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企業・産業|

なぜ今? 企業の新規上場が増えるワケ

企業が証券取引所に株式を新たに上場する「新規上場」。経済が活発かどうかを見る指標の1つとも言われますが、ことしは100社を超えて、リーマンショック後では最も多くなる見通しです。新型コロナウイルスの感染が再拡大し経済は厳しい状態が続く中、なぜ上場する企業が増えているんでしょうか。証券業界を担当している古市啓一朗記者、教えて!!

そもそも、企業が株式を上場するねらいは何ですか。

古市記者

事業の拡大などを目的に市場から資金を調達できるようにするためです。

企業が資金を集める手段は、上場して株式を発行する以外にも銀行からの借り入れもあります。ただ上場で調達した資金は、返済の期日はなく、投資家が会社を評価してくれれば、株価と発行する株式数に応じて資金を集めることができます。

設備投資や店舗数の拡大など、「攻め」の経営を行うためのまとまった資金を必要とする企業が目指すことが多いのが特徴です。

ただ上場すれば、自社の経営状況をきちんと投資家に開示する責任も生じることになります。

新型コロナウイルスの感染拡大で経済は厳しいのに、上場が増えているのはなぜですか。

古市記者

株価が堅調だからです。「株価の高い傾向が続くいまなら、投資家からの資金を集めやすい」と企業は考えています。

ではなぜコロナ禍であるにもかかわらず、株価が堅調かといえば、日本をはじめ各国の中央銀行による大規模な金融緩和と巨額の財政出動で、巨額のマネーが株式市場に流れ込んでいることが背景にあります。

投資家も「いまは厳しい経済状況でも、将来はよくなる」とやや楽観的な期待をしていて、リスクを取る姿勢を強めているんです。

ことし上場した企業は、どんな業種が多いの?

古市記者

コロナ禍でも事業の拡大が期待される、クラウドやアプリなどのIT技術、AI=人工知能を活用したビジネスを展開する業種が目立っています。DX=デジタルトランスフォーメーションが進む中、その潮流に沿ったビジネスを展開する企業とも言えそうです。

ただことしは、時価総額が1000億円以上の大型上場がなく、数十億円の企業が多いのも特徴です。

企業にとっては、株価が上がった時に上場すればそれだけ資金も集まるので、メリットは大きいですね。

古市記者

日経平均株価は、11月に29年ぶりの高値をつけましたが、東証1部だけではなく、個人投資家が中心のマザーズ市場にも、特に海外からの緩和マネーが流入する傾向が続いています。

11月の月間でみてみると、マザーズ市場では、個人投資家が4兆円を売買したのに対し、海外投資家の売買代金は3.5兆円と個人投資家に匹敵する規模になっていて、海外投資家がマザーズでの取り引きを活性化させています。

企業によっては、初値が公開価格の数倍になるケースもあり、「バブルだ」と打ち明ける証券会社の人もいます。上場した企業の中には、株式の公開価格の5倍の初値がつくところも出ています。

このところの株価は実態経済とかい離しているとも聞くけど大丈夫なの?

古市記者

専門家は、株価が企業の実力以上に高くなっていないか、注意する必要があると指摘しています。

第一生命経済研究所 藤代宏一 主任エコノミスト

「いまは政府の景気対策と日銀の大規模な金融緩和で、株式市場にかなりの資金が流入している。株価が割高な水準まで上昇し過大評価されているという指摘があるのは事実だ。今後は、市場の期待に企業が応えて利益を出していけるのかどうかが課題だ」

新しい企業が相次いで上場していること自体は、日本経済の将来の成長につながる可能性もあるだけに歓迎すべきことではあります。ただ上場した企業にとっては市場の期待に応えて、利益を出していけるかが問われます。ことし上場した企業の中から、世界で活躍する企業が出てくることが期待されます。