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新型コロナウイルス検査の知識

2021.12.28 :

新型コロナウイルスの新たな変異ウイルス、オミクロン株の国内での感染拡大が懸念されています。

早期発見のために重要となるのが検査です。

現在、現場で使われている検査法は、主に「PCR検査」、「抗原定量検査」、「抗原定性検査」の3種類ですが、適切な場面で適切な検査をうまく活用していくことが重要になっています。

それぞれの検査法の特徴は何なのか、オミクロン株による影響はあるのか、取材しました。

3つのタイプの検査法

新型コロナウイルスの検査にはそれぞれ次のような特徴があります。

【PCR検査】
PCR検査は、ウイルスの遺伝子の一部を増幅させて検出する方法です。最も信頼性が高い検査法とされ、研究や診断の際にも標準的な方法となっています。
PCR検査の様子
国や学会などが作成した「病原体検査の指針」などによりますと、検査にかかる時間は1時間から3時間とされています。

検査は主に▼鼻やのどの奥の粘膜▼だ液などで行い、無症状の人にも使うことができます。

PCR検査を行う際には専門の機器や技術が必要とされ、当初は、検査ができる施設が少ないことや結果が出るまでに時間がかかることなどから検査体制の拡充が課題となりました。

その後、大量の検体を処理できる機器や操作が簡単な機器も使われるようになり、行政や医療機関での検査だけでなく、民間の検査会社などでも検査が受けられるようになっています。厚生労働省の発表では12月下旬時点で、▽公費で行われる行政検査は1日に約28万件、▽民間検査会社での自費検査では1日に約10万件の検査能力があるとされています。
郵送方式のPCR検査キット
自費検査では、検査センターで検体を採る方式や、自分でだ液を採って検査会社に送る方式などがあり、結果はメールや郵送などで送られてくる場合が多いということです。
国の資料によると費用は3千円から数万円だということです。
  
PCR検査と同様に遺伝子の一部を増幅させる検査(核酸増幅法)には、このほかにも「LAMP法」と呼ばれる検査などがあり、PCR検査よりは感度は落ちるものの精度は高いとされ、国の「ワクチン・検査パッケージ制度」などでは、PCR検査と同様に推奨されています。
検査にかかる時間は1時間で、PCR検査に比べて短いとされています。

【抗原定量検査】
抗原定量検査は、ウイルスに特有のたんぱく質を検出する検査法です。
PCR検査と同じく、主に▼鼻やのどの奥の粘膜や▼だ液などで検査を行い、無症状の人にも使うことができます。
検査には専用の装置が必要で、結果にかかる時間は30分から40分とされています。
抗原定量検査の装置
PCR検査よりは感度は落ちるものの精度は高く、簡易な核酸検出検査と同レベルとされています。
抗原定量検査も国の「ワクチン・検査パッケージ制度」などでは、PCR検査と同様に推奨されています。

結果が比較的早く分かることやPCR検査に比べて検体の処理がしやすいことなどから、去年の夏から主に空港検疫で使われています。東京オリンピック・パラリンピックの選手団への陰性確認のための検査でも使われました。

自費での検査を受け付けている会社もあるものの、PCR検査よりは少ないということです。国の資料では費用は数千円から1万円程度となっています。

【抗原定性検査】
ウイルスに特有のたんぱく質が含まれているかどうかを判別する検査です。

抗原「定量」検査と間違えやすい名称ですが、「定性」検査は陰性か陽性かだけを判別するもので、専用の装置を使うこと無く、簡易キットを使って自分で検査をすることができます。結果も30分程度で分かります。
抗原定性検査の検査キット
ただ、ウイルスの量が少ないと精度が下がるとされ、無症状の人には推奨されていません。また、唾液では検査できず、自分で検査する場合は鼻の粘膜を綿棒で採取して行います。

PCR検査や抗原定量検査に比べて精度は下がるものの、手軽に何度も検査が出来ることなどから、ほかに検査ができない場合や、施設の入所者などに迅速に幅広く検査を行う必要がある場合など、状況に応じた活用が見込まれています。

2021年9月からは、調剤薬局でも販売が認められ、1回分につき数千円で市販されています。ただ、国の承認が得られていない「研究用」の検査キットがドラッグストアやネット通販サイトなどで販売されていることがあり、国は新型コロナに感染しているかどうかを検査する場合は「体外診断用医薬品」となっている検査キットを選ぶよう呼びかけています。

オミクロン株はきちんと検査できるのか

オミクロン株は、遺伝子にこれまでよりも多い変異が起こっています。
それぞれの検査は、オミクロン株でもきちんと検出できるのでしょうか。
【PCR検査】
PCR検査では新型コロナウイルスのさまざまな遺伝子を検出するために試薬を使い分けています。そして、1つの遺伝子だけをターゲットとするのではなく、複数の遺伝子を検出することで精度を高めています。

試薬の中には、オミクロン株では一部、反応しなくなったものもあるということですが、国立感染症研究所では、「オミクロン株は国内で使用される新型コロナの検査キットで検出可能だと考えられる」としていて、国内で主に使われているPCR検査の試薬はオミクロン株であっても検出できるということです。

ただ、2021年12月時点では、オミクロン株かどうかをPCR検査で、直接判別することはできません。

オミクロン株かどうかを調べるためには「ゲノム解析」が必要ですが、ゲノム解析には数日かかかるため、現在、国立感染症研究所などがオミクロン株かどうかをPCR検査で直接判別できる試薬の開発を進めています。
また、12月時点では、国内のほとんどがデルタ株のため、デルタ株を見つけ出すための試薬を活用して、デルタ株ではないウイルスが見つかった場合、そのウイルスについて改めてゲノム解析でオミクロン株かどうかを調べるという方法でスクリーニングが行われています。
【抗原定量検査】
抗原定量検査の装置や試薬を開発した検査会社によりますと、これまでの実験データや遺伝子の変異の情報などから、抗原定量検査でターゲットとしているたんぱく質は、オミクロン株でも検出が可能だということです。
会社では、オミクロン株のウイルスが入手でき次第、実際に検証する予定だということです。
【抗原定性検査】
抗原定性検査も定量検査と同じたんぱく質をターゲットとしているということで、WHOではオミクロン株でも検出性能に影響が出るという報告はないとしています。

状況に合わせて検査の有効活用を

2021日12月24日現在、オミクロン株の市中感染とみられる(渡航歴がない)感染者が確認されています。オミクロン株は感染が広がるのが非常に早いことが、海外からの報告で分かってきています。

新型コロナの検査は、引き続き対策の重要な柱となっています。

政府もオミクロン株の感染拡大が懸念される地域などで、希望する人が無症状でも無料で検査を受けられるようにするなど、検査体制の拡充をすすめています。

こうした状況では、それぞれの検査の特徴に合わせて、状況に応じてうまく活用していくことが求められています。

例えば、オミクロン株の水際対策の最前線となっている空港検疫では、抗原定量検査が使われています。PCR検査の方が精度は高いとされていますが、どうして抗原定量検査を使っているのでしょうか。
抗原定量検査は空港検疫で使われている
これについて、厚生労働省の専門家会合の脇田隆字座長は12月16日の会見で次のように説明しました。
厚生労働省専門家会合 脇田隆字座長
厚生労働省専門家会合 脇田隆字 座長
「抗原定量検査はPCR検査にかなり近い感度・精度があることに加えて、検体の取り回しが容易で、検査時間も非常に短く済む。空港検疫では大勢の人を待たせることを避ける必要があり、そうしたことも判断をして、どんな検査が適しているかを考えるべきだ。短時間でできるPCR検査もあるが、今は、機械が大きかったり、検体の取り扱いに柔軟性を持って対応できるものがない。そういったものができれば今後、PCR検査に切りかえていくということも考えられる」
その上で、脇田座長は、仮にPCR検査を使っても感度は8割程度にとどまり、すべてを検査で見つけ出すのは難しいとして、水際対策は、検疫での検査だけに頼るのではなく、出国前にも検査するよう相手国に求めること、入国してから健康観察を行うこと、必要な人は6日間や10日間の停留措置を行うことなど、多重的な体制で進められていると強調しました。

抗原定性検査も有効活用できる

また、PCR検査や抗原「定量」検査に比べて精度が下がるとされる抗原「定性」検査もうまく使うことで、感染拡大の防止に役立つと期待されています。

臨床検査の専門家たちで作るグループは、抗原定性検査の検査キットでも、検査の頻度を高めれば感染拡大を防ぐのに役立つという分析結果を紹介しました。特に、喉の違和感や鼻水などかぜのような軽い体調不良が出た時に積極的にキットを使用することで、感染を効率よく見つけ出すことができるということです。これは特別な装置を使わずにその場で検査ができる抗原定性検査の検査キットならではの活用法です。

グループの1人で東海大学の宮地勇人教授は、使える検査資源を効率よく有効に使うことが重要だと指摘しています。
臨床検査が専門 東海大学 宮地勇人教授
東海大学 宮地勇人教授
「家族が感染の疑いが出たときに、簡易キットで毎日、自分で検査できれば、家庭内感染を最小限に抑えることができる。イギリスでは簡易キットを週に2回、無料で使えるほか、アメリカもオミクロン株の感染拡大にあわせて簡易キットを無料配付する対策を打ち出した。ワクチンを打っていても検査を課している国もあり、欧米ではオミクロン株に対して厳重な検査体制で臨んでいるのは間違いない。日本もPCR検査だけでなく、抗原定量検査、抗原検査キットと、今使える検査資源を効率よく有効に使い、誰もが気軽に検査を受けられる体制作りを急ぐべきだ」
新型コロナウイルスが初めてWHOに報告されたのは2019年の年末でした。
それから2年。
当初は検査はPCR検査しか無く、治療もすべてが手探りで行われていましたが、今では、複数の検査法が実用化され、ワクチンが登場し、飲み薬の実用化も進められています。
検査で早期診断ができれば早期治療につながることが期待されています。
検査をうまく活用できるかどうかが、コロナ禍を乗り切る1つのカギとなっています。

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科学文化部

安土直輝

科学文化部の医療取材担当。新型コロナウイルスの検査や治療薬などの取材のほか、看護師と保健師の資格をいかして(ペーパーですが)コロナ病棟や保健所の密着取材も。今後も、医療に関わる様々な立場の方々を取材していきたいと考えている。


NHKには2011年に入局。初任地の長崎で佐世保の米軍基地と原爆の取材を担当、神戸では再生医療から防災、行政まで幅広く取材してきた。

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記事の内容は作成当時のものです

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