COLUMN

中国・武漢の新型コロナウイルス 注意点は?(2月6日午後6時更新)

2020.01.09 :

中国・湖北省の武漢を中心に患者が増えている新型コロナウイルスによる肺炎。

日本でも患者が確認されています。

連日のように増えていく患者の数に不安を感じる人も多いと思いますが、本当のところはどうなのでしょうか?

注意すべきポイントも含めてまとめました。
(2月6日午後6時更新)

中国・武漢の肺炎 

中国当局の会見(1月22日)
新型のコロナウイルスによる肺炎。
中国を中心に患者の拡大が続いています。

※新型コロナウイルス関連の最新のニュースはこちらで。
 ◆NHK科学文化部ツイッター(@nhk_kabun
 ◆NHK NEWS WEB  「特設サイト 新型ウイルス肺炎

コロナウイルスってどんなウイルス?

新型コロナウイルス
新型の「コロナウイルス」とは、いったいどんなウイルスなのでしょうか?

コロナウイルスは電子顕微鏡で見ると丸くてぎざぎざした形が太陽の「コロナ(王冠の意味)」のように見えることから名付けられました。
人にも動物にも感染しますが、人の間で主に流行するのは4種類。
いずれもいわゆる「かぜ」のウイルスです。

国立感染症研究所によりますと、せきや発熱、鼻水などが出る一般的な「かぜ」が流行している時期にはその35%程度はコロナウイルスが原因とみられるということです。

新型のコロナウイルスはまだ、登場したばかりということで、詳しい情報が少なく分からないことが少なくありません。

これまでも 新型コロナウイルスが

新型ウイルスの性質を推測する際には、過去の事例が参考になります。
2000年以降、登場した新型コロナウイルスは2種類。
「SARS」(サーズ)と「MERS」(マーズ)のウイルスです。

2003年に確認「SARS」

2003年に感染が広がった新型肺炎「SARS」。
WHOの報告によると全世界で死亡した人は800人近く、致死率はおよそ10%に上るとされています。
ただ、理由はよく分かっていませんが、2005年以降は、人での感染は確認されていないということです。
SARSのウイルスはもともとコウモリのウイルスだったと考えられています。

中東で確認「MERS」

2012年にサウジアラビアで初めて確認された「MERS」。
ヒトコブラクダが持っていたコロナウイルスが人に広がったと考えられています。
中東を中心に韓国でも感染が広がり、去年9月末の時点でおよそ2500人が感染し、そのうち少なくとも850人が死亡したとされています。
高齢者や持病のある人が重症化しやすいと考えられるということです。

新型のコロナウイルスも動物から?

1月1日 中国・武漢の海鮮市場
SARSもMERSも元は動物のウイルスです。
動物のウイルスは通常、種が異なるヒトには簡単にはうつりません。
ところが遺伝子が変異すると人にも感染しやすくなります。
これが「新型」のウイルスです。

今回の新型コロナウイルスは当初、中国・湖北省の武漢にある「海鮮市場」に関係する人たちの間で感染が広がったとみられています。
この市場では海産物や鶏肉などのほかにコウモリやネズミなどの野生動物も売られていたということです。
中国・広州 ネズミ料理が紹介された看板
今後、詳しい調査は必要ですが、新型コロナウイルスも野生動物から人に感染した可能性が考えられています。
ただ、その後、この市場に行ったことのない患者が増えてきました。
動物から感染するのでは無く、人間の患者から別の人に感染する「ヒトからヒト」に感染する性質をウイルスが獲得したともみられています。

感染力は?

では、今回の新型コロナウイルス、感染力はどうなのでしょうか。

新型コロナウイルスは主にせきやくしゃみなどで飛び散る飛まつや、直接的な接触で感染するとみられています。
中国保健当局専門家チームの会見
感染力の目安として、WHOは1月23日の時点で、患者1人が別の人に感染させる数を1点4人から2点5人と推測されると発表しました。

また、1月30日までに中国の疾病予防センターなどのグループが公表した調査結果でも2点2人とされています。

この数値は、SARSでは1人以下、インフルエンザは2人から3人、はしかは12人から18人とされています。

こうした数値は今後の感染者の情報によって変わる可能性がありますが、今のところ、インフルエンザと同じぐらいの感染力です。

また、中国の保健当局は、潜伏期間中に感染を広げるおそれを指摘しました。
北海道大学の研究グループは2月4日、患者の2人に1人が、症状が出ていない潜伏期間中の患者から感染した可能性があるという分析結果を発表しています。

ただ、症状が無い段階で、どの程度、人に感染させるおそれがあるのか詳しいことは分かっていません。WHOも症状が無い段階で人にうつるとしても限定的なケースの可能性があるとして、さらに調査が必要だとしています。

今後、ウイルスの性質が変化するおそれもあることから、引き続き、感染力を注意深く調べていく必要があります。

WHOが緊急事態宣言

WHOの会見 スイス・ジュネーブ
こうした中、WHO=世界保健機関は「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を1月31日に宣言しました。

2月6日現在で、感染のほとんどは中国本土で起きていますが、今後、医療態勢のぜい弱な国にも感染が広がる恐れがあることなどから、国際社会全体で警戒感を高め、対策を強める必要があると、WHOが示しました。

症状は?

今回のウイルス、発症した場合、どういった症状が出るのか。

WHO=世界保健機関などによると今回の新型コロナウイルスに感染し、発症した際の主な症状は
▼発熱、
▼せき、
▼息苦しさなど呼吸器症状、
▼筋肉痛
▼倦怠感などが報告されているということです。

また、重症化した場合、肺炎や呼吸困難を引き起こしたり、腎臓の機能が低下したりすることがあるということです。

症状の重さについて、WHOはほとんどの人は軽い症状ですが、およそ20%で重症化するとみられるとしています。
中国の保健当局も、一部の患者は体温がほぼ平熱であるなど、症状が軽い患者が比較的多いとしています。

症状が軽いことは、患者にとっていいことですが、感染の有無の見分けがつきにくいため、患者を減らす対策をとることが難しくなります。

また、感染してから症状が出るまでの潜伏期間については、中国の保健当局は、比較的症状が軽い患者では、およそ10日前後で、最も短いと1日、最長で14日だとしています。
また、患者の年齢については、WHOによりますと、これまでのところ主に成人だということですが、小さな子どもから高齢者まで幅広い世代で患者が報告されているということです。

WHOなどによりますと、死亡した患者は高血圧や糖尿病、それに心臓や血管の病気といった免疫を低下させるような持病があった人が多かったということです。

発症した患者の内、死亡した人の割合を示す致死率については、中国の保健当局のデータをもとに計算すると、中国ではおよそ2%ですが、感染拡大が最も深刻な湖北省・武漢ではおよそ5%となっています。中国以外では1%未満とみられます。

この違いは、感染の広がりが大きく異なることと、特に武漢では多くの患者が出たため医療機関が十分に対応しきれない状況になったことなどが影響しているものとみられます。ちなみにSARSは致死率が10%ほどでした。

しかし、仮に致死率が低くても警戒は必要で、感染を広げない対策が引き続き必要です。

予防は?

コロナウイルスはインフルエンザやかぜと同様にせきやくしゃみなどの飛まつで感染します。

WHOが推奨している予防法や感染を広げない対策は、一般的な感染症対策と同様に

▼手を洗うことと
▼せきエチケットです。
具体的には
▼石けんと流水で頻繁に手洗いをするか、アルコール消毒薬で手をふくこと。
手洗いは、少なくとも20秒つづけると効果的だといわれています。

また、ウイルスは目や口、それに鼻などから入ってきます。手をしっかり洗うまでは顔を触らないようにしてください。

▼せきエチケットの徹底。
 つまり、せきやくしゃみをする時には口を覆うことです。
 このとき 手のひらで口を覆うのでは無くティッシュやひじを使って抑えることが重要です。

 手のひらを使うと、手にウイルスがついてしまい、ドアノブを触るなどして感染を広げるおそれがあります。
 日本ではマスクの利用が一般的ですが、せきエチケットで正しくマスクをつけることは効果的とされています。

 また、何も対策をしないでせきやくしゃみをすると、ウイルスを含んだ唾液などのしぶきは
 1メートルから2メートル程度まで飛ぶといわれています。

せきエチケットは感染を広げないために非常に重要です。

マスクの着用について

感染の予防になると考えられ、日本でも品薄の状況が続いているのがマスクです。WHOは、マスクの利用についてのアドバイスをウェブページに掲載しています。

それによりますと、まず、新型コロナウイルスはせきやくしゃみなどで飛び散る飛まつを通じて感染すると考えられることから、せきやくしゃみなどの症状がある人がつけることで、感染拡大の予防策の1つになるとしています。

一方で、まったく症状がない人についてはマスクを着用することで予防ができるという科学的な根拠はないとして、症状が無い場合はマスクの着用は必要ないとしました。

ただ、専門家によれば、一般的に飛まつが直接、口や鼻に入らないためには、市販されている「サージカルマスク」をするのが効果があるとされているということです。

また、ウイルスが含まれた飛まつが周囲の物に付着し、そこを別の人が触って、その手で口や鼻を触ったり、 目をこすったりすることで感染するケースがあるということで、口や鼻を触る機会をできるだけ少なくする意味でマスクは有効だとする指摘もあります。

治療やワクチンは?

新型コロナウイルスは、すでに感染した人以外は誰もこのウイルスに対する免疫を持っていないと考えられています。

新型コロナウイルスに対してはインフルエンザのようにワクチンや特効薬はありません。
このため発症した場合、症状に応じた治療、いわゆる対症療法が行われます。

例えば、呼吸困難の場合には酸素吸入を行ったり、重い場合は人工呼吸器を付けたりするほか、脱水などで点滴を行ったり、細菌が感染して肺炎が悪化するのを防ぐため、抗生物質を投与したりと症状にあわせてさまざまな治療を組み合わせて対処します。

国立感染症研究所によりますと、こうした治療を行っている間に患者自身が免疫を獲得し、ウイルスが排出されるのを待つということです。

今回のワクチンや治療薬の開発も始められています。
ウイルスは、人の細胞の表面にある「受容体」と呼ばれるたんぱく質に結合することで感染しますが、中国の疾病予防センターのグループは、新型コロナウイルスが17年前に流行したSARSのウイルスと同じ「受容体」に結合すると報告しました。

研究グループは、SARSのために開発が進められてきた治療薬やワクチンが使える可能性があるとしています。

また、アメリカのCDC=疾病対策センターなどの研究グループは、新型コロナウイルスによる肺炎になった患者に、エボラ出血熱の治療薬として開発が進められてきた抗ウイルス薬を投与したところ、翌日以降、酸素吸入の必要がなくなり、発熱も治まるなど、症状が改善したとしています。

さらに、タイの保健省は、中国人の患者に対し、インフルエンザの治療薬とエイズの発症を抑える薬を組み合わせて投与したところ、コロナウイルスが検出されなくなり、症状に改善が見られたと発表しています。

日本でも、国立国際医療研究センターのグループが、1月30日に肺炎と診断された中国人の患者についてエイズの発症を抑える薬を投与しました。この患者は一時、軽い呼吸困難の症状が出ていましたが、2月3日には熱は37度まで下がり、けん怠感などは改善傾向で、呼吸も改善したということです。

ただ、これらの報告は、まだ初期の段階で、いずれも治療方法としては確立しておらず、実際に広く患者に使えるようにするにはさらなる検討が必要です。

今後の情報に注意を

新型のコロナウイルスについては今後、どのように推移するのかなどわからないことが多くあります。
ただ、過去のさまざまな感染症の経験からみて、SARSと比べて深刻な症状の患者の割合は少ないとみられることや、軽症の患者が多いとウイルスを閉じ込めることが難しくなるため、感染が広がりやすいことなど分かってきていることも少なくありません。

また、新型コロナウイルスに対しては、手洗いやせきエチケット、人混みを避けるなど、身近な対策をしっかりと習慣づけることが感染を減らしていくのに効果的だと多くの専門家が指摘しています。

「分かっていないこと」にばかり目を向けて不安になり過ぎることなく、分かっている対策をしっかりととる、そして分かっていないことを冷静に調べていくことが、「正しくおそれる」ことにつながります。

新たなことが明らかになりしだい、情報を更新していきたいと思います。

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科学文化部記者

石坂冴絵

2008年入局、初任地の京都局でiPS細胞などを取材。

千葉局を経て、2014年から科学文化部で医療担当。

大村智さんがノーベル医学・生理学賞を受賞した際には、スウェーデン・ストックホルムで授賞式などを取材。

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科学文化部記者

藤ノ木優

2009年入局。福島局、札幌局などで原発事故の農業や環境への影響や、大学の科学研究、地域医療などを取材。

現在、科学・文化部で感染症などの医療取材を担当。

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