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現金給付のほかに何が? 緊急経済対策

新型コロナウイルスの感染拡大を受けた、国の緊急経済対策が打ち出されました。売り上げの減少や資金繰りの悪化で厳しい状況に置かれる企業の支援や、収入が大きく減少した人の支援など、どんな対策が盛り込まれたのでしょうか。

大規模な経済対策となりましたが、具体的にはどんな内容があるのでしょうか?

(雇用の維持)

一時的な休業などで従業員の雇用維持を図る企業に対し、休業手当などの一部を助成する雇用調整助成金を拡充します。4月から6月末までを「緊急対応期間」として、助成率を、中小企業では現在の3分の2から5分の4、大企業では2分の1から3分の2にそれぞれ引き上げます。さらに、解雇を行わない場合は、中小企業で10分の9、大企業で4分の3まで助成率を引き上げます。対象は、通常、雇用保険に6か月以上加入していることが条件ですが、今回はこの条件を撤廃し、加入期間が短い新入社員や、雇用保険に入っていないパートなどの非正規労働者も対象です。内定が取り消された学生などの就職活動を支援するため、ハローワークに新卒者などを対象にした特別の相談窓口を設置します。

(資金繰り対策)

業績が悪化している中小企業などを支援するため、融資や保証などの枠を、これまでの対策の1兆6000億円から45兆円程度に拡大します。売り上げが減少した中小企業などを対象に日本政策金融公庫などが3月から実施している融資制度では、14兆円程度の融資枠を確保します。売り上げが5%以上減少した中小企業やフリーランスを含む個人事業主を対象に、金利を一律0.9%引き下げ今後3年間は0%台の金利で融資を受けられます。売り上げが15%以上減少するなどより厳しい経営状況の企業には、利子にあたる金額を国が補填し、信用力や担保にかかわらず実質的に無利子で借りられるようになっています。利子が補填(ほてん)される融資の上限額は、中小企業が1億円、小規模事業者などが3000万円で、日本政策金融公庫などからすでに受けた融資についても実質無利子の融資への借り換えを可能にします。

(民間の無利子融資)
国が利子にあたる金額を補填することで、民間の金融機関でも実質無利子・無担保の融資を受けられるようにします。中小・小規模事業者の場合は売り上げが15%以上、個人事業主の場合は売り上げが5%以上減った場合に、実質、無利子で3000万円を上限に融資を受けられます。すでに民間の金融機関から受けた融資についても、上限までは無利子の融資への借り換えができます。政府系金融機関の窓口には申請が殺到して融資の実行に時間がかかるケースが出ていて、無利子の融資を受けられる金融機関が取引先の地方銀行や信用金庫などにも広がります。

(保証)
各地の信用保証協会が中小企業の資金繰りを保証する制度では、保証の枠を増やすとともに、企業が支払う保証料率を減免します。こうした民間の金融機関による実質無利子の融資や保証などの枠として24兆円程度を確保します。

(危機対応融資)
大企業や中堅企業でも売り上げが減少して経営環境が悪化していることから「危機対応融資」と呼ばれる特別な貸付制度の融資枠を現在の2040億円から5兆円に増やします。これは、政府が日本政策投資銀行と商工中金に資金を拠出し、災害や金融危機などで一時的に業績が悪化した企業に融資する制度です。2008年のリーマンショックを受けて作られ、一般の金融機関による資金供給が十分になされない場合や、多額の資金が必要なケースなどに融資を受けられるメリットがあります。

(航空業界への支援)

羽田空港

航空業界では利用客が激減して大幅な運休や減便となるなど、経営環境が悪化していることから、羽田空港など国が管理する空港に各社が支払う「空港使用料」を最大半年間、猶予します。

1世帯当たり30万円の現金給付も話題ですが、どうなりましたか。

今回の対策に盛り込まれています。

(世帯や個人向け現金給付)
感染拡大の影響で収入が大きく減少し、生活に困窮している人を支援するため、1世帯当たり30万円の現金給付を行います。給付の総額は4兆206億円にのぼります。支給の対象はことし2月から6月の間のいずれかの月の世帯主の月収が感染が発生する前と比べて減少し、住民税が非課税となる世帯の水準まで落ち込んだ世帯、月収が50%以上減少し、住民税が非課税となる水準の2倍を下回る世帯、などです。およそ1300万世帯が対象になると想定されています。現金を早く支給するため、収入の状況を証明する書類などとともに市町村にみずから申告する方式とし、インターネットを通じて申請できるシステムの整備も検討します。給付の時期は現時点では決まっておらず、政府は、できるだけ早く支給できるよう準備を急ぎたいとしています。

(事業者向けの給付金制度)
外出の自粛や需要の落ち込みで深刻な影響を受けている中小企業や個人事業主などが事業を継続できるよう、返済の必要のない給付金を支給します。対象となるのは中堅・中小企業や、フリーランスを含めた個人事業主で、ことし1月から12月までのいずれかの月に収入が去年よりも半分以上減少していることが条件です。支給される額は、売り上げの減少に応じた算出方法で決まります。フリーランスを含む個人事業主に最大100万円、中小企業・小規模事業者は最大200万円。給付金の総額は2兆3176億円を計上しています。個人事業主などは、世帯向けの現金給付の対象となる場合でも給付を受けることができます。

(児童手当の増額)

子育て世帯を支援するため、児童手当の受給世帯に対し児童1人当たり1万円を上乗します。早ければ6月の支給分に上乗せされる見通しです。所得の高い世帯は対象にはなりません。このほか、国民健康保険料や介護保険料の免除などを行った自治体への財政支援や、奨学金や授業料の減免を通じた支援なども盛り込まれています。

産業への支援はどうなっていますか?

(サプライチェーン改革)
中国など特定の国に生産が一極集中している製品や部品の生産拠点を国内に移転する場合、中小企業は費用の3分の2、大企業にも2分の1を補助します。特に、国内で不足しているマスクや人工呼吸器、それに防護服といった緊急性の高い製品は、補助率を中小企業は4分の3、大企業は3分の2に引き上げます。また、東南アジアなどに生産拠点を分散させる場合は中小企業に3分の2、大企業には2分の1を補助し、予算の規模は合わせて2400億円余りに上ります。

(デジタル化の支援)
最新のIT技術を教育に活用する「エドテック」を学校で導入する際の支援、それに感染に不安を持つ人がチャットやテレビ電話で医師などに相談できる相談窓口の拡充などで200億円余りを盛り込んでいます。

(農業関連の対策)

外国人観光客の減少や宴会の自粛などの影響で需要が落ち込んでいる農林水産物の生産の体制を維持していくため、販売促進の取り組みを支援します。需要が減っている和牛やメロンなどについて学校給食での利用を支援するほか、花についても駅や空港、公民館などの公共施設での活用を進めることなどに1900億円を計上しています。また、野菜や果物などについて次の作付けに向けた種や苗、農業資材の購入を支援するため242億円をあてます。さらに、入国規制により農業分野でこれまでにおよそ1700人の外国人技能実習生が日本に来る見通しがたっていないことを受け、農業の経験を持つ人や農業高校の学生などを現場に派遣する費用やAI=人工知能などを活用した新しい技術の導入などの費用として60億円を計上しています。

感染防止の対策はどうなっていますか?

(アビガンの備蓄)

新型コロナウイルスへの効果が期待されているインフルエンザ治療薬の「アビガン」について、年度内に200万人分の備蓄を目指すとしています。政府の要請を受けた企業が増産に向けて設備投資を行った場合、その全額を補助します。

(ECMOの整備)

病状が非常に重い患者に使われる「ECMO」と呼ばれる人工心肺装置などを扱える医師や看護師、臨床工学技士などの人材を養成し、必要とする医療機関に派遣する体制を整備します。また、政府の要請を受けた企業が、重症患者の治療に必要となる人工呼吸器などの増産に向けて設備投資を行った場合、その全額を補助します。

(マスクの配布)
繰り返し利用できる布製のマスクを、全国の学校に通う児童・生徒や教職員に1人2枚ずつ配布するとともに、全国のすべての世帯を対象に1つの住所につき2枚ずつ配布するとしています。

(地域医療体制の整備)
感染者の急増に備え、重症患者への医療に重点を置いた医療提供体制の整備を進めます。新たに、1400億円余りの「緊急包括支援交付金」を創設し、各都道府県が病床の確保や応援医師の派遣、軽症者の療養体制の確保などを機動的に実施できるようにします。

(オンライン診療の緩和)

医療機関で感染が広がるのを防ぐため、インターネットを通じた「オンライン診療」の利用条件を緩和し、受診歴のない患者についても、初回の診療から認めます。オンライン診療が受けられる医療機関の一覧を作成して公表するほか、医療機関に支払う診療報酬の取り扱いを見直します。

経済をどう回復させるかも課題ですね。

感染拡大が収束したあとは、「V字回復フェーズ」として、落ち込んだ消費を喚起し、日本経済を成長軌道へと回復させるための官民を挙げた大規模なキャンペーンを展開するとしています。


(観光・飲食・イベントなど)
深刻な影響を受けている観光や運輸、飲食やイベント事業を対象に、感染拡大が収束したあとの半年間、「Go Toキャンペーン」と称した消費喚起策を実施します。観光では、旅行会社や予約サイトを通じて旅行商品を購入した人を対象に代金の半額相当、1泊1人当たり最大2万円分を補助します。宿泊料金を割り引くほか、観光施設や土産物店、飲食店や交通機関などで使えるクーポンを発行します。また、インターネットの予約サイトを通じて飲食店を予約し、来店した消費者に対しては飲食店で使える最大1000円分のポイントの付与や、20%分の割り引きがついた食事券を発行します。コンサートなどのイベントでは、チケット販売会社を通じて購入した人を対象に代金の20%相当を割り引いたり、クーポンを付与したりします。こうした対策を実施する費用として今年度の補正予算案に1兆6700億円余りを計上しています。

(地域経済の活性化)
地域経済や住民生活を支援し、収束後に自治体が必要な事業を実施できるよう、1兆円に上る「地方創生臨時交付金」を新たに創設して、各地の取り組みを支援します。このほか、各地で中止になった観光イベントを魅力を高めたうえで復活させるなどして、より多くの客が呼び込めるように支援するほか、激減している外国人旅行者を再び呼び込めるよう宿泊施設などに「通訳案内士」と呼ばれる外国語を話せる観光ガイドを講師として派遣して、外国人旅行者の接客方法などをアドバイスします。