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「東証1部上場」がなくなる?

「東証1部上場」といえば、“日本でトップクラスの会社”というイメージが広く浸透しているかもしれません。しかし、その東証1部が、来年4月になくなります。東京証券取引所が株式の売買を行う市場の区分を全面的に刷新し、「プライム」など3つの市場に再編するのです。いったい何がどう変わるのか?証券業界を担当する古市啓一朗記者、教えて!

東証1部上場がなくなるって、どういうことですか?

古市記者

東証にはいま、「1部」と「2部」、新興企業が多い「マザーズ」、「ジャスダック」のスタンダードとグロースのあわせて5つの区分があります。

これを、来年(2022年)4月から「プライム」「スタンダード」「グロース」の3つに再編します。

「東証1部」などはなくなり、各企業は原則として新たな上場基準を満たせば、3つのいずれかの市場に上場することになります。

なぜ、いま再編するのですか?

古市記者

実は東京市場は海外の市場と比べると、企業の成長や取り引き量が伸び悩んでいるんです

市場の取り引きを活性化させ、世界の株式市場における東京市場の存在感を高めたいというねらいがあります。

取引所に上場する企業の株価と発行する株式数を掛け合わせた去年(2020年)の時価総額は、東証は6兆7000億ドル余りで、トップのニューヨーク証券取引所の21兆6000億ドル余りの3割にとどまっています。10年前は差をつけていた上海や香港の取引所にも追いつかれています。

東証としては、新たな「プライム市場」では国際的に競争力を持つ企業に絞り込むことによって、海外の投資資金を呼び込み、取り引きの活性化につなげたい考えです。

いま1部上場の会社は、そのまま「プライム」での上場にならないのですか?

古市記者

そのままプライム市場に行けるとは限りません。

プライム市場では、上場の基準がいまの1部よりも厳しく設定されているため、現時点での東証の判定で、1部上場企業の約3割にあたる664社がプライムの上場基準を満たしていないことがわかりました。

厳しくなった基準とは、具体的には『会社の発行済み株式のうち、市場に流通する株式の割合を35%以上に保つこと』や『市場に流通する株式の数に株価をかけて算出した時価総額が100億円以上であること』などです。

これにより、
▼親会社が多数の株式を持ちながら上場している子会社
▼株式の持ち合いの割合が多い会社
▼創業者が大多数の株式を保有している会社などが、
プライムの基準を満たすのが難しくなると見込まれています。

また、義務づけはされないものの、『社外取締役の比率を3分の1以上にすること』や、『気候変動が経営に与える影響を開示すること』なども求められます。

まさに“世界で競争できる”として選ばれた会社が、プライム市場に上場するということを目指しているんです。

ただ、プライムの基準を満たさないとされた会社は、困るのではないですか?

古市記者

これまで「東証1部上場」ということが、会社のイメージアップにもつながり、営業や採用活動の場でも有利に働いてきたとされているので、確かにデメリットになるという側面はあります。

ただし、現時点で基準を満たさないとされた会社も、プライム市場に上場できる可能性が残されています。

上場企業はことし12月までの間にどの市場を選択するか東証に希望を提出しますが、この間、会社側が必要な対策をした場合、東証に再判定を依頼し、基準を満たしていると認められればプライム市場に移ることができます。

また、基準を満たさない会社でも希望すれば、当分の間、プライム市場に上場することができる「経過措置」も設けられています。

ただし「プライム上場」を希望する会社は、基準のクリアに向けた計画書を策定するなどの対応を求められることになります。