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新たな経済連携『IPEF』って?

来週22日から24日まで、アメリカのバイデン大統領が就任後初めて日本を訪れます。これにあわせ、アメリカ政府は、アメリカが主導する新たな経済連携「IPEF(アイペフ)=インド太平洋経済枠組み」の立ち上げに向けた宣言をする方向で調整が進められています。 新たな経済連携って何なのか、アメリカや日本の本音は? 経済部で通商政策を取材する山元康司記者、教えて!

そもそもIPEFって?

山元記者

初めて耳にする人も多いと思います。

「IPEF=インド太平洋経済枠組み」とは、「Indo-Pacific Economic Framework」の頭文字をつなげたものです。

アメリカのバイデン大統領が去年10月、新たな経済連携の枠組みを立ち上げようと東アジア首脳会議で提唱したのが始まりです。

アルファベットを組み合わせたこういう国際機関とかの名前、苦手だなあ。

山元記者

そうですよね。分かりにくいですよね。

でも、英語を見ると分かるように、最後の文字FはFramework=枠組みなんです。

例えば、WTO=世界貿易機関だと、最後のOがOrganization=機関、TPP=環太平洋パートナーシップ協定は英語では正式には最後がAgreementとなっていて、これは協定という意味になります。

これらとはだいぶ違って、ふわっとしているんです。

このあたりの詳しい違いは後ほどじっくり説明します。

そうか、枠組みって確かに抽象的かも。
この組織、じゃなかった、枠組みって、なぜアメリカが作りたいと思ったんですか?

山元記者

アメリカとしては、台頭する中国を念頭にインド太平洋地域への関与を強めるねらいがあるとみられています。

この地域での経済の枠組みとしては、TPPやRCEP=地域的な包括的経済連携という条約に基づく、しっかりとした自由貿易協定があります。

でもTPPはアメリカが前のトランプ政権のときに離脱してしまったし、RCEPにはアメリカはもとから入っていません。

アメリカにとってアジアを含むインド太平洋地域は経済的な成長力もあるし、おおいに関与を強めたい地域なんです。

しかし、今、アメリカが主導する経済的な枠組みや協定が存在しない状況となっているんですね。

そうこうするうちに中国は、TPPへの加入を申請しました。

RCEPでの存在感も高めています。

この地域での中国のパワーは強まりつつあります。

アメリカは「これはまずいぞ」と考え、中国に対抗するためには別の新しい枠組みが必要だと考え出したのがIPEF構想というわけです。

それならTPPに復帰した方が早いんじゃないですか?
もともとはアメリカが主導した経済連携協定でしたよね?

山元記者

まったくそのとおりです。

でもアメリカは前のトランプ政権のときに「自由貿易はアメリカの雇用を奪う」として離脱しました。

そしてバイデン政権になっても「国内の労働者の保護を優先する」として、TPPへの復帰には否定的な姿勢を崩していないんです。

さらにアメリカにとって、ことしは選挙の年です。

秋に大統領の任期前半の実績が問われる「通知表」ともいわれる中間選挙を控えており、バイデン政権としては安定した政権運営を実現するためには国内の労働者からの支持は必要不可欠だという判断により傾いているわけです。

こうした状況なので、新しい枠組み=IPEFには、アメリカ国内の労働者などからは不人気の、関税撤廃や引き下げという項目が入っていません。

国内世論に十分配慮したうえで作り上げられた枠組みと言えそうです。

背景が分かってきました。それでどんな枠組みになりそうなんですか?

山元記者

IPEFは4つの柱で構成されています。

日本の政府関係者は、4つの柱のうち、半導体などの供給網=サプライチェーンの強化や、質の高いインフラや脱炭素などでの協力に注目しているといいます。

また、参加する国は、4つの柱のなかで協力したい分野だけを選ぶこともできるとされていて、柔軟な枠組みであることも特徴です。

へー、選択制なんですね。大学の履修科目みたいですね。

山元記者

そんな感じかもしれません。

要は、全部必修にしてしまうと尻込みしてしまう国もあるかもしれないからです。

関心ある国は1つでもいいから入ってねと優しく参加を呼びかけることで、メンバーを増やしたいというのがアメリカの本音のようです。

日本はどうするんですか?

山元記者

日本政府は4つの柱すべてで参加する方針です。

経済連携の枠組みとしては、大きな経済効果は仮に期待できないものだとしても、アジアを含むインド太平洋地域で同盟国アメリカが参加することは日本にとっては大きな強みになります。

本当は日本にとってのベストシナリオは、アメリカがTPPに復帰することです。

なにせ、関税引き下げだけでなく、知的財産権の保護など貿易自由化のルールが整っていて、法的拘束力もある強力な協定です。

中国と向き合うためには日米でTPPを主導していくことが理想なのですが、さきほどもお伝えしたとおり、今のアメリカにはその余裕はありません。

それなら、日本としてはまずはアメリカが立ち上げるIPEFに積極的に関与することで、経済連携で日米の連携を強化し、その後、時間をかけてアメリカのTPPへの復帰を促していく、地ならしのような意味合いがあるようです。

日本以外に、どれくらいの国が参加することになりそうなの?

山元記者

具体的には明らかになっていませんが、アメリカが参加を呼びかけているとされるのは、日本のほかに、ASEAN=東南アジア諸国連合の加盟国やインド、韓国、オーストラリアなどです。

ただ、ASEANの加盟国のなかには、中国と政治的、経済的な結びつきが強い国も少なくないため、各国がどのような判断をするのかは予断できないという不確定要素もあります。

今後のスケジュールはどうなっていますか?

山元記者

アメリカは東京でIPEFの立ち上げを宣言したあと、できるだけ早く閣僚級の協議を行ってことし7月に本格的な協議を始め、具体的な内容を検討した上で、今後18か月以内の発足を目指す考えです。