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「総合取引所」って何を取り引きするの?

7月27日、大阪に日本で初めてとなる「総合取引所」が誕生しました。取引所というと、株式を売買する東京証券取引所を真っ先に思い浮かべる方が多いと思いますが、実は株式以外にもさまざまなものを取り引きする場があるんです。それを総合的に、一括で取り引きできるようになったというのですが、どのようなものなのか、大阪放送局の甲木智和記者に聞きます。

総合取引所って聞き慣れないことばですが。

甲木記者

そうですね。それもそのはず。日本にこれまで存在しなかったものなので、なじみない方が多いと思います。

株式などの金融商品だけでなく、農産物や貴金属などの商品を一括して取り扱うのが総合取引所なんです。

農産物?普通、農産物は青果卸売市場で取り引きされるんじゃないんですか?

甲木記者

説明が足りていませんでした。ここでいう農産物は先物取引といって、将来の一定の日に売買することを約束してその価格を現時点で決めるという金融的な取り引きのことを指します。

とうもろこしや大豆などの先物取引が有名です。例えば将来値上がりする可能性があるとうもろこしを今の価格で確定できる、そんな取り引きです。このほか、金や銀などの貴金属の先物なども同じです。こうしたものと株式の先物などの金融商品が一括して取り引きできる、それが総合取引所です。

これまで日本ではどうなっていたんでしょうか?

甲木記者

日本取引所グループという持ち株会社があってその傘下に、
1.東京証券取引所(株式など)
2.大阪取引所(株式や国債の先物)
3.東京商品取引所(金や銀、とうもろこし、原油などの先物)の3つの市場がありました。

この2と3で扱う商品を整理、大阪取引所に金や銀、とうもろこしなど14品目を移したことで大阪取引所が総合取引所に生まれ変わったわけなんです。

「先物取引の大阪」になるということですね。

甲木記者

もともと大阪は、世界で最初に先物取引所ができた場所なんです。江戸時代の1730年に江戸幕府が公認した市場でコメの先物取引が行われていました。戦後、1949年(昭和24年)に株式市場は復活しましたが、GHQ=連合国軍総司令部から先物取引は投機的だという理由で許可されず、ようやく1987年(昭和62年)になって、大阪取引所の前身の大阪証券取引所で先物の取り引きが復活したという歴史があります。

へー知らなかった。ところで大阪取引所で商品の数が増えると何が変わるんですか。

甲木記者

投資家にとってメリットがあります。証券会社にあるひとつの口座で、さまざまな先物を一括して売買できるようになることです。たとえば株式の先物を売ってすぐに金の先物を買うといった取り引きもできるようになります。

これまでは株式のための口座と金のための口座を別々に用意しなければなりませんでした。

なぜ、そんな面倒なことになっていたんですか?

甲木記者

それぞれ根拠となる法律や監督する官庁が異なり、これまでは取引所も分かれていました。ちなみに株式など金融分野は金融庁、とうもろこしなど商品の先物は農林水産省、貴金属は経済産業省となっています。取引所が1つになったことで口座を一本化できたのです。

もともと総合取引所の構想は、今から10年以上前、2006年に発足した第1次安倍内閣のころから成長戦略の一環として議論されてきましたが、実現できませんでした。この結果、日本の市場に投資の資金を呼び込むという点で、世界に大きく後れを取ることになりました。

海外ではどのような状況なんですか?

甲木記者

欧米などでは総合取引所はすでに主流で、巨額の投資資金を呼び込む原動力になっています。

たとえばアメリカの「CMEグループ」では、貴金属や農産物、それに株式の先物など幅広い取り引きを行っていますが、去年1年間の取り引き量をみると、日本との間には10倍を超える開きがあり、その差は歴然としています。

2005年以降、貴金属や農産物などの先物の取引高は、世界全体で10倍近くに拡大しましたが、日本では逆に6分の1に縮小しました。

後れを取っている日本が、今後、追いつくことができるんですか?

甲木記者

長い道のりになると思います。

大阪取引所の山道裕己社長は「日本から海外まで幅広い投資家に入ってもらえる環境を1日も早く取り戻したいが、簡単にできることではないので地道な努力が必要だ」と話しています。

10年以上かけてようやく実現した総合取引所。世界との差は大きいですが、どこまで取引規模を拡大できるのか、注目されます。