福島第一原子力発電所2号機で13日、デブリとみられる堆積物に直接触れる調査が初めて行われ、東京電力は14日、調査で撮影した動画を公開しました。
調査では、堆積物の状態によって動かせないものもあることがわかり、東京電力は今後、取り出し方の具体的な検討を進めていくことにしています。
燃料デブリの調査


調査は午後3時すぎに終わり、東京電力によりますと、装置の故障など大きなトラブルはなく、堆積物に触れることができたということです。
14日、東京電力は、調査の様子を6分51秒にまとめた動画を公開しました。
こちらが、公開された動画です。
格納容器には、燃料デブリを冷やすための水が注がれていて、画面でも底の部分に向かって水がしたたり落ちています。
小石状の堆積物は無数に散らばっていて、複数を寄せ集めてまとめて持ち上げる様子も映っています(30秒過ぎ)。
また、比較的大きい8センチ程の塊も、装置で挟むと容易に持ち上がることが分かります(2分15秒過ぎ、2分30秒過ぎ、3分15秒過ぎ)。
一方、調査地点には小石状のもののほかに、冷えた溶岩のように見える堆積物もありましたが、底の部分に固着しているのか、装置でつかんでも持ち上げられません(50秒過ぎ、4分30秒過ぎ、5分10秒過ぎ)。
装置は2キロほどのものまで持ち上げられる設計ですが、平たい堆積物は動かすことができず、つかもうとした跡がつかないことから比較的硬い可能性があるということです。
燃料デブリとみられる堆積物は、格納容器の中のやや上の部分にある、作業員が歩くための足場でも見つかりました。
動画では、底の部分と同じように小石状のものを持ち上げているほか、平たい堆積物を挟んだものの、ひっくり返るように落下し、すぐにつかみ直す様子も映っていました。
どんな装置でどう触れる?




調査から何がわかった?

専門家「次のステップに行けた」

一方で、13日の調査はあくまで廃炉の一歩で、今後の詳しい調査が重要だとして、「今回は表面を触っただけだが、どれくらいの量がどのように広がっているのかなどを分析していくことが必要だ」としています。
そのうえで、宮野客員教授は「燃料デブリの取り出しは、世界でも初めてのことで、超えなければならない課題は多い。調査で得られた情報はしっかり公開し、さまざまな知見を集め、議論しながら作業を進めてほしい」と話しました。
前例のないデブリ取り出し
旧ソビエトで1986年に起きたチェルノブイリ原発の事故では、原子炉建屋に核燃料およそ170トンが溶けてコンクリートなどと混ざり合い燃料デブリとなって残されているみられますが、「石棺」と呼ばれるコンクリートの構造物で覆うなどしてデブリの取り出しは行われていません。
また、アメリカペンシルベニア州で40年前に起きたスリーマイル島原発事故では、カメラを使った原子炉内部の調査などを経て事故の6年後に燃料デブリの取り出しを始めました。
大きな損傷を免れた原子炉を水で満たすことで放射線を遮り、水中でデブリを砕いて専用の容器に詰める方法で取り出し作業が進められました。

さらに、事故で損傷した格納容器の修理が難しいことなどから、格納容器は水で満たさず、水位は低いままで空気中で取り出す「気中工法」と呼ばれる方法を軸に進めるとしています。
しかし世界でも前例がなく、放射性物質の飛散を防ぐ対策や放射線量が高い環境で安全対策の徹底を図ることが必要で、具体的な計画を立てられるかが課題になります。
これまでの調査と各号機の状況は


2号機では、今回の調査を踏まえて、来年度後半には別の装置を使ってさらに詳しく内部を調べ、少量の堆積物をサンプルとして取り出すことを計画しています。
また3号機では、溶け落ちた核燃料を冷やす水が、格納容器の底からおよそ6メートルと、ほかの号機に比べて高い位置までたまっています。
このためおととし7月、魚のマンボウに見立てた水中を進むロボットを原子炉の真下に当たる範囲に投入し、内部の状況を調べました。
その結果、事故の前にはなかった岩のような黒い塊などが堆積しているのが見つかり、東京電力は燃料デブリの可能性が高いと評価しました。
3号機の燃料デブリ取り出しに向けては、この水をどうするかが課題になっていて、今のところ、サンプルを取り出す調査は予定されていません。
また1号機は、おととし3月に行われた調査で砂のような堆積物は見つかりましたが、燃料デブリとみられるものは確認できておらず、来年度、改めて調査が行われ、少量の堆積物のサンプルを取り出すことを目指します。
実際の取り出しは2021年からの計画

デブリの取り出しに向けては、来年度、数か所から、2020年度、数十か所からデブリのサンプルを取り出し、そのうえで2021年に小規模の取り出しを始める計画を示しています。
また取り出す方法については、格納容器内の水位は低いままで空気中で取り出す「気中工法」と呼ばれる方法を軸として、小規模なものから始めるとしています。
福島第一原発では、1号機と3号機でも格納容器内部の調査が行われていますが、デブリとみられる堆積物が確認され、サンプリングが予定されているのは2号機だけで、調査や検討が最も進んでいます。
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