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文化
2019.05.21
“鳥は羽毛の翼で空を飛ぶ”
一見、当たり前のようですが、実は、鳥の祖先にあたる恐竜の中に、コウモリのような翼を持っていたものがいたことを示す化石が、中国で見つかりました。
羽毛ではなく、コウモリのような翼の鳥が現れた可能性はあったのでしょうか。
この恐竜の化石は、おととし、中国・遼寧省のおよそ1億6300万年前の地層から、全身の骨格がほぼ完全な状態で見つかりました。
体長は32センチとハトほどの大きさで、前足の途中から「尖筆状突起」と呼ばれる細長い骨が伸び、この骨と指の骨との間から脇にかけて「飛膜」と呼ばれる膜状の翼の痕跡がありました。
さらに、化石の首から肩にかけて羽毛が生えていた痕跡もあり、全身が羽毛で覆われる一方で、コウモリのような膜の翼を持ち、ムササビのように滑空していたと考えられています。
このため、この恐竜はラテン語で“飛膜と羽毛の両方を持ち、前足が長い”という意味の「アンボプテリクス・ロンギブラキウム」と名付けられました。
「アンボプテリクス・ロンギブラキウム」の滑空の様子を研究グループが想像した図(CG)がこちら。
「恐竜は、さまざまな飛び方を経て最終的に羽毛の翼が残ったとみられ、鳥類への進化の過程はより複雑だったと考えられる」
実は、膜状の翼を持つ恐竜がいたのではないかという話は、4年前にも大きな話題となっていました。
2015年に中国・河北省で見つかった「イー・チー」と呼ばれる新種の恐竜の化石に、膜のような翼の痕跡があったのです。
この時は恐竜の体の一部しか残っていなかったため、評価が分かれたままとなっていましたが、今回はほぼ完全な状態で見つかり、進化を巡る研究に一石を投じています。
では、なぜ現在の鳥は羽毛の翼ばかりなのでしょうか。
コウモリのような翼を持つ恐竜は、その後どうなったのでしょうか。
恐竜の進化に詳しい国立科学博物館標本資料センターの真鍋真センター長に聞くと、こんな想像を聞かせてくれました。
「膜の翼は羽毛よりも重いため、シェアを伸ばすことができなかったのだろう。一方で、コウモリやムササビなどの『ほ乳類』も膜の翼なので、空を飛ぼうと思ったときに、膜の翼は比較的、獲得しやすい方法なのかもしれない」
たしかに、コウモリをはじめ、空を飛ぶ「ほ乳類」は膜の翼。プテラノドンなどの翼竜も膜の翼です。
羽毛の翼という優れた飛び方が登場しなければ、いま、コウモリのような翼の鳥が空を飛んでいたのかもしれません。
進化の不思議を感じさせる今回の研究成果は、イギリスの科学雑誌「ネイチャー」に掲載されています。
※掲載された論文はこちらから(※NHKサイトを離れます)
https://www.nature.com/articles/s41586-019-1137-z
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