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企業・産業|

医療現場をビジネスで助けるには?

緊急事態宣言が一部で解除されたとはいえ、全国の医療現場では新型コロナウイルスとの戦いが続いています。海外では、「医療従事者のみなさん、ありがとう!」と手をたたいてオベーション(喝采)を贈る動画も話題になりましたが、日本のビジネス界では、少し違った形のオベーションで支援する動きも出ているようです。現場で取材している白河真梨奈記者と、沼田悠里記者、教えてください!

企業による医療従事者を支援する動き、具体的にどんなことが行われているんですか?

白河記者

まずは、医療従事者たちを“食”で支援しようという取り組みです。食品の宅配サービスを手がける「オイシックス・ラ・大地」は、物流会社などと共同でプラットフォームを作り、最前線で働く医師や看護師などの健康を支援するため、4月末から、惣菜や飲料などを希望する医療機関に無償で届けています。

この取り組みには食品メーカーなど60社以上が協力。レトルトの総菜や真空パックのご飯などの食品を提供しています。

支援の背景には、医療機関から寄せられた切実な声があります。「新型コロナウイルスの患者がいる病院には出前が来てくれないので、災害用の備蓄品を食べている」「患者の食事を優先して医療従事者の給食がなくなった」「ストレスと疲労で精神状態を保つのが大変」(オイシックス・ラ・大地が複数の医療機関に行ったヒアリング調査より)

出前も届けてもらえないとは、驚きですね。

白河記者

そうなんです。この取り組みでは、レトルトの魚の煮つけやカレー、玄米入りのご飯、野菜ジュースなど栄養バランスが考えられた食品や、菓子パンなどのおやつが病院側の希望に応じて、届けられます。提供を受けている病院の一つ、品川区の東京品川病院を訪ねてみました。

この病院では、感染拡大防止の観点から、多くの人がトングやスプーンを共有する食堂のサラダバーや汁物の提供を中止しているということです。

病院の栄養科主任を務める江口静さんは、「職員は心身ともに疲れているので、むしろ栄養をプラスしてあげないといけない時に、制限する状況を残念に思っていました。野菜ジュース1本でもとてもありがたく、何よりも応援してもらっているという気持ちが伝わって嬉しいです」と話していました。

オイシックス・ラ・大地の釼持尚太さんは「コロナとの戦いは長期戦になることを踏まえて、食品業界全体に支援の輪を広げ、過酷な状況の中で働く医療従事者を応援したい」と話し、今後、対象の医療機関を広げていきたいとしています。

食の面以外でも、医療従事者を支援できるといいのですが。

沼田記者

過酷な現場で働いている人たちの負担を少しでも減らそうと、タクシーを使って無料で送迎しようという取り組みが始まっています。医療従事者を支えるだけでなく、外出自粛が続く中で売り上げが減少しているタクシー業界を支援することにもつながるんです。

私が取材したのは、あるイベントマーケティング会社。代表の川村昌紀さんが病院とタクシー会社、双方の厳しい現状を知って、どうにかこの2業種を手助けできないかと考え、クラウドファンディングを使って資金を集めてタクシーと医療現場をマッチングさせました。

具体的にどんな支援をしているんですか?

沼田記者

取り組みの第一弾として、行政から依頼を受けてPCR検査を行っている東京・大田区の牧田総合病院で、看護師20人の自宅から病院への送り迎えをタクシーで行っています。車を出すのは同じ大田区内のタクシー会社。料金はクラウドファンディングで集まった資金からまとめて支払われ、看護師は無料でタクシーを利用できます。

タクシー会社の岩田将克社長は、「緊急事態宣言後の売り上げが前年同期比で75%減少し、運転手にとっても大変な状況が続いている。そんな中で少しでも仕事につながるのは助かるし、大変な状況で医療を支援できるという使命感もあります」と話していました。

牧田総合病院の松坂憲医師は、「病院は業務が集中し、大変な状況が続いている。その中でこの取り組みは不特定多数の人が利用する電車やバスで通勤することでのリスクを軽減できて自分を守れるし、病院で感染のリスクの最前線で戦っているということから電車やバスに乗らないことで相手を守ることもできる。非常にありがたいし、今後はほかの病院にも広げていってほしい」と話していました。

マッチングをした会社の川村さんは、医療従事者が常に緊張感を強いられている状況は長期化することも考えられるため、こうした支援を継続して、スピード感を持って行いたいと話していました。資金が増えればさらに支援の規模を広げる考えだということで、5月末までクラウドファンディングを続けることにしています。