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“ワクチンパスポート” 経済界が期待のワケは?

新型コロナウイルスのワクチン接種を公的に記録・証明する「ワクチンパスポート」。海外では導入が進んでいますが、国内でも経済界から期待の声が高まっています。一体なぜ?どんな課題があるの?「ニュース シブ5時」で経済部の永野博孝デスクが解説しました(6月30日時点の情報に基づいています)

「ワクチンパスポート」は日本でも導入されるんですか?

永野デスク

はい。正式には「新型コロナウイルスワクチン接種証明書」と言います。導入時期は7月中下旬がめどです。

政府は、書面=紙での発行とする方針で、申請の窓口は市区町村となります。

申請の際には旅券=パスポートが必要で、日本から海外に渡る際に必要とする人の利用が想定されています。

海外で導入が進んでいるんですよね?

永野デスク

ヨーロッパを中心に導入が進んでいます。日本総研の主任研究員、高坂晶子さんの協力を得てまとめました。

ドイツ、イタリア、ギリシャ、チェコなどは、ワクチンパスポートをすでに導入済みです。EU=ヨーロッパ連合も、域内共通の「デジタルコロナ証明書」の運用を7月1日から本格的に開始。

夏休みのシーズンに間に合わせることで、打撃を受けた観光業の立て直しにつなげる効果が期待されています。

IATA=国際航空運送協会開発の「トラベルパス」

ワクチンパスポートを持っていれば入国制限を緩和するなどといった海外の動きを踏まえて、日本でも導入されることになったんです。

日本の経済界から期待が高まっているのはなぜですか?

永野デスク

ワクチンパスポートを出入国のときだけではなく、国内でも効果的に活用して、新型コロナで大きく落ち込んだ個人消費の回復につなげたいというねらいがあるからです。

6月24日に経団連がまとめた「提言」を見てみましょう。ワクチンパスポートについて、スマートフォンのアプリで使えるなどのデジタル化を求めたうえで、主に4つの「方向性」を示しました。

1つめは「各種割引」
ワクチンパスポートを提示すれば、飲食の代金や施設の利用料が割り引かれたり、ポイントが付いたりするというもの。

2つめは「国内移動」
検査の陰性証明書も組み合わせて、国内ツアーの参加や移動の自粛制限を緩和するもの。

このほか、イベント会場や競技場への「優先入場」や、介護施設や医療機関の面会制限を緩やかにするといった「活動制限の緩和」も盛り込みました。

「提言」が実際に採用されるかはまた別の話ですが、経団連は「多数の企業から冬まで持ちこたえられないという声があがっている」として、早期の対応を政府に求めているんです。

メリットはありそうですが、ワクチン接種を受けられない人もいますよね?

永野デスク

まさにその点が重要です。日本総研の高坂さんによると、アメリカではワクチンパスポートをめぐって、「接種を促しかねず、個人の自由の侵害に当たる」として反対する声が根強くあり、基本的には民間主体の取り組みに任されているということです。

ワクチンパスポートを国内で活用するとなると、ワクチン接種を「受けた人」と「受けていない人」との間で不公平感が生じかねません。さまざまな理由からワクチンを受けられない人、または受けたくない人もいます。

そうした人たちにしっかり配慮することが大切ですし、差別や偏見、同調圧力につながらないようにしなければならないと思います。

政府は、ワクチンパスポートの国内利用は想定していないという立場ですが、今後活用に向けてどのような議論が行われるのか、関心を向けながら注意深く見ていく必要がありそうです。