出てくれば」、医療機関を受診しようという人もいるかもしれません。

ところが、ことしはさらに注意が必要です。

新型コロナウイルスのオミクロン株は、花粉症と症状が似ているため見分けがつかないおそれがあるためです。

コロナ禍の花粉症、どう対応すればいいのでしょうか。

花粉症と似ているオミクロン株の症状

オミクロン株と花粉症は症状が似ているとして、ウェブサイトで注意を呼びかけているのは、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会です。

「鼻水、くしゃみ、鼻づまり、嗅覚障害、倦怠感といった花粉症の症状は、新型コロナウイルス感染症、特にオミクロン株と共通の症状です。花粉症の症状があると、ご自身がウイルスに感染しているかわかりにくくなってしまいます」(学会の呼びかけ文)

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会のウェブサイト

呼びかけについて、学会で新型コロナ対策チームの責任者を務める木村百合香医師に詳しく聞きました。

木村さんは「花粉症とオミクロン株は鑑別が難しい」と言います。

学会での新型コロナ対策チームの責任者 東京都保健医療公社 荏原病院 木村百合香医師

「花粉症の3大症状は、くしゃみ、鼻水、鼻づまりの鼻の症状です。ほかに代表的なものとしては、目のかゆみ、のどの痛み、のどのイガイガ感といった症状、せきがあります。さらに、軽い頭痛が出る方もいますし、けん怠感や耳のかゆみが出る人もいます」(木村百合香医師)

一方、オミクロン株に感染したときの症状は…

(HER-SYSデータ)
▽発熱     66.6%
▽せき     41.6%
▽全身けん怠感 22.5%
▽頭痛     21.1%など

(国立感染症研究所の疫学調査)
▽せき     45.1%
▽発熱     32.8%
▽のどの痛み  32.8%
▽鼻水     20.5%など

また、イギリスのキングス・カレッジ・ロンドンの研究者らで作る団体の調査では、▽鼻水が73%、▽頭痛が68%、▽けん怠感が64%、▽くしゃみが60%などとなっています。

オミクロン株の症状は人によって異なる可能性がありますが、花粉症とよく似ていることが分かります。

「鼻水、鼻づまり、くしゃみは花粉症とオミクロン株のどちらでも起こりうるものです。専門的には、花粉症では鼻の粘膜が白くなるのが典型的な所見だとされていますが、花粉症の初期では、粘膜の所見ははっきりと出ないことも少なくありません。検査なしに見分けるのは医師でも難しいのではないかと思います」(木村百合香医師)

このため、学会の呼びかけ文では、花粉症の症状が出てしまってからだとオミクロン株の症状と見分けがつきにくくなってしまうため、早めに花粉症の治療を始めてほしいと呼びかけています。

ことしの花粉の傾向は?

とはいえ、ことしもすでに花粉の飛散が始まっています。

環境省の「花粉情報サイト」によりますと、2月半ばに九州のほか、四国の一部、関東の一部などでスギ花粉の飛散が始まりました。

日本気象協会が公表している、ことし春の花粉の予想によりますと、ことしの花粉の飛散量は、東日本や東北を中心に前のシーズンよりもやや多いから非常に多いと見られる地域が多くなっています。

そして、2月中には多くの地域で花粉の飛散が見込まれています。

「例年、2月のはじめくらいから花粉の飛散が始まります。ただ、皆さん、症状が強くなってきて困らないと耳鼻咽喉科を受診しないというのが本音ではないかと思います。花粉の飛散のピークはだいたい3月上旬くらいになることが多く、そのくらいの時期に受診する人が多いと思います。例年、学会で早期の治療を呼びかけていますが、実際にはピークの時期に受診される方が多いです」(木村百合香医師)

花粉症シーズンとオミクロン株の流行が重なると・・・

医療の現場では、花粉症だと思って受診した人が、実は新型コロナウイルスに感染していたというケースもあると言います。

「例年どおりの花粉症の症状で、鼻水とくしゃみの症状があり、『いつもの薬をください』と受診した患者さんがいました。花粉症の薬を出しましたが、2日後に『のどの痛みが強くなってきた』ということで再受診され、コロナの検査で陽性だったことがありました。初期の症状は本当に鑑別がつかないものがあると、実感した症例です」(木村百合香医師)

木村百合香医師

オミクロン株を中心とした新型コロナウイルスの「第6波」は、2022年2月下旬の時点で、ピークを越えたとされていますが、感染者が多くいる状況はしばらく続くかもしれません。

ここに花粉の飛散が本格化すると、花粉症のピークとオミクロン株の流行が重なるおそれがあります。

オミクロン株と花粉症、重なるとどのような問題があるのでしょうか。

1.見分けがつかないことによる不安
オミクロン株の症状と花粉症は、医師でも見分けるのが簡単ではありません。
自分自身で判断するのはさらに難しくなります。

鼻水などの症状が出たとき、花粉症なら学校や仕事に行っても問題ありませんが、オミクロン株への感染が疑われるなら、外出は控えて医療機関を受診するべきです。

ところがその見分けがつかないと、困ってしまいます。

2.別の人に感染を広げてしまうリスク
新型コロナウイルスに感染しているのに、自分は花粉症だと思い込んでしまい、感染を広げてしまうおそれもあります。

特に、花粉症に加えてオミクロン株に感染した場合、花粉症の「くしゃみ」でウイルスを周りに広げてしまうかもしれません。
「くしゃみ」で発生する飛まつの量は、せきの10倍以上とされています。

3.新規感染のリスク
さらに、新型コロナウイルスに感染していなくても、花粉症の症状を放置すると感染リスクが高くなる可能性があるといいます。

花粉症の症状として、目や鼻のかゆみなどがあります。

学会では新型コロナウイルスは、ウイルスがついた手で目や鼻をこすってしまうと、感染リスクが高まると指摘しています。

「仮にオミクロン株に感染していても、花粉症の治療をしておくことで、周りに感染を広げにくくなることが考えられます。花粉症とオミクロン株の区別をつけるためにも、感染対策の意味でも、学会として、花粉症に対する早期の受診を勧めています」(木村百合香医師)

学会の呼びかけ文抜粋(一部加工)

また、学会では動画投稿サイトに解説動画も掲載しています。

日本耳鼻咽科頭頸部外科手術公式チャンネル(YouTube)

花粉症の症状が出る前に! 花粉症対策を

花粉症は、早く治療を始めれば症状を抑えることができることが分かっています。

治療の開始時期によって症状にどのような違いが出るのか、これまでに複数の研究が行われています。

このうち2005年に花粉症の患者200人余りを対象に行われた研究では、飛散前に治療を始めていた人たちのほうが、飛散が始まってから治療を始めた人と比べて、症状の重さを5段階で評価する指標が、おおむね1段階低かったということです。

また、別の研究になりますが、花粉の飛散が始まってすぐに治療を開始しても、飛散前から治療をするのと同じくらいの効果が期待できることも分かってきているということです。

「早期に治療をしておくと、飛散のピークを迎えるときに治療を開始するのと比べて、症状の抑制具合でよい効果が得られます。ピーク時に治療を開始しても、なかなか治療の効果が見えないこともありますが、早めに治療を始めておくと、そうした可能性は低く抑えられます」(木村百合香医師)

それでも 症状が出てしまったら?

花粉の飛散はすでに始まっています。すでに花粉症のような症状が出てしまったという人もいるかもしれません。

オミクロン株の感染か花粉症か判断できない症状が出てしまったときは、どうすればいいのでしょうか。

木村さんは、症状や自分自身の行動歴を慎重に確認して、不安があれば受診の前に相談してほしいと話しています。

木村百合香医師

「例年どおりの花粉症の症状が出ていて、特に熱が高いといった特徴がなかったり、周りに新型コロナウイルスに感染した人がいたというようなことがなければ、通常の花粉症として受診することで問題ないと思います。
一方、いつもは鼻水とくしゃみなのに、のどが痛い、熱が出ている、頭痛があるといった場合は、受診の前にあらかじめクリニックに伝えてほしいです。自分自身を守るためにも、周りの方を守るためにも、今シーズンは早めに、2月中に、耳鼻咽喉科を受診して、花粉症の治療をしてほしいと思います」(木村百合香医師)

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