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なぜ特急に力を入れるの?

新宿と箱根を結ぶ特急ロマンスカー。歴代の実物の車両を展示する「ロマンスカーミュージアム」がオープンすることになり、鉄道ファンの注目を集めています。


ロマンスカーはもともと、戦後まもなく観光用に登場した特急ですが、最近は通勤特急としての利用が拡大。東京近郊ではこうした通勤用の特急が増えています。一方で関西では豪華な革シートの高級感ある特急も登場するなど、鉄道会社が今、「特急」に力を入れています。いったいなぜ?そしてどんな特急があるの?鉄道業界を担当する真方健太朗記者、教えてください!

ロマンスカーミュージアムってどんなところなんですか?

真方記者

4月19日に神奈川県海老名市にオープンします。およそ60年前のものから歴代5種類の車両の実物が展示されています。特定の特急だけをテーマにしたミュージアムは珍しいんですよ。

ロマンスカーという名前は、戦後まもなく定着したと言われています。2人がけの座席が当時は珍しく、恋人どうしでの利用に人気があったため「ロマンス」カーと呼ばれるようになったということです。

そして1960年代には、車両の最前面に展望席を設けたことで人気が高まり、ロマンスカーは今に至るまで小田急電鉄の「顔」になっています。

ミュージアムは事前に報道向けに公開され、私も取材してきましたが、車両はいずれもまるで現役のようにきれいに塗装し直されていて、実際に展望席にも入ることができ、見応えがありました。

ロマンスカーは、もともと箱根や江ノ島への観光客の輸送を目的とした特急でしたが、沿線の人口増加にともなって1960年代から「座って通勤したい」という人の利用が増え始めました。2008年には、東京メトロ千代田線に乗り入れたことで、都心にも直通運転が可能になり、通勤で利用する人がさらに増えました。

通勤のための特急を走らせる鉄道会社も出てきていますね。

真方記者

そうですね。3月に登場したJR東日本の「湘南」は、神奈川県の小田原駅と東京駅や新宿駅を結んでいて、自由席がありません。「座って通勤したい人」や、新型コロナの影響もあって満員電車の混雑を避けたい人を取り込む狙いです。

あえて横浜駅や川崎駅などの主要な駅に停車せず、一部で貨物用の線路を走ることで、通勤時間が長い神奈川県西部の住民の乗車時間を短縮する工夫をしています。JRは同じ車両で東京・伊豆間を結ぶ「踊り子」も通勤利用をターゲットにしています。

また京王電鉄は、2018年から、有料で座席が指定できる「京王ライナー」を新宿と多摩地区の間で運行していますが、混雑を避けたいという人のニーズが高く、去年10月、夕方6時から7時台の運行をさらに3本増やしました。

通勤やビジネス利用で乗客にくつろいでもらおうと、デザインにこだわったり、高級感を打ち出した特急を投入する鉄道会社もあります。

2019年に運行を始めた西武鉄道の「Laview(ラビュー)」は、「全く新しい特急列車をつくろう」というコンセプトのもと、石川県の金沢21世紀美術館などを手がけたことで知られる建築家の妹島和世さんがデザインを監修しました。黄色で統一されたインテリアや、景色が見渡しやすい足元まである大きな窓が印象的です。

2020年に登場した近畿日本鉄道の「ひのとり」は、飛行機のファーストクラスのような高級感がある革のシートを採用しました。座席の前後の間隔を広くとり、シートを倒してもほかの乗客の邪魔になりにくく、くつろぎながら移動できるのが特徴です。

なぜ鉄道会社は特急に力を入れているのでしょうか?

真方記者

新型コロナで業績が厳しくなっている中、他社との「差別化」を重視しているからです。

例えば小田急では「ロマンスカーは会社や沿線のブランドイメージを高めるのに欠かせない存在になっている」としています。

特に競争が激しい路線では、各社が戦略的に特急を投入しています。 JR東日本の「湘南」の場合は、他の私鉄と一部の区間が競合しているため、より客に選ばれやすいサービスを工夫しているとしています。

また近畿日本鉄道の「ひのとり」は、名古屋・大阪間の移動で東海道新幹線と競合します。近鉄では「速さでは新幹線にかなわないので、いかにくつろいで移動できるかに特化した」と話しています。業績が厳しい中でも鉄道会社は差別化に必要な投資は惜しまない方針だといえそうです

新型コロナウイルスが落ち着いたら、個性的に進化を遂げた特急の旅を楽しむのもいいかもしれませんね。