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科学
2019.04.06
名前を呼んでもそっけないそぶりを見せることの多い、ネコ。
ネコ好きの人の多くは「ネコは自分の名前がわかる」と言いますが、実際の所はどうなのでしょうか。
そんな、ちょっと気になる研究結果がまとまりました。
国内で飼われているネコはおよそ965万匹。(ペットフード協会調べ)。
イヌと並んで、もっとも身近な動物の1つです。
でも、コミュニケーション能力がどれだけあるかは、イヌほど研究が進んでいません。
自分の名前が分かるのか、音に反応しているだけなのか、実はよく分かっていなかったんです。
このため、上智大学などの研究グループは、飼いネコや猫カフェで飼われているネコ、のべ67匹を対象に、ある実験を行いました。
最初の実験に登場したのは、11匹の飼いネコとそれぞれの飼い主。
長さやアクセントが名前と同じ4種類の単語を順番に呼びかけてもらった上で、最後に名前を呼び、反応の違いを観察しました。
すると、9匹は名前以外の呼びかけに徐々に反応しなくなりましたが、最後に名前を呼ばれると、耳や頭を動かすなど大きく反応しました。
次の実験では、20匹の飼いネコに対し、飼い主ではない人に同じように呼びかけてもらうと、13匹が名前に反応しました。
飼い主の声でなくても分かるようです。
※こちらが実際の実験の様子をとらえた動画。
では、自分の名前を分かっているのか。
最後に、ほかのネコの名前と聞き分けられるかを調べました。
家庭で複数飼いされているネコ6匹に、別のネコの名前を4回、呼びかけたあと、自分の名前を呼ぶと、そのすべてが自分の名前に反応しました。
このため研究グループは、ネコが、ほかの単語やほかのネコの名前と自分の名前を聞き分けていると結論づけています。
でも、気になる実験結果がありました。
猫カフェのネコで自分の名前に反応したのは、9匹中3匹にとどまったのです。
猫カフェのネコは、別の名前に反応してもえさをもらえたりするため、自分の名前への反応が薄いのではないか。
つまり、ネコは自分の名前とえさをもらったりなでられたりする行為を結びつけていると見られ、名前という概念を理解しているかまでは分からないというのです。
ネコは、およそ9500年前にヒトと生活をするようになったと言われていて、上智大学の齋藤慈子准教授は「ネコがヒトとのコミュニケーション能力をどう獲得したのか、今後、どう変わっていくのか、知る糸口になる」と話しています。
この実験結果は、イギリスの科学雑誌「サイエンティフィック・リポーツ」の電子版に掲載されています。
※掲載された論文はこちらから(※NHKサイトを離れます)
https://www.nature.com/articles/s41598-019-40616-4