STORY

ゲームの開発現場 のぞいてみたら

2021.12.10 :

コロナ禍の巣ごもり需要で、人気が高まるゲーム。

2020年の世界のゲームコンテンツの売り上げは、前の年に比べておよそ32%増加し、初めて20兆円を突破しました。

 

市場の拡大を受けて過熱しているのが、ゲームの開発競争。いま、そのグラフィックは現実と見間違えるほどまで進化しています。

圧倒的なリアリティーで、ゲーマーをとりこにする作品たち。

 

なかなか見ることの出来ない、ゲーム開発の裏側に迫ります。

人気シリーズ 最新作の舞台裏

ことし発売した、人気ホラーゲームシリーズの最新作。
バイオハザード ヴィレッジ
11月に開催された、この1年で優れたゲームを表彰するゲームの祭典「Golden Joystick Awards 2021」で、最優秀賞を含む4部門を受賞しました。

作品の特徴は、プレーヤーを恐怖に陥れるために追求した、圧倒的なリアリティーです。

今回、その開発の裏側を見せてもらうことができました。
こちらの画面。この会社が独自に開発した、「ゲームエンジン」と呼ばれるゲーム開発専用のソフトウエアを使って、ゲームに登場する部屋を作っています。

作業風景を見せてもらうと、部屋の片隅に置いてある本棚の中の本の並びまで、緻密に作り込んでいました。
ゲームエンジンの開発画面
小物や調度品は、ゲームのモデルとなった外国の村を訪れ、撮影した写真などから再現しているといいます。

さらに今回の作品では、新たにゲームの中の光を自然に描き出す最先端の技術を取り入れました。

波打つ水面に光が反射して揺らめく、こちらの画面。
ゲームエンジンの開発画面
反射する光の動きは、揺らめく水面に対する光の当たり方や角度に応じて、自動的に計算されたもの。

こうして、あたかも本当に水面に光が反射しているかのような映像を作り出します。

こだわりは音にも

こうしたリアリティーへのこだわりは、ゲームの音にもあらわれています。

案内されたのは、謎の小道具が至る所に置かれたスタジオ。
カプコン サウンドディレクター/フォーリーアーティストの鉢迫渉さん
「こちらはゲームに入れている効果音を収録する、フォーリーステージといわれる場所です」
案内してくれたのは、“フォーリーアーティスト”の鉢迫渉さん。
ゲームの効果音を作り出す、スペシャリストです。
スタジオの床は、コンクリートや石畳など複数の素材で出来ています。
キャラクターが様々なシチュエーションで歩くときの足音を収録するためです。

気になった小道具を使って、音を再現してもらいました。
特殊な形をした2本の刀は、こすりあわせることで、敵のキャラクターが爪を出すときの「シャキーン」という音を出します。

うん、聞き覚えのある音がする。

ちなみに効果音を出すために作られたこの刀、「音響効果刀」という名前がついているそうです。
お椀は何に使うかというと、木製の人形の腕をひねるときの音でした。
ポイントはお椀の中に建築現場などで使われるパテを貼り付けて、音の高さや大きさを調整することだそうです。
なぜか置いてあるセロリ。さすがにこれは関係ないような気がしたのですが・・・。
「セロリは、一般的に人の骨を折ったときの音に使いますね。2本まとめてねじると、なにかかじられているような音になります」
このホラーゲームシリーズでは、使用頻度が高いというセロリ。
これからゲームで骨を折る音が聞こえたときは、どんなシリアスな場面でもセロリが頭に浮かんでしまいそうです。
「ゲームの画面で見ている情報以上に、音で聞いている感覚には情報量が含まれています。例えば、あるものがどのくらいの大きさなのか、どのくらいの勢いなのかというのは、音からも伝わってくる。そういうところから、ゲーム全体で没入感が作られてくるのかなと思います」
なぜ、ここまでリアリティーのあるゲーム体験にこだわるのか。

シリーズの1作目から携わり、シリーズ全体のエグゼクティブ・プロデューサーを務める竹内潤さんは、ゲームのリアリティーを高めることで、国や地域を超えてあらゆる人がその世界に入り込めるようになるといいます。
カプコン 「バイオハザード」シリーズ エグゼクティブ・プロデューサー 竹内潤さん
「イラストやアニメのような表現は、地域によって異なります。表現によって受け入れられる地域もあれば、それを好まない地域もある。でも、実際の人間の見た目はどこにいってもそんなに変わらないように、映像を実写に近づけていくと、こうした地域性がどんどん薄らいでいきます。リアルであるということがゲームで遊ぶハードルを下げ、どこの地域の方でも受け入れてくれるようになる。そこをベースに考えて、リアリティーを高めているんです。なるべく違和感なく、どの国の方もプレーしていただけるようなクオリティーが非常に重要だと思っていて、常に力を入れています」

「ウマ娘」の会社も 動きにこだわり

ゲームの映像の質が上がっていくにつれて、キャラクターなどの動きにもリアリティーが求められ、ごまかしが効かなくなってきました。

こうした中で需要が高まっているのが、人の動きをCGとして取り込む「モーションキャプチャー」という技術です。

ゲームの進歩とともに、その技術や設備も進化を続けています。

今回、流行語大賞にもノミネートされた「ウマ娘」などで知られるゲーム会社が、新たなモーションキャプチャー専用のスタジオを来年にオープンする予定で準備を進めているということで、その最先端の設備を筆者が体験してきました。
スタジオに案内されると、まず目につくのが四方を取り囲むように設置されているおびただしい数のカメラ。
人の動きを読み取り、CGにする特殊な機能を備えたもので、その数は168台にものぼります。

ちなみに1台のお値段は・・・?
「ちょっと・・・目玉が飛び出るくらい・・・」
想像が膨らみます。

このスタジオで、どのような映像がつくれるのか。早速、専用のスーツに着替えて撮影に臨みました。
ぴちぴちですが、決してサイズが間違っているわけではありません。
無駄なたるみがあると、データを取る際の誤差につながるのです。
続いて、カメラが認識するマーカーを体の関節部分などに取り付けていきます。
その数、67個。

スタジオに入って体を動かしてみると、まったく同じ動きをする人型のCGモデルが画面にあらわれました。
指先の細かい動きまで、忠実に再現されています。
設置されたカメラの台数は、世界トップクラスというこのスタジオ。
死角を極力無くすことで、どんな状況の撮影でも精度の高いデータが取れるといいます。

ゲームは顔が大事!

この会社が追求しているのは、動きのリアリティーだけではありません。

次に案内された先には、黒い球体状の物体が。
「フェイススキャナー」
ことし導入した、人の顔をCGにするために作られた最先端の設備です。

実際の人間の顔をゲームのキャラクターとして登場させることで、より感情移入してもらおうというのが狙いです。
この設備で作られたCGの顔
こちらでも、筆者が体験。

球体の中心に座ると、67台の高性能カメラが、あらゆる方向から私の顔を狙っていました。
髪の毛は細かすぎてCGに出来ないので、キャップでまとめています
SF映画の世界に入り込んだみたいだなと思い、部屋全体が真っ暗になった次の瞬間・・・!
バシャバシャバシャバシャ!!!!
けたたましい音と共に一斉にフラッシュがたかれ、わずか2秒間のうちに何度もシャッターが切られました。

事前に「目をつぶらないで」と言われていたので、必死に目を開けて耐えました。

そして、細かい調整作業の末に出来上がったのがこちら。
念のためお伝えしておきますが、こちらはCGになった筆者の顔です。

疲れた目元や肌の凹凸まで、包み隠さず立体的に再現されています。本当にありがとうございます。
Cygames 「フェイススキャナー」担当者 遠藤嘉和さん
「人がコミュニケーションするとき、視野に入ってくる最大のものが顔や目ですから。そこに違和感があると、身体以上にCGだということがすぐにバレてしまいます。高精細なクオリティーの高いものをだすということが非常に大事です」
これまで、主にスマートフォン向けのゲームを開発してきたこちらの会社。
今後、こうした最先端の技術を駆使して、ゲーム機や高性能なパソコンで遊ぶハイクオリティーな映像のゲームを開発しようとしています。

取材を終えて

筆者がゲームを始めて、およそ25年。

新しいゲーム機が出る度に映像美に驚き、もうこれ以上は進化しないだろうと思っていたら、次世代機が出て再びその映像美に度肝を抜かれる、という幸せな人生でした。

しかし、ここ数年はさすがに進化が鈍ってきたのかなと思いきや、取材を進めてみると、まだまだ新しい技術、新しい知識を貪欲に取り入れて映像美を追求しているクリエーターたちの熱意を知ることが出来ました。

これからの更なる進化をゲーマーとして楽しみにしつつ、記者として取材し続けたいと思います。
取材の内容は、12月12日(日)午前7時からの「おはよう日本」の特集コーナーでお伝えします。

ご意見・情報をお寄せください

科学文化部記者

加川直央

学生時代はバンドに明け暮れ、就職活動で見事に全敗。

あまりに世間知らずだったことに愕然として逆方向に針が振れ、ギターをペンに持ち替えて記者を目指す。

Webメディアやデータジャーナリズムの台頭を目の当たりにする中、動画の可能性を感じて2015年にNHK入局。

初任地の京都では、漫画やアニメの原画、レトロゲームの保存と継承の問題について取材。ファミコンの開発責任者だったレジェンド、上村雅之さんにインタビューしたことが良き思い出。

科学文化部では、主に映画とITを担当。これまでに濱口竜介監督の演出論や、クリエイターを支援する”NFT”の特集などを制作。

ものづくりする人が楽しく暮らせる社会を目指して取材中。

メディアの未来と文化全般に関心があり、好きなものはSF小説とお笑い芸人のラジオとTwitterの炎上ウォッチ。

隙あらばゲームをしています。現在の推しバンドは家主。

加川直央記者の記事一覧へ

おはよう日本 ディレクター

田中志穂

2018年からおはよう日本ディレクター。eスポーツやペットと高齢者の話題などを手がける。RPGゲームが得意。少年漫画が好き。

田中志穂記者の記事一覧へ

記事の内容は作成当時のものです

一覧に戻る