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日本の石炭火力発電、なぜ廃止できないの?

気候変動対策の国連の会議、「COP26」で、温室効果ガスの排出削減対策がとられていない石炭火力発電所の廃止を盛り込んだ声明が出されたそう。ヨーロッパ各国など40か国あまりが賛同しているのに、日本は手をあげませんでした。なぜ日本は石炭火力をゼロにできないのでしょうか。エネルギーを担当する西園興起記者、教えて!

イギリスで開かれている「COP26」で石炭火力の廃止を目指す宣言が出された、とニュースで見ました。

西園記者

「COP26」では温暖化対策に関してさまざまな声明や文書が出されるのですが、その中で、今回、開催国のイギリスが主導で発表した声明が“温室効果ガスの排出削減対策がとられていない石炭火力発電所の廃止”に関するものでした。

具体的には、どんな内容なんですか。

西園記者

主要経済国は可能な限り2030年代に、世界全体では可能な限り2040年代に、排出削減対策がとられていない石炭火力発電所から移行するため、取り組みを進めるとしています。

要するに「二酸化炭素の排出量が多い石炭火力発電について、みんな、廃止時期を示そうよ」と求めたものです。

これに対し、ヨーロッパ各国など40か国余りが賛同しましたが、日本のほか、中国やアメリカなどは賛同しませんでした。

日本が賛同しなかったのはなぜなのでしょうか。

西園記者

日本も、将来的に二酸化炭素の排出の多い石炭火力の割合を減らしていきたいとは考えています。

しかし、やりたくても、すぐにはできない事情があるんです。

二酸化炭素を出さない太陽光などの再生可能エネルギー、数多く導入したいのはやまやまですが、日本は森林が多く、太陽光パネルの適地が少ないんです。

また、燃料となる石炭は、最近でこそ価格上昇が目立ちますが、長期的にみると価格はほかの燃料より安く、安定的な電源と位置づけられています。

また、石炭は石油と違って中東だけに依存しなくてよく、オーストラリアなど比較的近い国からも輸入ができます。

LNG=液化天然ガスと違って保管もできるので、エネルギーの安全保障上、重要だというのが今の日本政府の考え方なんです。

日本の電源構成のうち、石炭火力発電は今は全体の3割程度。

「エネルギー基本計画」では、2030年度の時点で発電量の19%を石炭火力でまかなうとしていて、減らしてはいくものの、完全にゼロにはできないという考え方です。

エネルギーの安全保障上の理由だけなんでしょうか。

西園記者

実は産業界の声も影響しているとの指摘もあります。

発電コストを考えると、石炭はほかの電源より価格が安いですよね。

製造業の多い日本では、工場などの電気代がそのままコストになりますから電力の消費量の多い業界を中心に石炭火力をやめることで電気代が上がるのではないかとの懸念もあるようなんです。

さらに、日本が開発に力を入れているアンモニア発電の技術を海外に売り込みたいという思いもあります。

アンモニアは燃焼時に二酸化炭素が出ないのが特徴で、窒素酸化物の排出を抑えつつ安定的に発電するための実証実験が始まっています。

アンモニア発電は、今ある石炭火力発電の設備のタービンを取り替えるだけで、発電することができます。

このため、すでに設備投資した石炭火力を稼働させながら脱炭素を目指すことができます。

さらに、石炭火力への依存度が高い、アジア各国にも技術を輸出できる可能性があるのです。

しかし、このままだと日本は脱炭素の流れに出遅れてしまうのではないですか?

西園記者

COPでも、日本の対応には批判的な意見も出ています。

苦しい立場だと思います。

ただ、今回の声明文では、廃止の対象は「排出削減対策の取られていない」石炭火力となっています。

「排出削減対策」というのがどういう対策、どういう技術を指すのかは明確になっていませんが、まだ脱石炭一色ではないとも言えるかと思います。

各国によって抱える事情はさまざまです。

日本としては石炭火力の割合を着実に減らしつつ、排出削減の技術を実用化し、脱炭素の道を探っていくしかないと思います。