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「尿素水」って何?

「尿素水の需給がひっ迫し取引が増加していますが、冷静な行動をお願いします」
12月下旬、フリマアプリ大手のメルカリがホームページでこんな注意喚起をしました。「尿素水」という商品が品薄になり、高値で転売されるケースが相次いだためです。品不足は少しずつ解消に向かっていますが、いったい尿素水って何なのでしょう?どんな問題が起きているの?化学業界を担当している當眞大気記者、教えて!

あのー、そもそも「尿素」って…?

當眞記者

ええ、お察しの通り人間の体内でもつくられるもので私たちにも身近な存在です。

ということは、尿素水というのは…

當眞記者

いえいえ、尿素水は原料の尿素に純度の高い純水を加えたもので、化学製品のことなんですよ。

尿素は、窒素を含む有機化合物です。

化学メーカーの工場で、二酸化炭素とアンモニアを合成して作られます。

そういえば、肌に塗るクリームにもよく入っている気がします。

當眞記者

そうなんです。

尿素は保湿効果があることや、肌の角質を柔らかくする効果があるため、ハンドクリームなどの原料としても広く使われているんです。

それに、植物の生育に欠かせない窒素が含まれているため、肥料として、農場などでも使用されています。

いろいろな所で使われているんですね。

當眞記者

実は、私たちの暮らしを支える「物流」とも関係が深いんですよ。

尿素から作られた尿素水は、トラックやバスなどディーゼル車が走るのにも欠かせないんです。

ディーゼル車は軽油で走りますよね。なぜ尿素水が必要なんですか?

當眞記者

ディーゼル車には、車から出た排ガスをきれいにするための浄化装置が設置されています。

この装置で尿素水が使われているんです。

この装置の中で、排ガスの中に含まれる有害物質の窒素酸化物と、尿素水に含まれているアンモニアを化学反応させ、害のない窒素と水に分解するんです。

装置がついたディーゼル車は、尿素水がなくなると動かなくなる仕組みになっていて、運送会社やバス会社などにとっては、とても重要なものなんです。

その尿素水が品薄になったんですよね。いったい何があったんですか?

當眞記者

はい、中国から原料である尿素の輸入が止まってしまったんです。

日本は、尿素のおよそ3割を中国から輸入しているんですが、去年10月に中国で輸出の際の検査が厳しくなって、日本に入ってこなくなったんです。

このため、国内の一部の工場で一時的に尿素水が生産ができなくなり、手に入りにくい状況がうまれました。

それで品薄な状態になったんですね。

當眞記者

それだけではないんです。

実は韓国では日本より一足早く、尿素水が品薄になりました。

尿素水の販売場所に並ぶ市民 韓国 2021年11月

韓国は日本と違って原料のほとんどを中国から輸入していたため、深刻な尿素水不足に陥ったんです。

業界関係者は、その影響が日本にも及び、不安に感じた一部の業者による買い占めがあったのではないかと話していました。

ディーゼル車を使っている企業にとっては、死活問題ですよね。

當眞記者

そうですね。さらに品薄な状態になったのを見て、いわゆる“転売ヤー”による高値の転売も増えたのではないかとみられています。

尿素水の品薄ですが、いつまで続きそうですか?

當眞記者

経済産業省では、今月中にも需給が改善する見込みだとしています。

国内最大級の尿素の製造拠点がある三井化学は、去年10月から11月にかけて定期的なメインテナンスのため工場の操業を止めていましたが、先月から生産を再開しています。

日産化学もフル稼働で尿素を生産しています。

原料となる尿素の生産が増えているので尿素水の供給も増えそうですね。

當眞記者

はい。先日私は、三重県にある尿素水メーカーの工場を取材してきました。

このメーカーでは、サウジアラビアなど、中国以外の国から尿素の調達を増やし、正月休みも返上してフル稼働を続けています。

12月の出荷量は、前の年の2倍に増えたということです。

尿素水メーカー 猪野栄一社長

このメーカーの社長は「トラックやバスなどを止めるわけにはいかないので、供給が足りないのならば補っていこうと努力している。過剰な買いだめなどはしないようにしてほしい」と話していました。

私たちの暮らしに欠かせない尿素水。不足した状態が早く解消されるといいですね。