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石油の巨人、歴史的な敗北

スーパーメジャーと呼ばれるアメリカの巨大石油企業「エクソンモービル」が、ごくわずかの株式しか持たない新興の投資会社に“歴史的な敗北”を喫しました。投資会社が行った株主提案が、会社側の反対にもかかわらず多くの株主の賛同を集め、取締役を送り込むことに成功したのです。カギになったのは、世界的に機運が高まる気候変動対策でした。

巨大企業と株主が、株主総会の場で争ったんですね。

そのとおりです。エクソンモービルは、スーパーメジャーと呼ばれる欧米の石油大手5社(※1)の一角を占める巨大企業。

その巨大企業に対して、わずか0.02%のエクソン株しか持っていない新興の投資会社「エンジン・ナンバーワン」が、自分たちが推薦する4人の取締役を選任するよう求める株主提案をしたんです。提案の理由は「気候変動対策」。エンジン側は、「世界が脱炭素化に向かう中で、エクソンは株主の価値を高めるような計画を欠いている」などと、今の経営陣の気候変動対策が不十分だと主張。再生可能エネルギーに詳しい人物などを推薦しました。

会社側はどう対応したのでしょうか?

真っ向から反対しました。エクソンがすべての株主に送ったレターでは、「設立から数か月にしかならない小さな投資会社が、私たちの計画や戦略について誤った声明を出し、会社に大きな変革をさせようとしている」などとして、提案を否決するよう強く呼びかけました。
ところが、迎えた5月26日の株主総会当日、ふたを開けてみると、エンジン側の株主提案に多くの賛同が集まったことが分かりました。

会社が発表した暫定的な集計結果では、12人の取締役の枠に、エンジン側が推薦した取締役が2人選任されたんです(※2)。
多くのエクソン株を保有する年金基金など、機関投資家からも一定の賛同が寄せられたとみられています。

有力紙のウォール・ストリート・ジャーナルは、「石油の巨人の歴史的な敗北」と伝えました。

エクソンのウッズCEOは「新しい2人の取締役を歓迎する」という声明を出しましたが、今後、踏み込んだ環境対策を迫られる可能性がありそうです。

気候変動対策に対する株主の意識の高まりを感じますね。

実際、株主が企業に対して気候変動対策を強化するよう求める動きは各国で進んでいて、株主に対して議決権行使についての助言を行う企業「グラスルイス」の分析によれば、去年、アメリカで提出された気候変動関連の株主提案はおととしの2倍以上に増え、こうした提案に賛同する株主の割合も、おととしの26%から、去年は34%にまで伸びたというんです。日本でも、大手金融グループに対し、石炭火力発電事業への融資の削減を加速させるよう求める株主提案などが出されています。

そして、エクソンの株主総会と同じ26日には、スーパーメジャーに気候変動対策の強化を促すもう1つの動きもありました。

どういったことでしょうか?

オランダの裁判所が、ヨーロッパの石油大手「ロイヤル・ダッチ・シェル」に対し、2030年までに二酸化炭素の排出量を2019年と比べて45%削減するよう命じる判決を言い渡したんです。裁判は、会社の気候変動対策が不十分だとして、2年前に環境団体や市民が起こしていました。

判決を受けてロイヤル・ダッチ・シェルは、「われわれは取り組みを加速させ、水素や再生可能エネルギーなどに数十億ドルを投資している」とする声明を出し、控訴する考えを示しました。

気候変動問題はアメリカのバイデン政権が重要視していて、4月には気候変動サミットを開きました。そして11月には、国連の会議「COP26」もイギリスで開かれる予定です。こうした流れを受けて、今、気候変動問題への国際的な機運が高まっています。それだけに、エネルギー産業だけでなく、さまざまな業界の企業に対して対策強化を求める声が広がりをみせそうです。

(※1)スーパーメジャーとは
●エクソンモービル、●ロイヤル・ダッチ・シェル、●BP、●トタル、●シェブロンの5社が一般に「石油メジャー」「スーパーメジャー」などと呼ばれる。

(※2)
5月26日時点では、12人の取締役のうち10人の選任が発表された。